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【080】shaving!

アホらしい馬鹿と刃物の話
緑青です。


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血に飢えた黒狼剣の刃文が目の前でギラリと光る。
その切先が切るか切らないかのところで、当麻の喉元をなぞり上げる。

「動くな」

言われなくても動けるはずもない。
動揺を悟られぬよう、口の端に笑みを浮かべようとする。
しかし果たして、それが成功しているかどうかはわからない。
背中を一筋、冷たい汗が流れる。
言葉を発しようにも、ほんの少しでも喉を動かせば切れてしまいそうで、当麻は固唾を飲み込むことすらできずにいた。

頬に大きな十字の傷をもつ男はその傷のある方にニヤリと口角を上げる。
どうしてこんなことになってしまったのか。
思い出そうにも記憶はおぼろげだ。
どうにかしてこの場を切り抜けなくてはと当麻は方策を立てようとするのだが、思うように頭が回らず気ばかりが焦る。
この男がわずかにその手に力を込めれば、それだけで自分の命はない。

遼はどこでどうしているのだろう。
無事なのだろうか。
秀は、伸は、遼にちゃんとついているのだろうか。
征士は。

そう考えた瞬間、当麻の目の前の頬に傷のある男の顔が、突然征士の顔に変わった。
整った眉を寄せ、なぜか当麻を睨む。

「動くな」

すぐ目の前にいるのに、その声は遥か遠くから聞こえてくるような気がした。
そして突き付けられた黒狼剣の闇の輝きが、光輪剣の鮮やかな光に変わる。

(まぶしい……!)

当麻はとっさに目を閉じた。





「動くな」

今度はすぐ足元から征士の声がして、当麻は目を開いた。

「……何をやっているんだ?」

昨日は金曜日。
珍しく征士も当麻も揃って残業がなかったこともあり、仕事帰りに待ち合わせて久しぶりに外で飲んだ。
当麻チョイスの料理も日本酒も美味しい店で程よく飲んで、二人で暮らすマンションの最上階の部屋にご機嫌で帰った。
一緒にゆっくりと風呂に浸かり、そのままの流れでベッドまで移動したのだが、当麻の記憶はそこで途切れている。
一週間の仕事の疲れと満腹、美味しい酒、風呂で温まった心地よさで眠ってしまったのだろう。

天窓から射し込む陽の光が顔を直に照らしていたことで、当麻は今がもう昼に差し掛かりそうな時間なのだと知る。
夢の中で黒狼剣が光輪剣に変わったのは、意外に強い五月の陽射しのせいだ。
そして刃物を突きつけられる夢を見た理由も、なんとなくわかってきた。

「だから。……何をやってるんだよ、征士」

わからないのはTシャツ1枚で、あとは何もはいていない当麻の両脚の間に正座したままうずくまり、当麻のイチモツのすぐ際に剃刀の刃を当てている征士の行動、いや、奇行だ。
だいたい下半身裸になった覚えすら当麻にはない。
一体何がどうなっているというのか。
当麻は異様なその状況をよく確認しようと上体を起こしかける。

「動くなと言っているだろう」

眉と眉の間に深く縦ジワを寄せて、征士は当麻をにらんだ。
そしてすぐにまた真剣な顔で剃刀を動かす。
そり、そり、そり、と刃が肌の上を滑り、そこにある柔らかな毛を剃り落としていく。

「わ!お前!ふざけるなよ!」

身体を動かさないようにしながら、当麻は頭だけを持ち上げて非難の声を上げた。

「ふざけてなどいない。私は真剣だ」

「真剣って……。ああ!もう散々じゃないか!」

当麻の声は、最後には情けない悲鳴のようになる。
元々そう多くもない当麻の陰毛は、少なくとも当麻から見える範囲では、すでに短くカットされていた。
要するに、当麻が泣こうがわめこうが、今更もう手遅れなのだ。

「はじめは剃刀でいきなり剃ってみたのだが、なかなか上手くいかなくてな。ハサミで下準備をしてみたら、たいそうやりやすい」

そう話しながら、征士は手を休めず作業を続けていく。

そり、そり、そり、そり。

中心から右側を綺麗に剃り上げると、左側に倒れていたモノを、そっと持ち上げ、ペタリと右側へ倒す。
と、同時に当麻は深い深いため息をついて、頭をどさりと枕に預けた。

「ときどき何を考えているのかわからんね、お前は。楽しいか?」

呆れ顔の当麻に、

「ああ。思いの外な」

征士はそう答えながら、シェービングクリームをペタペタと塗る。

「出来上がりはさぞかし楽しかろうとは思っていたが、過程がこんなに楽しいとは予想外だった」

そり、そり。

そしてまた、真剣な顔で剃り上げていく。

「ハサミで下の毛を全て切られているのに、まったく目を覚まさない人間がいることが、まずもって面白い」

「……あっそ」

当麻はまた首をもたげて、自分の身体に目をやった。
尻の下にはご丁寧に新聞紙が敷かれ、ベッドの下にはちりとりと卓上を掃除するための小さなほうきが見える。
ちりとりには本人に無断で身体から切り離された毛が、すでにいくらか集められているようだ。
几帳面な征士らしく、計画的かつ丁寧に作業は進められているらしい。
確かに、ここまでされて起きない俺もどうかしているな、と当麻は苦笑した。

