たいいくのひ
since November 22th 2012
【102-10】伊達副操縦士と羽柴管制官 番外編2
もうすぐ征士さんのお誕生日です。
ラブラブでお祝いしようと考えてたはずなんだけど、
実際ラブラブなんだけど、
征士さん出て来なかった。
すみません。
**********
「あら。来たんだ。ご苦労さま〜」
「『来たんだ』って。お前が呼んだんだろうが」
「そりゃそうだけど。さては聞いた? 伊達征士から」
「何を」
「会ったって話。ほら、会社の。全国懇親会で」
「誰と」
「あたしと」
「…………誰が」
「伊達征士」
「聞いてない……。懇親会って、パイロットだけじゃなかったのか。お前と会ったなんて、征士からは一言も聞いてないぞ」
「へぇ〜。そうなんだ。でも安心して。当麻とあたしがここで毎月密会していることは、伊達征士には話さなかったから」
「人聞きの悪い。今日が二回めだろ」
「そうだっけ。でも話してなかったんでしょ。あたしが当麻と会ったこと」
「うん。まあ」
「だと思った。また貸しができたわね〜」
「何が」
「当麻が言わないのに、先にあたしが伝えちゃったら、後始末が大変だったんじゃない?」
「まぁ……確かに、助かった、かもな」
「ちゃんとこまめに話しておいた方がいいと思うよ、彼氏には。こうして何度も会ってると、どんどんどんどん言い出しにくくなって、悪いことなーんにもしてないのに、バレたらギクシャクするわよぉ〜」
「そのうちな」
「あ。彼氏否定しない」
「まぁ、アレは彼女じゃないからな……。ところで、征士と何を話したんだ?わざわざ話しかけたのか」
「気になるの?」
「そりゃ、少しは」
「向こうから声かけてきたのよ」
「え」
「私はね、アレが噂の伊達征士だって、そりゃすぐにわかったわよ。でもこっちから何も言わないのに、伊達征士から近寄って来て初対面でいきなり名前呼ばれたの、心臓が止まるかと思ったわ」
「名前を?お前の?」
「そうよ。後から全国のCAに、伊達征士とどんな関係なのかって取り囲まれて困ったんだから」
「説明……したのか?」
「さすがにできません。友達の友達なんだって言っといたわ」
「それはとんだご迷惑を」
「どういたしまして。で、伊達征士ったらさ。『福岡で当麻がお世話になっていたそうで』なんて澄ました顔であたしのこと見下ろしちゃって。何だかちょっとムカついたから、『こちらこそ、こちらでは当麻がお世話になっているそうで』って言っておいた」
「アホだろ、お前。それにしても征士のやつ、どうしてお前のことわかったんだろうな」
「当麻が教えたんじゃないの?写真か何か見せたんだろうって。ほんとバカだなって思ってたのに」
「見せるか。前の彼女の話なんか、そうそうしないだろ、普通は」
「そうだろうけど、当麻も伊達征士も、いろいろと普通じゃないでしょ」
「まぁ、否定はできないな……」
「じゃあどうして、伊達征士はあたしのこと?」
「調べたんだな」
「え」
「そういう奴なんだよ、あいつは。そういうとこ、ちょっとおかしいから。ま、同じ会社に勤めてるんだし、俺たちが付き合ってたの、お前だって周りに隠してたワケでもないだろうし。ちょっと調べればわかるんだろう」
「当麻、愛されてるぅ……」
「そう取るか」
「そうでしょ」
「……ああっ」
「何!?」
「それだ」
「だから何?」
「何でもない」
「こら!」
「いや、ほんまに。何でもないから」
「はい出た関西弁〜。何でもなくないよね」
「…………お前キライ」
「知ってる。だから別れたんでしょ」
「あ。違う!違うぞ?嫌いじゃないからな?」
「もう〜。いいよ、わかってるから。誰も伊達征士に勝とうとは思ってないから」
「またそういうことを言う。嫌いになったんなら、呼ばれたってこんな風に会いに来ないんだからな」
「当麻。あんたそれ、ものすごーく不実でだらしない男に聞こえるよ?」
「……どう言ったらいいんだよ」
「あたしはね。はっきり言って、元カレと会ってる気はないの。どちらかというと、芸能人と結婚した女の親友に、新婚生活について根掘り葉掘り聞きたいって、そっちの気持ちだから。で? さっきの『ああっ』は何なの」
