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生姜

12月3日は、佐々木九十郎さんの誕生日です。
おめでとう~!

闇天です。



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当麻が押すカートの後ろにブラブラと付いて歩いていた九十郎は、スーパーの棚にズラリと並ぶ色とりどりの商品の中に、何かを見つけたらしい。

「これは……」

連れが立ち止まったことに気づいた当麻が振り返ると、九十郎は少し屈んで、棚の真ん中辺りから小さくて長い、黄色い箱を取り出して眺めている。

「何だよ、生姜か?」

元闇魔将悪奴弥守こと佐々木九十郎は、月に二、三度、煩悩京から神奈川県某所にある当麻の部屋へ遊びに来る。
かつての敵同士であった羽柴当麻のことを、九十郎はなぜかことのほか気に入ってしまい、一体何に絆されたのか当麻もその想いに応え、二人の遠距離?恋愛は細々と続いている。

「うむ。生姜だな。すりおろした生姜のようだ。生なのか……」

「生姜がどうした」

おろし生姜のチューブは、去年か一昨年だかに一度購入したことがあったが、あれは半分も使わないまま捨ててしまったよななどと、当麻は自宅の冷蔵庫の中の様子を思い浮かべる。

「調子が良くないと言っていただろう」

「? 冷蔵庫の??」

「???」

意味のよく分からない当麻の返事に、九十郎は黄色い小箱を持ったまま、軽く眉を顰めた。

「お前だ、当麻」

「俺? そうだったっけ……」

学生風のスラリと背の高い優男と、近寄り難さ満点の頬に大きな十字の傷を持つ厳つい男が、二人並んでスパイス売り場に佇んでいる後ろ姿を、カートを押した老婆が不思議そうに眺めながら通り過ぎる。

「何か着て寝ろと、起こさなかった俺も悪かったがな。風邪のひきはじめには、生姜湯を飲むといいのだ」

確かに今朝(と言っても昼近くだったが)ベッドの中で目覚めた瞬間、下着の一枚も身につけていなかった当麻は続けざまに何度もくしゃみをして、その当麻を湯たんぽよろしく抱きかかえて眠っていた九十郎を起こしたのだった。

「…………生姜湯か」

こんな場所で九十郎が昨日の晩のことなどを言い出したことに、物申したい気も起きないではなかったが、当麻は蒸し返さないためには触れないことだと決め、諦めた。

「俺のガキだった頃、生姜は随分と高価なものだったが、これはそうでもなさそうだな?」

言いながら、九十郎は黄色い小箱が並ぶ、その下に付けられたプライスカードを見ている。
二百円くらいのものなら、当麻はあまり渋い顔を見せずに買ってくれることを知っている九十郎は、手にした小箱を当麻の押すカートの買い物かごに放り込んだ。

生姜湯に使う生姜など、ほんの僅かな量で十分であろうに。
このチューブの中身のほとんどを、また廃棄してしまわなくてはならなくなるとも考えて、当麻はチラリと九十郎の顔を見る。
その一瞬、九十郎が欲しいお菓子を買ってもらえるかもらえないかの瀬戸際に立つ子供と同じ顔をしたので、当麻はにわかに吹き出しそうになった。

「何が可笑しい」

九十郎が当麻を軽く睨む。
その九十郎の生姜欲しさは、当麻の身体を思ってのことなのだと思うとくすぐったくて。
そして、今から四百年も昔の「高価な生姜湯」の思い出語りも聞きたくなって。

「それなら豚肉も買って、生姜焼きでも作るか」

『生姜焼きのたれ』を使わずに生姜焼きを作るには、生姜以外に何が必要だろうか。
おろし生姜購入を決定した当麻は、早々に思考を切り替える。

「豚と生姜!それは美味そうだ!」

当麻が手を掛けていたカートを、今度は九十郎が押して、午後の買い物客の視線を集めながら、二人は勝手知ったる肉売り場へと向かった。




おわり
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