たいいくのひ
since November 22th 2012
【006】さりげなく彼女の指輪のサイズを知る10の方法
征当クリスマス小話 その2 です。
**********
街は聖歌とイルミネーションにあふれている。
もうすぐクリスマス。
仕事帰りの当麻は駅までの道すがらにある老舗ジュエリーショップのウインドウの前で足をとめた。
暖色に光る覗き窓のようなウインドウの中には、小さなクリスマスツリーの隣りに上品に輝くペアのリング。
最愛の人へのクリスマスプレゼント。
毎年候補には上がるのだが、指輪を贈るということが自分の強い独占欲の現れのような気がして、なんとなく見送っていた。
今年はいけるんじゃないかな…指輪。
今年は恋人になって10回目のクリスマス。
二人の関係を何か形にしてもいい気がする。
イブの夜は二人で美味しい寿司を食べに行く約束だ。
色気はないが、男二人連れには気兼ねがなくていい。
そこにサプライズの指輪のプレゼントがあれば、たとえそれが寿司屋のカウンターであっても、なんだか特別な夜になりそうじゃないか。
店内に入ると、すぐ目の前がクリスマスプレゼント用のペアリングのコーナーになっていた。
何組かのカップルがショーケースを覗いている。
男性の一人客もいる。
彼女へのクリスマスプレゼントを選んでいるのだろう。
「ペアリングをお探しですか?」
上品な女性の店員が当麻に声をかけた。
「ええ。あの…、男性へのプレゼント、なんですけど…」
「お客様とのペアでよろしいんですね?」
店員の女性は特に変わったことを聞いたという素振りも見せず、当たり前のように、にこやかに当麻の希望を確認した。
「そうです」
さすが老舗だな、と当麻は少しだけ緊張させていた肩の力を抜いた。
店員の勧める指輪を何点かケースから出してもらい、自分の指に合わせてみる。
標準的なサイズの見本のリングは、当麻の華奢な指には少し大きい。
征士の指は太くはないけど、もう少しごついんだよな…。
剣道で鍛えている征士の指が脳裏に浮かぶ。
コーヒーカップを持つ指、パソコンのキーボードの上を走らせる指、そして当麻の身体に優しく触れる指…。
「贈られる方の指輪のサイズはお分かりですか?」
店員の声にハッとして、当麻は我に帰る。
そうだ、指輪を買うならはっきりとサイズがわからなくては。
幾つかのデザインの候補を見繕うと、当麻は店員に礼を言って店を出た。
いつもの駅からいつもの電車に乗り込むと左手でつり革に捕まり、右手でポケットからスマートフォンを取り出す。
「困ったときの、グーグル先生っと…」
お目当ての情報はすぐに見つかった。
『さりげなく彼女の指輪のサイズを知る10の方法』
彼氏だけどね…。
当麻はイケメンの彼氏の渋面を思い浮かべて、クスッと一人笑った。
やはりサプライズにこだわりたい。
それには征士には内緒でサイズをゲットしなくてはならない。
当麻は画面の文字に目を走らせる。
【1】寝ているとき、糸とペンを使って測る。
こっそりと彼女の指に糸を巻き、糸が重なった部分に印をつけてサイズを測りましょう。
【2】寝ているとき、配線をまとめるプラスチックのひもを使って測る。
配線をまとめるプラスチックでこっそりと測る方法です。指からプラスチックのひもを抜く時、彼女が起きてしまう可能性があります。
寝ているときに測る…か…。
絶対に起きるよな、あいつは。
この二つの案は却下。
【3】ストローの袋を巻き付けて測る。
柴門ふみさん原作、ドラマ「同・級・生」で披露された方法です。外で食事をしていたときにチャンスは訪れますが、指輪のサイズを測っていることを悟られない会話が必要となり、難易度は高いでしょう。
…よくわからんので、パス。
【4】彼女の友人に聞き出してもらう。
彼女の友人の協力を得て、友人を通じて、サイズを聞き出しましょう。
【5】指輪の話題を出して、さりげなく指輪のサイズを聞く。
「指、細いねー。何号くらい?」と聞く方法や「友だちが彼女にプレゼントをしたいらしい」と相談を持ちかけ「女の子って指のサイズは何号くらいなの?」と聞きながら、ついで彼女のサイズを聞く方法などがあります。
征士が自分の指輪のサイズをソラで言えたら恐い。
却下。
【6】こっそりと彼女の持っている指輪をはめて、固定された位置を覚えておく。
彼女が指輪を持っている場合、有功な方法です。指輪が固定された位置を忘れない内に、指輪を買いに行きましょう。
征士は多分、指輪を持っていない。