「なんなんだそれは……」
「教えるよね?」
「いや、だからな? その全国懇親会とやらの晩に、やけに酔って帰ってきたなと。あいつ、酒強いのに」
「ああ〜。私と話しながら飲んでたとき、やけにピッチ早いなと思った」
「緊張したのかな。お前が怖いから」
「嫉妬したんでしょ。あたしが美人だから」
「言うなぁ」
「そのくらい言わせてもらわないと。それで、その後、帰宅後にナニかあったのねぇ」
「ナニかって何だよ」
「それをあたしが聞いてるの」
「答える義理があるか?」
「ないって言うつもり?」
「だから!……その……。言えないようなことがあったんだよっ」
「あ!わ!もしかして?初めての!?」
「目を輝かせるんじゃない」
「輝くでしょ、そりゃ」
「ご想像にお任せします」
「想像しよう。あの夜、嫉妬に燃えた伊達征士は……」
「するなっ」
「なんなの。ではどうぞ」
「……俺、いつも途中で寝ちまって」
「それ、前回聞いたやつね」
「寝ちゃうとあいつ、諦めてたみたいなんだけど、あの日はとうとう諦めてくれなかったんだ……」
「伊達征士にも、貸しができたわけね。あたしってば」
「俺は酷い目に遭ったぞ」
「当麻はあたしにお礼を言うべきです。あたしは、当たり障りのないことしか、喋ってないからね。『この前会ったんです〜。二人っきりで♡』とか言ったら、きっともっと大変だったはずね」
「ありがとう…………って、何だか腑には落ちんがな」
「で、その指輪ってわけ」
「あ」
「今更隠しても遅いっつーの。これ見よがしに左手の薬指に……。あ。緑の石入ってる。かーわいー。伊達征士もお揃いなの?」
「色違いだけどな。あいつのは青い石で」
「色の意味は何なの?」
「秘密」
「ケチ。今日もここ、当麻の奢りね」
「大企業勤めが、しがない公務員にたかるなよな〜」
「パイロットの妻が何を言う」
「だから妻じゃないっつーの!」
おわる
ラブラブでお祝いしようと考えてたはずなんだけど、
実際ラブラブなんだけど、
征士さん出て来なかった。
すみません。
**********
「あら。来たんだ。ご苦労さま〜」
「『来たんだ』って。お前が呼んだんだろうが」
「そりゃそうだけど。さては聞いた? 伊達征士から」
「何を」
「会ったって話。ほら、会社の。全国懇親会で」
「誰と」
「あたしと」
「…………誰が」
「伊達征士」
「聞いてない……。懇親会って、パイロットだけじゃなかったのか。お前と会ったなんて、征士からは一言も聞いてないぞ」
「へぇ〜。そうなんだ。でも安心して。当麻とあたしがここで毎月密会していることは、伊達征士には話さなかったから」
「人聞きの悪い。今日が二回めだろ」
「そうだっけ。でも話してなかったんでしょ。あたしが当麻と会ったこと」
「うん。まあ」
「だと思った。また貸しができたわね〜」
「何が」
「当麻が言わないのに、先にあたしが伝えちゃったら、後始末が大変だったんじゃない?」
「まぁ……確かに、助かった、かもな」
「ちゃんとこまめに話しておいた方がいいと思うよ、彼氏には。こうして何度も会ってると、どんどんどんどん言い出しにくくなって、悪いことなーんにもしてないのに、バレたらギクシャクするわよぉ〜」
「そのうちな」
「あ。彼氏否定しない」
「まぁ、アレは彼女じゃないからな……。ところで、征士と何を話したんだ?わざわざ話しかけたのか」
「気になるの?」
「そりゃ、少しは」
「向こうから声かけてきたのよ」
「え」
「私はね、アレが噂の伊達征士だって、そりゃすぐにわかったわよ。でもこっちから何も言わないのに、伊達征士から近寄って来て初対面でいきなり名前呼ばれたの、心臓が止まるかと思ったわ」
「名前を?お前の?」
「そうよ。後から全国のCAに、伊達征士とどんな関係なのかって取り囲まれて困ったんだから」
「説明……したのか?」
「さすがにできません。友達の友達なんだって言っといたわ」
「それはとんだご迷惑を」
