たいいくのひ
since November 22th 2012
【081】The Theory of Love
武装演武のサークルカットを描きながら、考えていたお話。
というか、会話。
ちょっとシチュが変わってしまいましたが。
緑青です。
**************
「征士!」
「…………」
「征士!」
「…………」
「征士ってば!」
「…………?」
「征士! 起きろよ!」
「……‼︎ うわ! 寝坊したか!何時だ?」
「今か? 今なら、ええと……5時だ」
「何⁉︎ 夕方か!」
「ちょっと落ち着け。朝だよ、朝。朝の5時」
「朝か……。焦らせるな。驚くだろう。お前に起こされると、昼過ぎまで眠ってしまったかと思うではないか」
「お前なぁ。ちなみに俺は早く起きたんじゃないぞ。まだ寝ていないだけだ」
「迷惑な……」
「いつもお前、早起きじゃないか。毎朝このくらいには起きているだろう」
「当麻。私は毎朝5時半に起きているのだ。これではいつもより30分も早い」
「細かいな」
「習慣だからな。そうは融通できん。……で、どうしたというのだ、こんな早くに」
「そうそう。聞いてくれるか、征士。俺、わかったんだ」
「ほう。新しい理論でも思いついたか」
「新しい理論かと問われれば、そうだな。まぁそれに準ずるくらいの発見だとも言える」
「ずいぶんと勿体つけるな。……で? 博士は何を発見されたのですか?」
「うむ。征士君。君には特別に教えてやろう」
「教えていただこう」
「ありがたく聞けよ。愛してるって、どういうことかってことさ」
「は?」
「愛してる、だよ」
「…………?」
「だから。お前やおふくろがよく言うだろう、俺に」
「あ、ああ。ああ、そうだな」
「それって俺のことが好きってことなんだろうなってことは、もちろん俺にだってわかってた。俺だって征士が好きだ。おふくろだって、……まぁ、それなりに」
「ああ」
「でもよくわからなかったんだ。どうして『好き』じゃなくて『愛してる』なのかがな」
「それを夜通しずっと考えていたのか?」
「そうじゃない。元々考えていたのは、去年から見えかけてる例の理論のことだったんだが」
「ほう」
「そう。壁にぶち当たっていると言っていただろう? それがな。思い切って角度を変えてみたら、昨日はとうとう美しく収まった理論の完成形が、すぐそこまで来たんだ。もう指先の届きそうなところまで。モヤモヤしてたところが急に晴れて、あ、繋がるかなと思った瞬間に、……でもまた飛んで逃げて行っちまって」
「それはそれは」
「でもな、その行っちまったモンと引き換えに、急に来たんだよ」
「ほう。何が?」
「だからさぁ。愛してる、の意味だよ。『好き』と『愛してる』の違い。本当に突然降ってきたんだ。で、あー!これだ!って思って……」
「それで私を5時に叩き起こしたのか」
「そういうこと」
「また……」
「なんだ」
「相変わらず突拍子もないな」
「ほめ言葉と受け取っておこう」
「で?」
「ん?」
「何なのだ、違いは」
「それがなぁ」
「ん?」
「征士は説明できるか? 違い」
「好きと、愛しているのか」
「そう」
「まあ、難しいな」
「だろう?」
「お前は、わかったのではないのか」
「わかったよ。なんかこう、特別っていうか、安心っていうか、あったかいような、勇気が出るような、すごく満たされているような、でも満たされないどこかが静かに寂しいような、……な?」
「ほう」
「わかってるんだ。わかってるんだぞ? おかしいな。きっちり掴んだと思ったんだがなぁ。言葉できちんと定義するとなると……うーん。まだまだだな」
「この世の真実が全て言葉で論理的に説明できるとは限らんからな」
「説明したいんだがなぁ。……でもまぁ、言いたいことは要するに、だ。俺だって征士を愛してるってことだ」
「ん?」
「だから、愛してる、征士」
「何だって?」
「……何度も言わせようとしているだろう」
「……ばれたか」
「しかしな。もうお前やおふくろの専売じゃないからな。もう一度言ってやろう。愛してるぜ、征士」
「私だって愛しているぞ、当麻」
「…………」
「そこは照れるのか」
「ほっとけ!……あ!笑うなよ? 言っとくけど、俺は真剣なんだからな?」
「わかっている」
「本当かなぁ……」
「信用しろ」
「まぁ、いいか。……では俺は、愛する征士君に、朝ごはんでも作るとするか。すっきりしたら、眠くなってきた。食べてから寝ることにしよう」
「そういうことなら、私はあと少し眠らせていただこう」
「何だよ、もう明るいぞ?」
「5時半まで、まだあと18分ある。寝不足はいかん」
「お前のそういうとこなー」
「何だ」
「何でもない」
「愛してる、だろ?」
「はは。そうだな」
「では、愛する私におやすみのキスをしてもらおうか」
「はいはい。…………ではあと18分、いい夢を!」
