たいいくのひ
【133】真の話の折り返し
お久しぶりです
うちの征当が、鎧真伝を観ています。
アニメは前半が終了し、生死が不明だった「俺達」は無事生還した。
「ま、ひとまず良かったな」
ソファに並んで座って見ていた相棒の、整った横顔を横目で見る。
智の担当の少年(うちの通称ブルー)が主役の少年(うちの通称レッド)を斬ったところから、征士はぼろぼろ涙を零していた。
こいつはこういう類の人情物に、意外と弱い。
「レッドも後半すぐに戻って来るだろ。なんと言っても主人公なんだし」
鼻を赤くしてグジャグジャになっている相方に、ティッシュを二枚、箱から抜いて手渡す。
「ブルーは強いな」
征士はそう言うと、ティッシュを顔の真ん中に当てた。
「私達も遼に刃を向けたが」
豪快に鼻をかむ音。
「できたのは、私達が四人全員で向かったからだ。私はきっと」
畳んだティッシュで、もうひとかみして、征士は続ける。
「いくら遼に頼まれても。信じていても、一人であれはできなかった」
「そうかな」
「そうだ。当麻ならできたかもな」
鼻は赤いが、ほぼ綺麗に戻った顔が、こちらに向く。
「うーん。かも、な。そうだ。あれを割り切れる。それが智将の役割なのかもしれん」
そう。何が正しいのか。俺はそうやって感情ではないところで動くところがある。
揺れ動く自分の感情に任せていては、正しい判断はできないから。
反対に征士は、いつも心を中心に動く。
泣いても笑っても、その芯はいつも穏やかで整っているのだ。
そこに惹かれるのだろうな、と、改めて思う。
大切な、俺の片割れ。
欠くことのできない人。
「それにしても、風変わりな格好をしていたな、テレビのお前。何なんだあれは。度肝を抜かれたぞ」
そう言われた征士は、少し眉を顰める。
「あの私は、一体何の職業に就いているのだろうな」
征士は立ち上がって、ティッシュを屑籠へ放ると、羽織っていた薄手のカーディガンを脱ぐ。
ここ三ヶ月の習慣となっていた、火曜深夜の楽しみが終わった。
「前衛剣術の大家といったところか? お前も脱サラして、髪を伸ばしたらどうだ」
まだちっとも白髪にならない、短く刈られたうなじに向かって声をかける。
「お前こそ、顎髭を蓄えろ。なかなかよかったぞ」
振り返った征士が俺の顔を指さして、ニヤリとする。
「だから、あんな風には生えてくれないの、知っているだろうが」
俺も立ち上がって、身体を伸ばす。
「寝るぞ」
「うん。俺も」
テレビを消し、征士の後をついてリビングの灯りを消す。
実際の東京は静かなものだ。
しかし世界は徐々にきな臭い方向に動いている。
五十のミソラで鎧など纏う羽目にならないようにと、小さく祈った。
おわり

