たいいくのひ
since November 22th 2012
【073】年越し
間に合った!
緑青で年越し!
**********
「本当に帰らなくて良かったのか? 仙台」
「何を今更。四年生は忙しいのだ。悠長に里帰りなどしていたら卒論が仕上がらん。仕上がらなければせっかくの地元の就職もパァだと、母にはちゃんと言ってある」
「嘘つきめ。ここ三日くらい卒論やってるところなんか一度も見てないぞ」
「人聞きが悪いな。きちんと計画的に取り組んでいれば、年末年始に焦ることはないのだ」
「矛盾してるなぁ」
「まぁ、お前が大阪に帰ると言うなら、私も帰ろうと思ってはいたがな」
「今年は大阪に帰ったところで誰もいないし、俺が毎日研究室に行ってやらんと可愛い菌ちゃんが死んでしまうからな。征士には付き合わせて悪かったな」
「付き合っているわけではない。私がしたくてやっているのだ」
「そうだけどさ」
「気にするな」
「いや。それほど気にしてるわけじゃないけどな」
「お前だって、私がいた方が嬉しいだろう」
「………まぁね」
「何だ。今日は素直だな」
「いつもだろう」
「しかし……。こうやってコタツに入って二人だけで年越しをするのは初めてだな」
「そうだな。あの戦いの最中は、いつの間にか一緒に年越ししていたが、あれ以降は正月は必ず征士は仙台に帰ってたからな」
「ああ。……来年の年越しはどうなっているのだろうな」
「ん?」
「春から……」
「何だよ」
「はぁ………」
「溜息をつくんじゃない。お前が自分で決めたんだろう。仙台の就職」
「そうだが」
「めでたいじゃないか。東京の大学を卒業して地元で公務員。実家の皆さんも万々歳だ」
「………お前は」
「んだよ」
「就職は……まだ少なくとも二年は先だが」
「んー。俺が研究じゃなく臨床を選んで医者になれば、仙台でだっていくらでも就職があるだろうがな。どう考えても、俺は臨床向いてないし」
「そうでもないと思うがな」
「菌ちゃん育てるのは上手いんだけどなぁ」
「………仙台で、仕事があればいいんだがな」
「仙台に行ってもなぁ。……まぁ、何とかなりますよ。距離が離れて壊れるもんなら、それだけのもんだったってことだ」
「いいのか」
「よかない」
「………」
「よくないから何とかするんだろ? ほら! 辛気臭い顔してないで、ビール飲もうぜ」
「そうだな」
「ほら、乾杯!」
「………乾杯」
「まったく。そんなにあれこれ考え込むタマじゃないだろうに」
「考えないタマだから、よく考えないで就職を決めてしまって、それで今更悩んでいるのだ」
「大丈夫だろ。とりあえずさ、土日は休みなんだろう?」
「ああ。たぶんな」
「俺は菌ちゃんがいるからそうそう行けないが、お前はしょっちゅうこっちにこいよ」
「ああ」
「仙台から東京は、新幹線使えば二時間かかんないぞ」
「そうだな。始発で出れば通勤できるかもしれん」
「ははは。………待ってるから。俺」
「ああ」
「毎週来いよ」
「……努力する」
「………」
「………」
「あー何だか湿っぽくなっちゃったなぁ! だいたいお前さぁ、今だって三日と開かないのに、一週間とか耐えられるのか?ヤらないで」
「それは……」
「まさかお前、浮気するつもりじゃないだろうな」
「それはない!」
「ないの?」
「何だそれは」
「いや、だってさ。そんなに距離も時間も離れて、それでお前に浮気するななんて……俺にはそんな権利ないし」
「お前はまた、すぐそういうことを言う」
「だって、そうだろう」
「金曜日の夜、仕事が終わったらこっちに帰ってきて、月曜日にここから仕事に行けば三泊はこっちだ。そうすれば今よりよっぽど、ここにいることになるかもしれん」
「実家が黙ってないだろう。そんな生活」
「文句があるなら東京に出ると言う」
「お。強気」
「お前に関することなら、私は大概何でも耐えられると思うのだ」
「………そう」
「愛してる、当麻」
「ど、どうも………。あ!」
「どうした」
「俺、引っ越そうかな。今は学校とお前んちに行きやすいようにって、ここを選んだけど」
「そういうことなら駅の近くか」
「そういうこと。それにそんなに泊まりに来るんなら、もう一部屋欲しいしな」
「そのスペースに、お前の荷物が増えるだけだぞ」
「ははは。そうかもな。よし!」
「よしって、どうした」
「見に行こうぜ。駅前の不動産屋。ついでに除夜の鐘ついてこよう!」
「さっそくか」
「どうにかなるどうにかなる! 行こう行こう!」
「おいちょっと待て! そんな薄着で行く気か? 」
「征士ー! 持ってきてくれー! 俺のマフラーと手袋!」
「わかった……って、おい! 待て!……まったく走り出したら止まらん奴だ」
「おーい!早くーー!」
おわり
**********
家族と紅白見ながら更新です(笑)
よいお年をー!