おわり
というか、会話。
ちょっとシチュが変わってしまいましたが。
緑青です。
**************
「征士!」
「…………」
「征士!」
「…………」
「征士ってば!」
「…………?」
「征士! 起きろよ!」
「……‼︎ うわ! 寝坊したか!何時だ?」
「今か? 今なら、ええと……5時だ」
「何⁉︎ 夕方か!」
「ちょっと落ち着け。朝だよ、朝。朝の5時」
「朝か……。焦らせるな。驚くだろう。お前に起こされると、昼過ぎまで眠ってしまったかと思うではないか」
「お前なぁ。ちなみに俺は早く起きたんじゃないぞ。まだ寝ていないだけだ」
「迷惑な……」
「いつもお前、早起きじゃないか。毎朝このくらいには起きているだろう」
「当麻。私は毎朝5時半に起きているのだ。これではいつもより30分も早い」
「細かいな」
「習慣だからな。そうは融通できん。……で、どうしたというのだ、こんな早くに」
「そうそう。聞いてくれるか、征士。俺、わかったんだ」
「ほう。新しい理論でも思いついたか」
「新しい理論かと問われれば、そうだな。まぁそれに準ずるくらいの発見だとも言える」
「ずいぶんと勿体つけるな。……で? 博士は何を発見されたのですか?」
「うむ。征士君。君には特別に教えてやろう」
「教えていただこう」
「ありがたく聞けよ。愛してるって、どういうことかってことさ」
「は?」
「愛してる、だよ」
「…………?」
「だから。お前やおふくろがよく言うだろう、俺に」
「あ、ああ。ああ、そうだな」
「それって俺のことが好きってことなんだろうなってことは、もちろん俺にだってわかってた。俺だって征士が好きだ。おふくろだって、……まぁ、それなりに」
「ああ」
「でもよくわからなかったんだ。どうして『好き』じゃなくて『愛してる』なのかがな」
「それを夜通しずっと考えていたのか?」
「そうじゃない。元々考えていたのは、去年から見えかけてる例の理論のことだったんだが」
「ほう」
「そう。壁にぶち当たっていると言っていただろう? それがな。思い切って角度を変えてみたら、昨日はとうとう美しく収まった理論の完成形が、すぐそこまで来たんだ。もう指先の届きそうなところまで。モヤモヤしてたところが急に晴れて、あ、繋がるかなと思った瞬間に、……でもまた飛んで逃げて行っちまって」
「それはそれは」
「でもな、その行っちまったモンと引き換えに、急に来たんだよ」
「ほう。何が?」
「だからさぁ。愛してる、の意味だよ。『好き』と『愛してる』の違い。本当に突然降ってきたんだ。で、あー!これだ!って思って……」
「それで私を5時に叩き起こしたのか」
「そういうこと」
「また……」
「なんだ」
「相変わらず突拍子もないな」
「ほめ言葉と受け取っておこう」
「で?」
「ん?」
「何なのだ、違いは」
「それがなぁ」
「ん?」
「征士は説明できるか? 違い」
「好きと、愛しているのか」
「そう」
「まあ、難しいな」
「だろう?」
「お前は、わかったのではないのか」
「わかったよ。なんかこう、特別っていうか、安心っていうか、あったかいような、勇気が出るような、すごく満たされているような、でも満たされないどこかが静かに寂しいような、……な?」
「ほう」
「わかってるんだ。わかってるんだぞ? おかしいな。きっちり掴んだと思ったんだがなぁ。言葉できちんと定義するとなると……うーん。まだまだだな」
「この世の真実が全て言葉で論理的に説明できるとは限らんからな」
「説明したいんだがなぁ。……でもまぁ、言いたいことは要するに、だ。俺だって征士を愛してるってことだ」
「ん?」
「だから、愛してる、征士」
「何だって?」
「……何度も言わせようとしているだろう」
「……ばれたか」
「しかしな。もうお前やおふくろの専売じゃないからな。もう一度言ってやろう。愛してるぜ、征士」
「私だって愛しているぞ、当麻」
「…………」
「そこは照れるのか」
「ほっとけ!……あ!笑うなよ? 言っとくけど、俺は真剣なんだからな?」
「わかっている」
「本当かなぁ……」
「信用しろ」
「まぁ、いいか。……では俺は、愛する征士君に、朝ごはんでも作るとするか。すっきりしたら、眠くなってきた。食べてから寝ることにしよう」
「そういうことなら、私はあと少し眠らせていただこう」
「何だよ、もう明るいぞ?」
「5時半まで、まだあと18分ある。寝不足はいかん」
「お前のそういうとこなー」
「何だ」
「何でもない」
「愛してる、だろ?」
「はは。そうだな」
「では、愛する私におやすみのキスをしてもらおうか」
「はいはい。…………ではあと18分、いい夢を!」
おわり
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