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【102-06】伊達副操縦士と羽柴管制官 その6

立て続けに、続きです。



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D-3


「お疲れ様です、機長。よかったですね、落ち着いて」

「この時期のこの辺りは仕方がないな。お疲れさん。しばらくはこのまま大丈夫だろう」

「そうですね。安定飛行に入った時の機長のアナウンスも、いつも参考になります」

「サンキュー。……で。今日はどうしたんだ?伊達」

「え?」

「何かあったんじゃないのか。女に二股かけられたみたいな顔して」

「…………そう、見えますか」

「なんだ? 図星か」

「ええ。……女ではないのですが。私の場合」

「え?」

「はい。相手は男、なので」

「……悪い。デリケートなところに突っ込んだな」

「いえ。こういうことは先に言っておかないと。うやむやにしていると、誤解がどんどん広がっていくものですから」

「そうか。……で、二股をかけられていたのか。その、男に」

「そういうことになるのかどうか。……私は恋人のつもりで付き合っていたのですが、相手には交際中の女性がいたようで」

「それは、きついなぁ」

「まぁ……ただ……」

「ただ?」

「いえ、すみません。男同士のそんな事情、聞かされるのもご迷惑でしょう」

「いや。……その、出歯亀根性で悪いが、伊達が話すことで楽になるなら、こちらとしては興味はある」

「楽になるかはわかりませんが、聞いていただけるなら」

「ああ。……で?」

「その男とは中学の頃からの知り合いで。幼馴染の類になるのでしょうか。……一緒に様々なことを乗り越えるうちに、いつのまにか私が惚れてしまって」

「うん」

「もしくは、一目惚れだったのかもしれません。とにかく何につけても鮮やかな男でして」

「伊達にそう言わせるとは、相当だな」

「共通の友人には、惚れた欲目だと言われますが」

「ははは」

「相手も私のことを、憎からず思ってくれているのだと思っていました。もちろん、親友でもありますが、それ以上に」

「へぇ。どうしてそう思ったんだ?」

「二人きりで会うと……その……」

「……カラダの関係があったとか?」

「いえ、あの、そこまでは」

「何だ」

「口づけ、止まりです」

「口づけ」

「キス……ですか」

「ああ……しかしキスだけでもなぁ。親友ではしないぞ、普通」

「私も、そう思います」

「それで。彼女がいるって、そいつが言ったのか」

「彼女はいるのか、と、まずは私が、あいつにそう聞かれまして」

「わー」

「なので、私も聞き返したのです」

「そうなるわな……。で、いる、と」

「ええ。……しかも、彼女とやらはウチの客室乗務員だそうで」

「あれ?同業者?」

「管制です」

「どこの!?」

「今は福岡に」

「あ。だからさっき、にわかせんべい」

「ええ。お好きだと聞いていたので」

「悪いな」

「いえ。……それで」

「ああ、それで?」

「何というか……。こう、色々ショックでして」

「そうだなぁ……。それは……しかし、お前は可哀想だが、脈がなさそうだな……」

「そうなんです。ただ……」

「そうそう。その『ただ』だ」

「その後がありまして」

「うんうん」

「……本当に聞きたいですか? こんな話」

「気にするな。聞きたい」

「相手から、私とキスがしたいのだと、言ってきまして」

「え? ……その、彼女がいるって話の後にか?」

「ええ」

「何だそりゃ」

「それが、私とキスをするのは嫌ではないそうで」

「……そりゃ、それまでもしてたワケだしな……」

「それどころか、今後私とキスができなくなるのなら、それは困るのだそうで」

「……はぁ。どういうこっちゃ」

「それが、言っている本人にもよくわからないので、それを考えるために、キスがしたい、と」

「うーん」

「で」

「で?」

「したわけです」

「うん」

「何となく、それだけでは済まなくなりまして」

「おお」

「……本当に、いいんですか?」

「だから!気にするなって!」

「いい雰囲気でこう……」

「うん」

「まぁ、いくらか盛り上がりまして。着ているものでも脱がそうかという段階になって」

「うんうん」

「寝られました」

「はぁ!?」

「翌朝は」

「ええ!? 終わり? そこで寝られて終わりなのか!?もう翌朝!?」

「ええ。一度寝付いたら、誰にもどうにもならないことはわかっているので」

「……付き合いが長いからな」

「はい」

「で?」

「翌朝、私が起きたら、珍しくあいつが先に起きていまして」

「うん」

「そのまま、一緒に昼飯を食べに行って、一昨日は別れました」

「その、考えたって話は?」

「特になく……」

「ええ〜?」

「私も、何をどう聞いたものだか。とにかく、その話題には触れられたくなさそうな、おそらく恥ずかしがっているのだろう雰囲気だけは伝わってきたので」

「うーん……」

「下手を打って、友達ですらいられなくなると、私も困りますし」

「伊達。お前、それで懲りないのか?」

「そうですね……」

「重症だな」

「そう思います」

「他を当たる気はないわけ?」

「他に人を好きになったことがないので」

「いくらでも紹介するぞ? まぁ、そんなことしなくても、引く手数多だろうが」

「それは、まぁ」

「しかしな、最初に聞いたのよりは、脈、まったくなさそうでもないんだよな」

「機長も、そう思いますか。その辺りに私は疎いので。途方に暮れています」

「そうだなぁ……」



つづく
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