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タンザニア日記6

ムカ当。
8くらいまで、行くかなぁ。



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九月十三日 水曜日

天気 曇り


昨日の夜、川へ行って身体を洗うのは自分でするからいいとムカラに話してみた。
ムカラは「俺が、お前を守る」と言って、不満な顔をした。
案の定、今朝も有無を言わさず担ぎ上げられたが、いつも無造作に肩に担いでいるのを、今日は一旦そうしてから、前に抱き抱え直された。
いわゆるお姫様を抱き上げるときの、あれだ。

丁寧にすればいいというものではない。
俺の言いたいことはそうではないのだがと思ったが、今日はさせておいた。

今日の狩りは昨日と同じだというので、今日は同行するのはやめて、日記に専念することにした。
儀式の記憶が日に日に朧気になる気がするからだ。

イバダが退屈してしまうので、午後からは地図作りに歩こうかと思う。


結婚の儀式の続き。

最初は、新しい仲間を迎え入れる儀式なのだろうかと思っていた。
高床式の小屋から手を引かれて階段を下りると、そこはステージになっていて、上手では飾り付けられた台座にムカラが座って酒か何かを飲んでいた。
音楽と歌に合わせて、俺の周りには男が三人と、小瓶やら皿やらを持った女が二人寄ってきた。
男たちが左右から俺の腕をとって自由を奪う。
腰の紐が払われて衣服が解かれ、俺はステージの上、祭りに集う前垂れのない褌一丁の姿にされてしまった。

その時になって初めて、俺は自分が話せなくなっていることに気がついた。
声を上げようとしても、呻き声しか出せない。

女たちがいい香りのする油のようなものを、俺の肩からかけた。
男たちの手が、その油を俺の身体に塗りつけていく。
大勢の人の前で、裸同然でそんなことをされて、本来なら並ならぬ嫌悪感を感じるはずだと思うのに、身体の芯からジンジンと熱く、段々と息が上がる。
周囲から聞こえてくるのは、「青いイェレ」「嫁」「結婚」という言葉。
その時は、イェレは天空の鎧のことだろうと、そして俺はこれからこの村の誰かと結婚させられるのだろうと考えた。
村の男の一員になるなら、村の娘を嫁に取らなくてはならない。
ありそうな話だと思った。

女の一人が小瓶に入った何かを口に含んで、口移しで俺の口に入れた。
この女と結婚させられるのだろうかかどと、ぼんやりと考えながらそんなものをそのまま飲み込んでしまったのだから、やはりすっかりどうかしてしまっていたのだ。
押さえつけられ、撫で回されるのが心地よくなってくるのを、ヤバいと思えていたのはどの段階までだったか。
この辺りの出来事の順序は、間違っているかもしれない。

ここからの先の靄に包まれたような記憶は、どこまでも夢だったような気が今はしているが、おそらく全て現実だ。
そして記録する以上、今後、これを他の誰かが読むかもしれないと思うといたたまれないが、俺の中の研究者魂が早く全てを記録せよというので、心を無にして書く。
俺以外にこれを読む人がいたら、まずは俺の心中を慮ってほしい。

褌をしたまま、男の一人が俺の尻の穴に指を入れ、中に入っていた短く丸く磨かれた木の棒を取り出した。
眠っている間に着替えさせられていたばかりでなく、そんなものを入れられていたことにさえ気づいていなかったことに驚いた。
そして、それより一回り大きな棒に、身体にかけられたものと同じ油をまぶし、俺の尻の穴に入れようとする。
そんなものが入ったら痛いに違いないと恐ろしく思ったのに、少しもそんなことはなく、簡単に入ってきた。
痛いどころか、入ってくる圧迫感と中が刷られる感触がゾクゾクと気持ちがいい。
尻を気にしていると、乳首やら脇腹やら太腿やらをやたらと触られ、それが擽ったくも疎ましくもなく、全て心地良さとして脳に響いてきた。
何も考えられなくなってくると、尻に入れられたものをグリグリと動かされ、それが鋭い快感となって、口からだらしなく声が上がる。

音楽は続き、少なくとも百人は下らない村人たちが踊ったり歌ったり叫んだりしながら俺を見ていてたが、だんだんその視線が目に入らなくなり、ステージの端から見ているムカラの目だけが気になるようになってきた。

木の棒は段々と太いものに変えられていく。
入れる時にはキツいと思うが、薬のせいかすぐに慣れて全てが気持ちよさに繋がる。
足の指までヌルヌルと身体中を撫で回されるのに、褌は脱がされることがなく、陰茎は完全に放って置かれていた。
これは俺が嫁をもらうのではなく、俺が誰かにやられる準備なのではないかという考えが、そこでようやく浮かんだ。

その時、俺は冗談じゃないとは思わずに、相手は一体誰なのだろうと考えた。
後から思い起こせば、おかしなことだが。

木の棒で尻の穴を散々に嬲られ、褌の中に幾度も射精した。
音楽と村人たちの熱気が最高潮になり、ムカラが立ち上がった。
人々から喝采の声が上がった。

そこから先の方が、ここまでより時間が長かったと思われるが、しっかりした記憶はない。
それまで入れられた木の棒より一回り太くて長いムカラのアレが、やはりまったく痛みを伴わずに入った。
なけなしの羞恥心で、声を上げたくないと思うのに、まったく身体はいうことをきかなかった。
ムカラとの行為が始まってからは、おそらく誰も俺のことを拘束していなかったと思うのに、もう逃げ出すことはできなかった。
後ろから突き上げられながら、村人の中にナリアがいるのを見つけた。
自分の身代わりで俺がそこでそんな目に遭っているという、申し訳ないという気持ちで俺を見ていたというのは、後から聞いたことだ。

ナリアが見ていたことで何となく、青いイェレの嫁とは俺のことで、俺とムカラが結婚したのだと思い知った。

その後はムカラにしがみついていたこと。
宴が終わると、ムカラが俺を担いで家に来たこと。
やっと解放されて眠れるのかと思えば、そこからまた散々やり散らかされたこと。
そんなことが断片的に記憶に残っている。


以上が、今のところ記憶にある結婚の儀式だ。
なぜ日本人で男である俺が、ムカラの嫁になったのか。
鎧とは関係があるのか、ないのか。
こんな目に遭って得たポジションであるし、もうこれ以上捨てる恥もない。
せいぜい調査研究に、この立場を利用しようと改めて誓う。
それから、身の振り方を考えよう。


今日の午後は予定通り、イバダと地図作りに歩いた。
この村には現在文字文化がないが、イバダは俺の書くものにとても興味があるようだ。
村で文字を書ける人間を育てるのも、面白いかもしれない。




つづく
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