緑青で年越し!
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「本当に帰らなくて良かったのか? 仙台」
「何を今更。四年生は忙しいのだ。悠長に里帰りなどしていたら卒論が仕上がらん。仕上がらなければせっかくの地元の就職もパァだと、母にはちゃんと言ってある」
「嘘つきめ。ここ三日くらい卒論やってるところなんか一度も見てないぞ」
「人聞きが悪いな。きちんと計画的に取り組んでいれば、年末年始に焦ることはないのだ」
「矛盾してるなぁ」
「まぁ、お前が大阪に帰ると言うなら、私も帰ろうと思ってはいたがな」
「今年は大阪に帰ったところで誰もいないし、俺が毎日研究室に行ってやらんと可愛い菌ちゃんが死んでしまうからな。征士には付き合わせて悪かったな」
「付き合っているわけではない。私がしたくてやっているのだ」
「そうだけどさ」
「気にするな」
「いや。それほど気にしてるわけじゃないけどな」
「お前だって、私がいた方が嬉しいだろう」
「………まぁね」
「何だ。今日は素直だな」
「いつもだろう」
「しかし……。こうやってコタツに入って二人だけで年越しをするのは初めてだな」
「そうだな。あの戦いの最中は、いつの間にか一緒に年越ししていたが、あれ以降は正月は必ず征士は仙台に帰ってたからな」
「ああ。……来年の年越しはどうなっているのだろうな」
「ん?」
「春から……」
「何だよ」
「はぁ………」
「溜息をつくんじゃない。お前が自分で決めたんだろう。仙台の就職」
「そうだが」
「めでたいじゃないか。東京の大学を卒業して地元で公務員。実家の皆さんも万々歳だ」
「………お前は」
「んだよ」
「就職は……まだ少なくとも二年は先だが」
「んー。俺が研究じゃなく臨床を選んで医者になれば、仙台でだっていくらでも就職があるだろうがな。どう考えても、俺は臨床向いてないし」
「そうでもないと思うがな」
「菌ちゃん育てるのは上手いんだけどなぁ」
「………仙台で、仕事があればいいんだがな」
「仙台に行ってもなぁ。……まぁ、何とかなりますよ。距離が離れて壊れるもんなら、それだけのもんだったってことだ」
「いいのか」
「よかない」
「………」
「よくないから何とかするんだろ? ほら! 辛気臭い顔してないで、ビール飲もうぜ」
「そうだな」
「ほら、乾杯!」
「………乾杯」
「まったく。そんなにあれこれ考え込むタマじゃないだろうに」
「考えないタマだから、よく考えないで就職を決めてしまって、それで今更悩んでいるのだ」
「大丈夫だろ。とりあえずさ、土日は休みなんだろう?」
「ああ。たぶんな」
「俺は菌ちゃんがいるからそうそう行けないが、お前はしょっちゅうこっちにこいよ」
「ああ」
「仙台から東京は、新幹線使えば二時間かかんないぞ」
「そうだな。始発で出れば通勤できるかもしれん」
「ははは。………待ってるから。俺」
「ああ」
「毎週来いよ」
「……努力する」
「………」
「………」
「あー何だか湿っぽくなっちゃったなぁ! だいたいお前さぁ、今だって三日と開かないのに、一週間とか耐えられるのか?ヤらないで」
「それは……」
「まさかお前、浮気するつもりじゃないだろうな」
「それはない!」
「ないの?」
「何だそれは」
「いや、だってさ。そんなに距離も時間も離れて、それでお前に浮気するななんて……俺にはそんな権利ないし」
「お前はまた、すぐそういうことを言う」
「だって、そうだろう」
「金曜日の夜、仕事が終わったらこっちに帰ってきて、月曜日にここから仕事に行けば三泊はこっちだ。そうすれば今よりよっぽど、ここにいることになるかもしれん」
「実家が黙ってないだろう。そんな生活」
「文句があるなら東京に出ると言う」
「お。強気」
「お前に関することなら、私は大概何でも耐えられると思うのだ」
「………そう」
「愛してる、当麻」
「ど、どうも………。あ!」
「どうした」
「俺、引っ越そうかな。今は学校とお前んちに行きやすいようにって、ここを選んだけど」
「そういうことなら駅の近くか」
「そういうこと。それにそんなに泊まりに来るんなら、もう一部屋欲しいしな」
「そのスペースに、お前の荷物が増えるだけだぞ」
「ははは。そうかもな。よし!」
「よしって、どうした」
「見に行こうぜ。駅前の不動産屋。ついでに除夜の鐘ついてこよう!」
「さっそくか」
「どうにかなるどうにかなる! 行こう行こう!」
「おいちょっと待て! そんな薄着で行く気か? 」
「征士ー! 持ってきてくれー! 俺のマフラーと手袋!」
「わかった……って、おい! 待て!……まったく走り出したら止まらん奴だ」
「おーい!早くーー!」
おわり
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家族と紅白見ながら更新です(笑)
よいお年をー!
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