そり、そり、そり、そり。

征士は今度は当麻のモノを左手の手のひらで包み、上に向けて寝かせると、そのままその下を剃り始めた。

「なんでまた、こんなことをお始めになったんですかね」

枕と頭の間に腕を組んで、当麻はまた脱力した。

「なんとなくな。この毛がなければまたお互いに、違う感触が得られるのではないかと思ったのだ」

「お互いに、ねぇ」

「そうだ。昨夜はせっかくここまできたのに、お前が眠ってしまったからな。もう少し起きていてもらえないものかと色々とやっているうちに思いついたのだ。まぁ私も疲れたので昨日は諦めて、これは朝起きてから始めたわけだが」

「色々、ねぇ」

そり、そり、そり。

静かな休日。
明るい部屋。
聞こえるのは剃刀が毛を剃り落とす音。
当麻はまたひとつ、ため息をついて天井を眺めた。
あの天窓はベッドに寝ながらに星が見えて素晴らしいのだが、ブラインドを開け放して寝てしまった時のこの陽射しはいただけないな、などと考えているうちに、股ぐらの当麻自身を包み込んでいる、征士の左手の温かさが少し気になってくる。
剃刀の刃はブツの根元に当てられている。
その辺りは少々剃りづらいらしく、引っ張ったり放したりしながら、同じところにずいぶんと時間がかかっている。

「お前さぁ、痛くするなよ? そんなところを剃刀負けとかゴメンだぞ」

「心得ている。しかしヒゲのようにはうまくいかんのだ。……おい」

征士が当麻の顔を見る。
真剣だった顔が悪戯に笑っている。

「なんだよ」

さっき夢に出てきた悪奴弥守の顔と同じだ、と当麻は思った。
本人たちに言えば怒り出すかもしれないが、かつての好敵手同士はどこか似たところがあるのかもしれない。

「まんざらでもないか」

「うるさいな。お前が触るからだろう。ごく当たり前の生理現象だ」

征士の左手が触れている部分が、少しずつ質量を増している。
上手くない。
こんなことでおっ勃てていては、征士の思うツボになってしまう。

「やはりなかなか扇情的なものだぞ。毛がないというのは」

そんな当麻の焦りを知ってか知らずか、征士はさらに笑みを深くする。

「変態め」

そんな当麻の悪態にわずかに混ざり始めた湿り気を、征士は見逃さない。

「お前に言われたくはないな」

「お前とは違って……俺はお前にさえひっかからなければ、至ってノーマルなの。わかるか?」

「ほう。それはそれは失礼した。では、本題に集中するとしよう」

そり、そり。

言葉とは裏腹に、ただ単に毛を剃りやすいように補助をしていただけの左手の動きが、別の文脈を持ち始める。

「おい。これ以上、妙なマネは……」

頭をもたげた当麻に、征士はわざと感情のこもらない顔を作ってみせる。

「妙な、とは心外な。こういうことは、お互いにそれなりの気持ちがなければ、妙なことになどならん筈だ」

「……くそっ」

そう言い捨てたまま、当麻はそっぽを向く。
そうならぬようと念じれば念じるほど、不必要に撫で上げられた茎はもう取り繕う余地もなく脈打ち始めている。

そり、そり、そり。

征士の左手は早くも先端を潤ませはじめたその辺りから、当麻の右脚の内腿に移る。
親指で日に焼けていない滑らかなそこを下から上にそっとなぞると、当麻は耐えきれず小さな呻き声をあげ、身体を震わせた。

「じっとしていろと言っているではないか」

「無理だ!危ないだろ!」

もちろん征士には当麻の反応は予測済みで、剃刀は当麻からは見えぬように、その一瞬だけ肌から離しているのだが。
不本意な悪戯に屈したくない気持ちと、快感に素直に身体を揺らしてしまえば肌を切るかもしれないという怖ろしさが、余計に当麻の感度を高めているのが手に取るようにわかる。
征士はそんな可愛い恋人に、更なる悪戯を仕掛けずにはいられない。
そそり立つ中心には決して触れず、すでに剃り上がっているその周辺を撫でる。細く柔らかに波打つ薄い毛並みがなくなったそこは陶器のように滑らかで。
いつもとは違う感触に、当麻の腰がわずかに浮き上がり、確実に荒くなってきている呼吸は、時折吐息のような響きを漏らす。

そり……。

剃刀の動きはようやく止まった。

「もういいだろう。まったく改めて毛の薄いことだ。そのうち頭髪の方も寂しくなるのではないか」

征士は剃刀を置くと、濡れたタオルでそそり立つ当麻自身の周りをぐるりと拭き上げた。

夢の中から続く、突きつけられた刃物の恐怖がようやく去ったのがわかると、当麻は腹筋を使って「よっ」と上体を起こす。
そしてそのままの勢いで征士の頭にポカリと一発、拳骨をお見舞いした。

「黙れ。俺の親父もじーさんもフサフサだ」

「暴力はよせ」

言いながら征士は、左手で当麻に殴られたところをさすりながら、右手はまだ剃り上がった手触りを楽しんでいる。

「アホンダラ!これじゃしばらく温泉も行けないじゃないか」

「部屋に風呂のついたところを探せばいい。……そうだな。せっかくだから、生え揃わんうちに出かけるか」

「お前って、ほんっっとーに変態な」

毒づく当麻をよそに、征士はテキパキと広げた新聞やシェービングクリームの容器をベッドの下へと片付けはじめた。
そんな征士を当麻は横目で見ながら、ふと自分の脚の間にまだ立ち上がったままのモノに目を留める。

「おい、征士」

「何だ」

「ひとまずこれ、責任取れよな」

当麻は親指と人さし指を丸め、自分のモノを指先でピンと弾いてみせた。
征士は極上の微笑みで立ち上がると、左手で当麻の顎をすくう。

「存分に」

そして天窓から覗く太陽から当麻を覆い隠すようにして、口づけた。




おわり


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