却下。
【7】自分の指輪をさせてみる。
普段から指輪をはめている男性なら、彼女に「お前、指細いな。ちょっとこれしてみろよ」と指輪をさせてみて、だぶだぶ具合から判断するということもできます。
残念ながら征士は俺より指、太いよな。
ていうか俺だって指輪持ってないし。
【8】雑貨屋さんで指輪をつけてもらい、ピッタリの指輪をこっそり買い、サイズを確認する。
ショッピングしたときに活用できる方法です。指輪を置いてある雑貨屋さんを事前に調べて、デートするようにしましょう。
二人で買物に行って、一緒に雑貨屋を覗くことはよくある。
だけど…征士に指輪をつけさせる…しかも左手の薬指にだ。
あまりにも不自然でバレバレなのではないだろうか。
うーん、これも却下かな。
選択肢がなくなってきた。
【9】占いを使う。
まず、両手の左右の小指の長さを比べさせます。どちらの指が長いかで子どもの頃、どれだけ一生懸命勉強していたかが分かります。
必死に勉強していた子ほど鉛筆を握っている時間が長いので、鉛筆をもつ手の小指が短いのです。そう言うと、たいていの女の子が小指の長さを比べます。
次に、幸せ(または金持ち)になる指の話をします。利き手の薬指の太さが反対の薬指よりも太ければ、幸せになれる、という話をします。
そういうと、たいていの女の子が薬指の太さを比べようとしますが、見た目にはなかなか分かりません。そこで、メモ用紙やストローの袋を用意して、太さを測ります。たいていの人が利き手のほうが若干指が太いので「幸せになれるね。よかったね」と話を収めることができます。あとは、測ったものをこっそりと持ち帰ればOK。
…これはできるかもしれない!
電車がちょうど二人が暮らすマンションの最寄り駅に到着した。
**********
この日の帰宅は当麻の方が早かったので、冷蔵庫にあるもので簡単な夕食を作る。
そこへまもなく征士も帰ってきて、二人で晩酌をしながらつまみ程度の夕食をつついた。
「なぁ征士、お前、右手と左手の小指、どっち長い?」
ほろ酔いになってきたところを見計らって、当麻はさりげなく切り出す。
「小指…? 」
一瞬、征士はその綺麗な紫色の瞳を軽く見開いて当麻を見た。
それから小さく首を傾げながら、テーブルの上に両手のひらを上に向けて並べ、小指同士を並べてつけた。
剣道を長年続けている征士の手は、やはり当麻の手より随分とたくましく見える。
毎朝竹刀を握るそのゴツゴツとした手のひらが自分の肌に優しく触れる時の感触を思い出して、当麻はつい頬を上気させてしまう。
そんな当麻の様子に気づいているのかいないのか。
両手の指の長さはそれほどの差はないようで、征士は指のつけ根を丁寧に何度か合わせ直して比べていた。
「…わずかだが、左手の小指の方が長いようだな」
当麻は電車の中で読んで一度で暗記した解説を話す。
「どちらの指が長いかで、子どもの頃どれだけ一生懸命勉強してたかがわかるんだってさ。 勉強していた子どもほど鉛筆を握っている時間が長いから、鉛筆をもつ手の小指が短いんだって」
「ほう。では右が短いのだから、私はよく勉強していた子どもだったわけだな」
征士は当麻の目を上目遣いに見やると、悪戯っぽく口角を上げた。
「それで…?」
「ん?」
「次は薬指の太さを測るのだろう?」
「え? …なんで?」
次に言わんとしたことを先に言われて、当麻は目を丸くする。
征士は振り返ると、置いてあった自分のスマートフォンを手に取り、手慣れた手つきで2、3の操作をすると、画面を当麻に見せた。
そこには。
『さりげなく彼女の指輪のサイズを知る10の方法』
さらに目を丸くする当麻に、征士はクックッと笑いをこらえながら、
「私だってその占いを、必死で覚えてきたのだぞ。まったく私たちは、よく気が合うものだな」
と言うと、こらえきれずに声をたてて笑った。
【10】やっぱり正面切って聞く。
やはりサイズは、あらかじめ聞いておいて同じサイズのものを用意すれば、その場でぴったりハマリお互い良い空気が流れます。
いっそのこと、一緒に買いに行かれてはいかがでしょうか。
おわり
**********
naverまとめの同タイトルのコラムから、一部改変して使わせていただきました。
先月、職場の廊下でクリスマスツリーを出して飾っていたら、
脳内にショーウィンドウのミニツリーの隣のペアリングを店の外から眺める征士さんが出てきました。
気の合う二人。
仲良し(≧∇≦)!
