たいいくのひ
since November 22th 2012
【093-01】パパとママ
10月です。
羽柴誕です。
おめでとうの緑青です。
**********
「もしもし?……俺だ」
「あら、源一郎クン。どうしたの? こんな朝……って、日本は夜か」
「ああ、少し早かったな。起こしたか。すまん」
「ううん。朝イチの仕事があるから、もう起きてたよ。で?珍しいじゃない。源一郎クンから電話くれるなんて。何かあった?」
「ああ。当麻がな……」
「ん?」
「当麻が……」
「うん。……当麻クンがどうかしたの?」
「当麻が……その……、うん」
「何なの源一郎クン。早く言ってよ。怖いじゃない!当麻クンがどうしたの?」
「いや、あの、大したことではないんだ。いやいや、大したことではあるかもしれないが……。そう、命に関わるような大したことでは、ない」
「何なの、もう。勿体つけてないで、早く言いなさいよ」
「当麻がな……。今日、恋人を連れて私のところに来た」
「Wow!いいなぁ!当麻クンも、もう社会人だもんねぇ。どんな子だった?彼女」
「彼女ではない。……彼氏、だった」
「…………は?」
「彼氏、を紹介された」
「…………は、は〜ん」
「…………何だ。驚かんのか」
「もしかして、伊達クン、でしょう」
「……そうだ」
「Yes!やっぱりねぇ!」
「知っているのか」
「うん。ほら、小田原のナスティさんちに当麻クンがお世話になってた時、あたし、一回会ったんだよねぇ。伊達クンって、すっごくハンサムな子でしょう?」
「……そうだな。お前は、そんな頃から知っていたのか」
「源一郎クン、声が怖いよ〜。いいえ。その時は友人だって紹介してくれたの。だけどねぇ……」
「だけど?」
「何かあるなって思ったんだよねぇ。当麻クンと伊達クン」
「何か……か」
「そう。……ちょっと待ってね。よく思い出すから。あれは確か、ロスから帰ってきた時だったわね。成田まで、珍しく当麻クンが出迎えに来てくれたの」
「ああ。そんなことがあったな」
「そうそう。源一郎クンにも話したよね。当麻クン、あっちでいいお友達がたくさんいるみたいって」
「ああ。確かに伊達君は、あの時一緒だった一人だそうだな」
「そうなの。でね。他のお友達もみんな成田に来てくれていたのに、なぜか!当麻クンは伊達クンだけを連れて、あたしのところに来たんだよ」
「ほう」
「当麻クンったら、何だか恥ずかしそうにモジモジしちゃってねぇ。アタシが伊達クンのことハンサムねって言ったら、当麻クンが『お袋〜』なんて言って真っ赤になっちゃって!」
「ああ。今日も当麻が一人であたふたしていたようだったな」
「でしょでしょ〜!逆に伊達クンはさ、堂々としてるんだよぅ。モテるでしょって聞いたら『ええまぁ』とか言っちゃって!」
「ああ。今日も伊達君は、落ち着いていたな」
「ああん!あたしも同席したかったぁ!で、どうだった?」
「どうだった……とは?」
「伊達クンだよぅ!あれから五年かぁ。更にかっこ良くなってるんだろうなぁ!」
「更にかどうかは知らんが、あれは俳優にでもならんと勿体ないようだな」
「そうだよねぇ〜!で、どんな格好で来たの?伊達クンと当麻クンは!」
「二人ともきちんとスーツを着てな。馬鹿に緊張してやってきた。こっちもつい緊張してしまって、たぶんずっと怖い顔をしていただろう。……二人には悪いことをした」
「おやまぁ」
「仕方がないだろう。急に男の恋人を連れてこられて、一生の伴侶だと言われても、どんな顔をしたらいいのかわからん」
「ふふ。確かにねぇ。あたしもまさか、当麻クンがそっちのヒトだとは思いも寄らなかったから、あの時は恋人だとはピンと来なかったんだけど。でもね、きっと伊達クンは、当麻クンの特別な友達なんだろうなって思ってたんだよ」
「……いいのか」
「いいって?」
「当麻がその……男と一緒になると言っても」
「いいも何もねぇ。それはもう、仕方がないんじゃない?そういう人は一定数いるもんだし」
「まぁな」
「ダメって言ったって、どうなるもんでもないだろうしねぇ……って、まさか源一郎クン、ダメだって言ったんじゃないでしょうね?」
「言ってない。……そうかって、……それ以上あまり、何も言えなかったが」
「よかった。ありがと」
「なぜお前が礼を言う」
「何となくね。……でもよかった、伊達クンで。彼なら文句なしだわ。かっこ良くて、優しくて、当麻クンのこと大事にしてくれそうだもの」
「お前は……。伊達君、伊達君って、そんなに伊達君がいいのか」
「そりゃそうだよ。源一郎クンだってそう思ったでしょう?……やだぁ。源一郎クン、もしかして妬いてるの?」
「ば、馬鹿なことを言うな。妬いてなど……」
「大丈夫よ。あたしが世界で一番好きなのは当麻クン!二番目はちゃーんと、源一郎クンだからね!」
「……妬いてないと言っているだろう」
「今度当麻クンたちに会ったら、渋い顔してないで、ちゃんと笑ってお祝いしてあげてよ」
「ああ、そうだな」
「さてと、じゃあ今からあたしは当麻クンに抗議の電話をしよう」
「抗議?」
「そうよ!伊達クンを紹介するなんて大事なこと、あたしより源一郎クンに先にするなんて、許さないんだから!」
「それはお前が、滅多に日本にいないからだろう……」
「それとこれとは話が別です!じゃあね!源一郎クン!」
「ああ。仕事、頑張ってな。身体に気をつけて」
「ありがと!おやすみ。愛してるよ!」
おわり
