たいいくのひ
since November 22th 2012
【102-09】伊達副操縦士と羽柴管制官 番外編1
ちょっとだけ、その後の話。
当麻の元カノです。
苦手でなければどうぞ。
**********
「で?」
「で?……って言われても」
「伊達征士と二股をかけられた女としては、報告くらいは聞かせてもらう権利があると思うの」
「……そんなもんですか」
「そんなもんです。悪いわねぇ。昔の女のために羽田まで出てきてもらっちゃって」
「棘のある言い方だな」
「あれ? 当麻にそんな可愛くないこと言う権利ある?」
「……ないです」
「そうだよね。何て言ったって、二股かけられて捨てられたんですから? あたし。下手すりゃ慰謝料モンだよ?」
「……そんなに悲壮な感じには、一切見えんがな」
「何か言った?」
「言いませんとも」
「で、成田に転勤は、願い出たわけ?」
「そんなわけがあるか」
「ウソ!まさか偶然なの?」
「俺は福岡にいたかったんだ」
「それはどうだかねぇ。当麻ってホント、自分の本音がなんだかわかってないんだから」
「それは反論できないけど。……本当に、たまたまだからな。そんなに都合よく東京に転勤なんてできるもんじゃない」
「あの大停電で大活躍のご褒美か何かかなって想像してたんだけど」
「違うって。……どちらかというと、大停電の藪蛇。上は東京で通訳を安く上げたいって考えてるだけ」
「通訳?」
「お陰で管制以外のお仕事が山盛り。俺クラスのペーペーの仕事じゃない海外の会議にも一人で行かされたりして、正直、参ってるんだ」
「それはお気の毒。……でも上手くやってるんでしょう? 伊達征士と」
「……その伊達征士ってフルネームでいうの、やめないか」
「だって伊達征士は伊達征士だもん。有名人なんだから。どうなの? 伊達征士との同棲生活♡」
「お前さ。こんなこと俺が言うのもなんだけど、もうそうやって、俺のことは全然平気なワケ?」
「平気って、何が」
「だって、言っちゃなんだけど、好きで付き合ってたんじゃないのか」
「そりゃまぁ、好きだったけどね。でもまずホモだったってのが、もうどうしようもないし、あの伊達征士と同じ天秤にかかってたっていうんじゃ、あたしも大したもんだよねって。気になるじゃない。その後どうなったのかも」
「……そういうサバサバした、好奇心優先なとこが好きだったんだ」
「ありがと。褒め言葉に受け取っておく」
「褒めてるつもりだよ」
「で、どうなの?同棲生活一ヶ月経過してみて」
「同棲ってなぁ。……男同士なんだから、同居だろう」
「あら。愛があるのは同棲でしょ」
「ないから。ウチ、悪いけど清いから」
「え!? なんで? ないの? そういうの」
「そういうのってなあ……」
「だって! あるんでしょ?どうなのー?伊達征士。キス以上いったんでしょ? ねぇねぇ」
「だから、それ以上は、ない」
「え? ウソ!」
「嘘じゃない。本当に、ないから」
「なんで!」
「なんでって……。向いてないんだよ、俺、きっと」
「ええー? 普通にやってたじゃん。あたしと」
「そっちならいいんだよ」
「どういう意味?」
「逆はダメなんだよ。その、ほら。眠くなって」
「え?」
「え、じゃなくて。ほんと」
「まさか! 前に聞いた、あん時だけじゃなくて?」
「そう。あん時だけじゃなく」
「……当麻、サイテー」
「…………」
「伊達征士、かわいそー」
「…………仕方がないだろ。だいたい俺も、相変わらずの三交代の上に泊まりの出張も増えたし、征士は長距離行くと一週間返って来ないし。だからまだ、そんなに何回もじゃないぞ」
「すれ違い夫婦か。それで大抵、客室乗務員辞めちゃうからね。パイロットと結婚すると」
「そうだなぁ」
「辞めれば? 仕事」
「辞めるか!」
「なんだぁ、つまんないの。早くどうにかしなよね。大事だから、そういうのは」
「善処します……」
「で? 今日は何て言って出てきたの? 伊達征士に」
「何も言ってないよ。今週あいつまたマドリードだから。帰って来るの、明後日だったか」
「ふーん。夫に内緒で昔の女に会いに来たわけね」
「人聞きが悪いな。だいたい夫ってなんだ。夫って」
「だってそうなんでしょう」
「だからしてないって。もうよせ、その話題は」
「内緒じゃなきゃ、後から話すわけ?」
「話しません」
「なんで」
「わざわざ言わんだろう、そんなこと。大変なことになるぞ?」
「そうなのぉ?」
「なんでそんなに嬉しそうなんだよ」
「ヤキモチ焼くんだぁ、伊達征士♡」
「いや、マジで洒落にならんから。ちょっと気の毒なことになるからやめてあげて」
「本当に? あら、電話でもして波風立ててみようか」
「やめろって!」
「……その態度は何?」
「やめてくださいお願いしますっ」
「どうしようかなぁ……」
「ここ、奢るから。な?」
「あ。じゃあパフェ頼んじゃお。当麻も食べれば? 好きでしょう。コーヒーだけなんて、スカしてないで」
「別にスカしてるわけじゃ……。って、そんなにウキウキとパフェ食う状況じゃないだろうが」
「そう? もっと気楽にしていいのよ。また来月も呼ぶから」
「え!?」
「これは定期的に経過を聞かないとねぇ」
「マジか……」
「で、どうするの? あたしは食べるけど?」
「……俺も食べる」
「あ!すみませーん!もう一回メニューくださーい」