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街は聖歌とイルミネーションにあふれている。
もうすぐクリスマス。
仕事帰りの当麻は駅までの道すがらにある老舗ジュエリーショップのウインドウの前で足をとめた。
暖色に光る覗き窓のようなウインドウの中には、小さなクリスマスツリーの隣りに上品に輝くペアのリング。
最愛の人へのクリスマスプレゼント。
毎年候補には上がるのだが、指輪を贈るということが自分の強い独占欲の現れのような気がして、なんとなく見送っていた。
今年はいけるんじゃないかな…指輪。
今年は恋人になって10回目のクリスマス。
二人の関係を何か形にしてもいい気がする。
イブの夜は二人で美味しい寿司を食べに行く約束だ。
色気はないが、男二人連れには気兼ねがなくていい。
そこにサプライズの指輪のプレゼントがあれば、たとえそれが寿司屋のカウンターであっても、なんだか特別な夜になりそうじゃないか。
店内に入ると、すぐ目の前がクリスマスプレゼント用のペアリングのコーナーになっていた。
何組かのカップルがショーケースを覗いている。
男性の一人客もいる。
彼女へのクリスマスプレゼントを選んでいるのだろう。
「ペアリングをお探しですか?」
上品な女性の店員が当麻に声をかけた。
「ええ。あの…、男性へのプレゼント、なんですけど…」
「お客様とのペアでよろしいんですね?」
店員の女性は特に変わったことを聞いたという素振りも見せず、当たり前のように、にこやかに当麻の希望を確認した。
「そうです」
さすが老舗だな、と当麻は少しだけ緊張させていた肩の力を抜いた。
店員の勧める指輪を何点かケースから出してもらい、自分の指に合わせてみる。
標準的なサイズの見本のリングは、当麻の華奢な指には少し大きい。
征士の指は太くはないけど、もう少しごついんだよな…。
剣道で鍛えている征士の指が脳裏に浮かぶ。
コーヒーカップを持つ指、パソコンのキーボードの上を走らせる指、そして当麻の身体に優しく触れる指…。
「贈られる方の指輪のサイズはお分かりですか?」
店員の声にハッとして、当麻は我に帰る。
そうだ、指輪を買うならはっきりとサイズがわからなくては。
幾つかのデザインの候補を見繕うと、当麻は店員に礼を言って店を出た。
いつもの駅からいつもの電車に乗り込むと左手でつり革に捕まり、右手でポケットからスマートフォンを取り出す。
「困ったときの、グーグル先生っと…」
お目当ての情報はすぐに見つかった。
『さりげなく彼女の指輪のサイズを知る10の方法』
彼氏だけどね…。
当麻はイケメンの彼氏の渋面を思い浮かべて、クスッと一人笑った。
やはりサプライズにこだわりたい。
それには征士には内緒でサイズをゲットしなくてはならない。
当麻は画面の文字に目を走らせる。
【1】寝ているとき、糸とペンを使って測る。
こっそりと彼女の指に糸を巻き、糸が重なった部分に印をつけてサイズを測りましょう。
【2】寝ているとき、配線をまとめるプラスチックのひもを使って測る。
配線をまとめるプラスチックでこっそりと測る方法です。指からプラスチックのひもを抜く時、彼女が起きてしまう可能性があります。
寝ているときに測る…か…。
絶対に起きるよな、あいつは。
この二つの案は却下。
【3】ストローの袋を巻き付けて測る。
柴門ふみさん原作、ドラマ「同・級・生」で披露された方法です。外で食事をしていたときにチャンスは訪れますが、指輪のサイズを測っていることを悟られない会話が必要となり、難易度は高いでしょう。
…よくわからんので、パス。
【4】彼女の友人に聞き出してもらう。
彼女の友人の協力を得て、友人を通じて、サイズを聞き出しましょう。
【5】指輪の話題を出して、さりげなく指輪のサイズを聞く。
「指、細いねー。何号くらい?」と聞く方法や「友だちが彼女にプレゼントをしたいらしい」と相談を持ちかけ「女の子って指のサイズは何号くらいなの?」と聞きながら、ついで彼女のサイズを聞く方法などがあります。
征士が自分の指輪のサイズをソラで言えたら恐い。
却下。
【6】こっそりと彼女の持っている指輪をはめて、固定された位置を覚えておく。
彼女が指輪を持っている場合、有功な方法です。指輪が固定された位置を忘れない内に、指輪を買いに行きましょう。
征士は多分、指輪を持っていない。
却下。
【7】自分の指輪をさせてみる。