羽柴誕です。
おめでとうの緑青です。
**********
「もしもし?……俺だ」
「あら、源一郎クン。どうしたの? こんな朝……って、日本は夜か」
「ああ、少し早かったな。起こしたか。すまん」
「ううん。朝イチの仕事があるから、もう起きてたよ。で?珍しいじゃない。源一郎クンから電話くれるなんて。何かあった?」
「ああ。当麻がな……」
「ん?」
「当麻が……」
「うん。……当麻クンがどうかしたの?」
「当麻が……その……、うん」
「何なの源一郎クン。早く言ってよ。怖いじゃない!当麻クンがどうしたの?」
「いや、あの、大したことではないんだ。いやいや、大したことではあるかもしれないが……。そう、命に関わるような大したことでは、ない」
「何なの、もう。勿体つけてないで、早く言いなさいよ」
「当麻がな……。今日、恋人を連れて私のところに来た」
「Wow!いいなぁ!当麻クンも、もう社会人だもんねぇ。どんな子だった?彼女」
「彼女ではない。……彼氏、だった」
「…………は?」
「彼氏、を紹介された」
「…………は、は〜ん」
「…………何だ。驚かんのか」
「もしかして、伊達クン、でしょう」
「……そうだ」
「Yes!やっぱりねぇ!」
「知っているのか」
「うん。ほら、小田原のナスティさんちに当麻クンがお世話になってた時、あたし、一回会ったんだよねぇ。伊達クンって、すっごくハンサムな子でしょう?」
「……そうだな。お前は、そんな頃から知っていたのか」
「源一郎クン、声が怖いよ〜。いいえ。その時は友人だって紹介してくれたの。だけどねぇ……」
「だけど?」
「何かあるなって思ったんだよねぇ。当麻クンと伊達クン」
「何か……か」
「そう。……ちょっと待ってね。よく思い出すから。あれは確か、ロスから帰ってきた時だったわね。成田まで、珍しく当麻クンが出迎えに来てくれたの」
「ああ。そんなことがあったな」
「そうそう。源一郎クンにも話したよね。当麻クン、あっちでいいお友達がたくさんいるみたいって」
「ああ。確かに伊達君は、あの時一緒だった一人だそうだな」
「そうなの。でね。他のお友達もみんな成田に来てくれていたのに、なぜか!当麻クンは伊達クンだけを連れて、あたしのところに来たんだよ」
「ほう」
「当麻クンったら、何だか恥ずかしそうにモジモジしちゃってねぇ。アタシが伊達クンのことハンサムねって言ったら、当麻クンが『お袋〜』なんて言って真っ赤になっちゃって!」
「ああ。今日も当麻が一人であたふたしていたようだったな」
「でしょでしょ〜!逆に伊達クンはさ、堂々としてるんだよぅ。モテるでしょって聞いたら『ええまぁ』とか言っちゃって!」
「ああ。今日も伊達君は、落ち着いていたな」
「ああん!あたしも同席したかったぁ!で、どうだった?」
「どうだった……とは?」
「伊達クンだよぅ!あれから五年かぁ。更にかっこ良くなってるんだろうなぁ!」
「更にかどうかは知らんが、あれは俳優にでもならんと勿体ないようだな」
「そうだよねぇ〜!で、どんな格好で来たの?伊達クンと当麻クンは!」
「二人ともきちんとスーツを着てな。馬鹿に緊張してやってきた。こっちもつい緊張してしまって、たぶんずっと怖い顔をしていただろう。……二人には悪いことをした」
「おやまぁ」
「仕方がないだろう。急に男の恋人を連れてこられて、一生の伴侶だと言われても、どんな顔をしたらいいのかわからん」
「ふふ。確かにねぇ。あたしもまさか、当麻クンがそっちのヒトだとは思いも寄らなかったから、あの時は恋人だとはピンと来なかったんだけど。でもね、きっと伊達クンは、当麻クンの特別な友達なんだろうなって思ってたんだよ」
「……いいのか」
「いいって?」
「当麻がその……男と一緒になると言っても」
「いいも何もねぇ。それはもう、仕方がないんじゃない?そういう人は一定数いるもんだし」
「まぁな」
「ダメって言ったって、どうなるもんでもないだろうしねぇ……って、まさか源一郎クン、ダメだって言ったんじゃないでしょうね?」
「言ってない。……そうかって、……それ以上あまり、何も言えなかったが」
「よかった。ありがと」
「なぜお前が礼を言う」
「何となくね。……でもよかった、伊達クンで。彼なら文句なしだわ。かっこ良くて、優しくて、当麻クンのこと大事にしてくれそうだもの」
「お前は……。伊達君、伊達君って、そんなに伊達君がいいのか」
「そりゃそうだよ。源一郎クンだってそう思ったでしょう?……やだぁ。源一郎クン、もしかして妬いてるの?」
「ば、馬鹿なことを言うな。妬いてなど……」
「大丈夫よ。あたしが世界で一番好きなのは当麻クン!二番目はちゃーんと、源一郎クンだからね!」
「……妬いてないと言っているだろう」
「今度当麻クンたちに会ったら、渋い顔してないで、ちゃんと笑ってお祝いしてあげてよ」
「ああ、そうだな」
「さてと、じゃあ今からあたしは当麻クンに抗議の電話をしよう」
「抗議?」
「そうよ!伊達クンを紹介するなんて大事なこと、あたしより源一郎クンに先にするなんて、許さないんだから!」
「それはお前が、滅多に日本にいないからだろう……」
「それとこれとは話が別です!じゃあね!源一郎クン!」
「ああ。仕事、頑張ってな。身体に気をつけて」
「ありがと!おやすみ。愛してるよ!」
おわり
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