たいいくのひ

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

隣で眠る人の指先がふと、俺の頬に当たる。
すすり泣くような声に心臓を直に掴まれ、心地よい眠りの澱から引きずり出される。

（なんの夢を見ている？）

頬からこめかみ、そして髪。
遼の指の背が、無意識に俺を探っている。
俺はその指を取り上げて、そっと口に含んでやる。

俺の方から遼の顔に触れてやれば、やはりこいつは泣いているのだ。
戦いの悪夢か、それとも遠い家族の夢の中か。
口に含んでいた遼の指を導いて、俺は、俺の、いまだ眠っているイチモツを握らせる。
こちらを向いている遼を仰向けにして跨り、聞き取れないうわ言が漏れ出す源を唇で塞ぐ。

遼、目を覚ませ。
起きて早く、俺を欲情させろ。

塩辛い頬をべろりと舐め上げて、もう一度深く口づければ、遼が覚醒してくるのがわかる。
お前を泣かせる悪夢を思い出す間も与えぬよう、遼の腹の上に跨ったまま、後ろ手に遼を握りしめ、半ば固くなったものを擦り上げる。
遼。
どうか、どうか泣かないでくれ。
お前の涙を拭うために、俺はここにいる。
そのためにならこの命だって、惜しみなく捧げるのだから。



おわり