普段から指輪をはめている男性なら、彼女に「お前、指細いな。ちょっとこれしてみろよ」と指輪をさせてみて、だぶだぶ具合から判断するということもできます。
残念ながら征士は俺より指、太いよな。
ていうか俺だって指輪持ってないし。
【8】雑貨屋さんで指輪をつけてもらい、ピッタリの指輪をこっそり買い、サイズを確認する。
ショッピングしたときに活用できる方法です。指輪を置いてある雑貨屋さんを事前に調べて、デートするようにしましょう。
二人で買物に行って、一緒に雑貨屋を覗くことはよくある。
だけど…征士に指輪をつけさせる…しかも左手の薬指にだ。
あまりにも不自然でバレバレなのではないだろうか。
うーん、これも却下かな。
選択肢がなくなってきた。
【9】占いを使う。
まず、両手の左右の小指の長さを比べさせます。どちらの指が長いかで子どもの頃、どれだけ一生懸命勉強していたかが分かります。
必死に勉強していた子ほど鉛筆を握っている時間が長いので、鉛筆をもつ手の小指が短いのです。そう言うと、たいていの女の子が小指の長さを比べます。
次に、幸せ(または金持ち)になる指の話をします。利き手の薬指の太さが反対の薬指よりも太ければ、幸せになれる、という話をします。
そういうと、たいていの女の子が薬指の太さを比べようとしますが、見た目にはなかなか分かりません。そこで、メモ用紙やストローの袋を用意して、太さを測ります。たいていの人が利き手のほうが若干指が太いので「幸せになれるね。よかったね」と話を収めることができます。あとは、測ったものをこっそりと持ち帰ればOK。
…これはできるかもしれない!
電車がちょうど二人が暮らすマンションの最寄り駅に到着した。
**********
この日の帰宅は当麻の方が早かったので、冷蔵庫にあるもので簡単な夕食を作る。
そこへまもなく征士も帰ってきて、二人で晩酌をしながらつまみ程度の夕食をつついた。
「なぁ征士、お前、右手と左手の小指、どっち長い?」
ほろ酔いになってきたところを見計らって、当麻はさりげなく切り出す。
「小指…? 」
一瞬、征士はその綺麗な紫色の瞳を軽く見開いて当麻を見た。
それから小さく首を傾げながら、テーブルの上に両手のひらを上に向けて並べ、小指同士を並べてつけた。
剣道を長年続けている征士の手は、やはり当麻の手より随分とたくましく見える。
毎朝竹刀を握るそのゴツゴツとした手のひらが自分の肌に優しく触れる時の感触を思い出して、当麻はつい頬を上気させてしまう。
そんな当麻の様子に気づいているのかいないのか。
両手の指の長さはそれほどの差はないようで、征士は指のつけ根を丁寧に何度か合わせ直して比べていた。
「…わずかだが、左手の小指の方が長いようだな」
当麻は電車の中で読んで一度で暗記した解説を話す。
「どちらの指が長いかで、子どもの頃どれだけ一生懸命勉強してたかがわかるんだってさ。 勉強していた子どもほど鉛筆を握っている時間が長いから、鉛筆をもつ手の小指が短いんだって」
「ほう。では右が短いのだから、私はよく勉強していた子どもだったわけだな」
征士は当麻の目を上目遣いに見やると、悪戯っぽく口角を上げた。
「それで…?」
「ん?」
「次は薬指の太さを測るのだろう?」
「え? …なんで?」
次に言わんとしたことを先に言われて、当麻は目を丸くする。
征士は振り返ると、置いてあった自分のスマートフォンを手に取り、手慣れた手つきで2、3の操作をすると、画面を当麻に見せた。
そこには。
『さりげなく彼女の指輪のサイズを知る10の方法』
さらに目を丸くする当麻に、征士はクックッと笑いをこらえながら、
「私だってその占いを、必死で覚えてきたのだぞ。まったく私たちは、よく気が合うものだな」
と言うと、こらえきれずに声をたてて笑った。
【10】やっぱり正面切って聞く。
やはりサイズは、あらかじめ聞いておいて同じサイズのものを用意すれば、その場でぴったりハマリお互い良い空気が流れます。
いっそのこと、一緒に買いに行かれてはいかがでしょうか。
おわり
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naverまとめの同タイトルのコラムから、一部改変して使わせていただきました。
先月、職場の廊下でクリスマスツリーを出して飾っていたら、
脳内にショーウィンドウのミニツリーの隣のペアリングを店の外から眺める征士さんが出てきました。
気の合う二人。
仲良し(≧∇≦)!
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