「どういたしまして。で、伊達征士ったらさ。『福岡で当麻がお世話になっていたそうで』なんて澄ました顔であたしのこと見下ろしちゃって。何だかちょっとムカついたから、『こちらこそ、こちらでは当麻がお世話になっているそうで』って言っておいた」
「アホだろ、お前。それにしても征士のやつ、どうしてお前のことわかったんだろうな」
「当麻が教えたんじゃないの?写真か何か見せたんだろうって。ほんとバカだなって思ってたのに」
「見せるか。前の彼女の話なんか、そうそうしないだろ、普通は」
「そうだろうけど、当麻も伊達征士も、いろいろと普通じゃないでしょ」
「まぁ、否定はできないな……」
「じゃあどうして、伊達征士はあたしのこと?」
「調べたんだな」
「え」
「そういう奴なんだよ、あいつは。そういうとこ、ちょっとおかしいから。ま、同じ会社に勤めてるんだし、俺たちが付き合ってたの、お前だって周りに隠してたワケでもないだろうし。ちょっと調べればわかるんだろう」
「当麻、愛されてるぅ……」
「そう取るか」
「そうでしょ」
「……ああっ」
「何!?」
「それだ」
「だから何?」
「何でもない」
「こら!」
「いや、ほんまに。何でもないから」
「はい出た関西弁〜。何でもなくないよね」
「…………お前キライ」
「知ってる。だから別れたんでしょ」
「あ。違う!違うぞ?嫌いじゃないからな?」
「もう〜。いいよ、わかってるから。誰も伊達征士に勝とうとは思ってないから」
「またそういうことを言う。嫌いになったんなら、呼ばれたってこんな風に会いに来ないんだからな」
「当麻。あんたそれ、ものすごーく不実でだらしない男に聞こえるよ?」
「……どう言ったらいいんだよ」
「あたしはね。はっきり言って、元カレと会ってる気はないの。どちらかというと、芸能人と結婚した女の親友に、新婚生活について根掘り葉掘り聞きたいって、そっちの気持ちだから。で? さっきの『ああっ』は何なの」
「なんなんだそれは……」
「教えるよね?」
「いや、だからな? その全国懇親会とやらの晩に、やけに酔って帰ってきたなと。あいつ、酒強いのに」
「ああ〜。私と話しながら飲んでたとき、やけにピッチ早いなと思った」
「緊張したのかな。お前が怖いから」
「嫉妬したんでしょ。あたしが美人だから」
「言うなぁ」
「そのくらい言わせてもらわないと。それで、その後、帰宅後にナニかあったのねぇ」
「ナニかって何だよ」
「それをあたしが聞いてるの」
「答える義理があるか?」
「ないって言うつもり?」
「だから!……その……。言えないようなことがあったんだよっ」
「あ!わ!もしかして?初めての!?」
「目を輝かせるんじゃない」
「輝くでしょ、そりゃ」
「ご想像にお任せします」
「想像しよう。あの夜、嫉妬に燃えた伊達征士は……」
「するなっ」
「なんなの。ではどうぞ」
「……俺、いつも途中で寝ちまって」
「それ、前回聞いたやつね」
「寝ちゃうとあいつ、諦めてたみたいなんだけど、あの日はとうとう諦めてくれなかったんだ……」
「伊達征士にも、貸しができたわけね。あたしってば」
「俺は酷い目に遭ったぞ」
「当麻はあたしにお礼を言うべきです。あたしは、当たり障りのないことしか、喋ってないからね。『この前会ったんです〜。二人っきりで♡』とか言ったら、きっともっと大変だったはずね」
「ありがとう…………って、何だか腑には落ちんがな」
「で、その指輪ってわけ」
「あ」
「今更隠しても遅いっつーの。これ見よがしに左手の薬指に……。あ。緑の石入ってる。かーわいー。伊達征士もお揃いなの?」
「色違いだけどな。あいつのは青い石で」
「色の意味は何なの?」
「秘密」
「ケチ。今日もここ、当麻の奢りね」
「大企業勤めが、しがない公務員にたかるなよな〜」
「パイロットの妻が何を言う」
「だから妻じゃないっつーの!」
おわる
PR
index / what's new
(10/10)
(05/16)
(04/24)
(01/14)
(06/26)
(04/30)
(04/17)
(04/16)