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タンザニア日記4

ムカラ×当麻。



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九月十一日 月曜日

天気 晴れ。

心なしか少しずつ暖かくなってきている。
真冬の時期は脱しつつあるのかもしれない。
真冬とは言っても、最低気温は十度を下回ってはいないように感じる。
昼間は動くと汗ばむくらいには、気温が高い。

ムカラは一昨日に続き、昨日も明るいうちに帰ってきた。

そして初めて、俺の質問に答えた。

結婚の儀式からこちら、夜の独り言以外、一言も口をきいているところを見たことがなかったから、ムカラは祈祷の言葉以外は喋らないのかもしれないと、会話は半ば諦めていた。

一昨日からまた駄目元で時々声を掛けていたのだが、夕食中、いきなり答えが返ってきたものだから驚いた。
俺がなぜ早く帰ってきたのかと訊ねたのに対して、ムカラは「神の仕事が終わった」と言ったのだ。
周りが静かなので聞き取れはするが、思いのほか声が小さかった。
夜中、暗闇の中で俺の耳許に、青い髪のなんたらかんたらと呟いているときの声と同じ声だ。
神の仕事とは何かとまた訊ねたら、「祈りだ」とまた小さく返ってきた。

それ以上に会話は弾まなかったので、俺は何だか居心地が悪くなって、外で食事をしているイバダに、ムカラが喋ったと言いに行った。
イバダは「そうか」と、珍しくもないことで騒ぎ立てるものだという顔をした。

夕食後ムカラに、なぜ俺を嫁に選んだのか訊いてみた。
ムカラは「丈夫だから」と答えた。
家事も力仕事も求められたことはないから、夜のお相手としての丈夫さを言っているのだろうか。
確かにあの地獄のような結婚の儀式から始まって、毎夜毎夜数時間、ときには外が明るくなる頃まで続くアレは、並の体力では付き合えない。

今日は起きたらまだムカラがいて、食事を済ませて出かけようとしているところだった。
俺が起きてきたのを見て引き返し、素っ裸のままの俺を有無を言わさず抱えあげ、川へ行って俺をジャブジャブと洗った。
ムカラの力と勢いの前には、どんな抵抗も無力だと改めて思い知った。

そして家に戻って俺を下ろすと、イバダに何か言いつけて出かけて行った。
イバダは「服を着せろ」と言われたらしく、黙って俺に服を着せようとしたので、いつものように自分でするからいいと伝えて、やめてもらった。

昼間は地図作りの続きでイバダと歩き回った。
村の人達は俺を遠巻きに見るが、相変わらず声は掛けてこない。
とりあえず今日もニコニコしておいた。

夕方アファアファに、その辺りの人たちに話しかけていいものかと相談してみた。
シャーマンの嫁の存在が久しぶりで、本当の昔のことを知っている者は少ないから、好きにしたらいいのではないかとアファアファは言った。
ただ、家によってはバチが当たるとか目が潰れるとか言われてるかもしれないから、逃げられることもあるだろうとのこと。
俺に興味を持っている村人はたくさんいて、喜ぶ者もいるだろうと笑っていた。

ついでに「俺はあんなところを見られているから恥ずかしい」と言ってみたところ、「神聖な儀式だから気にしない。それにまた何度もある」と言われた。

何度もあるのか。
不確実な情報で不安になるのは無駄だとは思うが、気になるところだ。

記録はしておかなくてはと、あの儀式のことを綴ろうとしたら、ところどころ記憶が朧気になっていることに、今日気がついた。
普段から俺は、実際に体験して記憶したことはどんな些細なことでも思い出せるタイプなので、あの時に飲まされたり塗り付けられたりした薬の影響があるのかもしれないと考える。

忘れ去ってしまわないうちに、明日、詳細を記そうと思う。



つづく
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