「なんだかなぁ……」
おわり
当麻の元カノです。
苦手でなければどうぞ。
**********
「で?」
「で?……って言われても」
「伊達征士と二股をかけられた女としては、報告くらいは聞かせてもらう権利があると思うの」
「……そんなもんですか」
「そんなもんです。悪いわねぇ。昔の女のために羽田まで出てきてもらっちゃって」
「棘のある言い方だな」
「あれ? 当麻にそんな可愛くないこと言う権利ある?」
「……ないです」
「そうだよね。何て言ったって、二股かけられて捨てられたんですから? あたし。下手すりゃ慰謝料モンだよ?」
「……そんなに悲壮な感じには、一切見えんがな」
「何か言った?」
「言いませんとも」
「で、成田に転勤は、願い出たわけ?」
「そんなわけがあるか」
「ウソ!まさか偶然なの?」
「俺は福岡にいたかったんだ」
「それはどうだかねぇ。当麻ってホント、自分の本音がなんだかわかってないんだから」
「それは反論できないけど。……本当に、たまたまだからな。そんなに都合よく東京に転勤なんてできるもんじゃない」
「あの大停電で大活躍のご褒美か何かかなって想像してたんだけど」
「違うって。……どちらかというと、大停電の藪蛇。上は東京で通訳を安く上げたいって考えてるだけ」
「通訳?」
「お陰で管制以外のお仕事が山盛り。俺クラスのペーペーの仕事じゃない海外の会議にも一人で行かされたりして、正直、参ってるんだ」
「それはお気の毒。……でも上手くやってるんでしょう? 伊達征士と」
「……その伊達征士ってフルネームでいうの、やめないか」
「だって伊達征士は伊達征士だもん。有名人なんだから。どうなの? 伊達征士との同棲生活♡」
「お前さ。こんなこと俺が言うのもなんだけど、もうそうやって、俺のことは全然平気なワケ?」
「平気って、何が」
「だって、言っちゃなんだけど、好きで付き合ってたんじゃないのか」
「そりゃまぁ、好きだったけどね。でもまずホモだったってのが、もうどうしようもないし、あの伊達征士と同じ天秤にかかってたっていうんじゃ、あたしも大したもんだよねって。気になるじゃない。その後どうなったのかも」
「……そういうサバサバした、好奇心優先なとこが好きだったんだ」
「ありがと。褒め言葉に受け取っておく」
「褒めてるつもりだよ」
「で、どうなの?同棲生活一ヶ月経過してみて」
「同棲ってなぁ。……男同士なんだから、同居だろう」
「あら。愛があるのは同棲でしょ」
「ないから。ウチ、悪いけど清いから」
「え!? なんで? ないの? そういうの」
「そういうのってなあ……」
「だって! あるんでしょ?どうなのー?伊達征士。キス以上いったんでしょ? ねぇねぇ」
「だから、それ以上は、ない」
「え? ウソ!」
「嘘じゃない。本当に、ないから」
「なんで!」
「なんでって……。向いてないんだよ、俺、きっと」
「ええー? 普通にやってたじゃん。あたしと」
「そっちならいいんだよ」
「どういう意味?」
「逆はダメなんだよ。その、ほら。眠くなって」
「え?」
「え、じゃなくて。ほんと」
「まさか! 前に聞いた、あん時だけじゃなくて?」
「そう。あん時だけじゃなく」
「……当麻、サイテー」
「…………」
「伊達征士、かわいそー」
「…………仕方がないだろ。だいたい俺も、相変わらずの三交代の上に泊まりの出張も増えたし、征士は長距離行くと一週間返って来ないし。だからまだ、そんなに何回もじゃないぞ」
「すれ違い夫婦か。それで大抵、客室乗務員辞めちゃうからね。パイロットと結婚すると」
「そうだなぁ」
「辞めれば? 仕事」
「辞めるか!」
「なんだぁ、つまんないの。早くどうにかしなよね。大事だから、そういうのは」
「善処します……」
「で? 今日は何て言って出てきたの? 伊達征士に」
「何も言ってないよ。今週あいつまたマドリードだから。帰って来るの、明後日だったか」
「ふーん。夫に内緒で昔の女に会いに来たわけね」
「人聞きが悪いな。だいたい夫ってなんだ。夫って」
「だってそうなんでしょう」
「だからしてないって。もうよせ、その話題は」
「内緒じゃなきゃ、後から話すわけ?」
「話しません」
「なんで」
「わざわざ言わんだろう、そんなこと。大変なことになるぞ?」
「そうなのぉ?」
「なんでそんなに嬉しそうなんだよ」
「ヤキモチ焼くんだぁ、伊達征士♡」
「いや、マジで洒落にならんから。ちょっと気の毒なことになるからやめてあげて」
「本当に? あら、電話でもして波風立ててみようか」
「やめろって!」
「……その態度は何?」
「やめてくださいお願いしますっ」
「どうしようかなぁ……」
「ここ、奢るから。な?」
「あ。じゃあパフェ頼んじゃお。当麻も食べれば? 好きでしょう。コーヒーだけなんて、スカしてないで」
「別にスカしてるわけじゃ……。って、そんなにウキウキとパフェ食う状況じゃないだろうが」
「そう? もっと気楽にしていいのよ。また来月も呼ぶから」
「え!?」
「これは定期的に経過を聞かないとねぇ」
「マジか……」
「で、どうするの? あたしは食べるけど?」
「……俺も食べる」
「あ!すみませーん!もう一回メニューくださーい」
「なんだかなぁ……」
おわり
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