たいいくのひ
since November 22th 2012
【069】その理由(ワケ)は
10月10日。
羽柴当麻さん、お誕生日おめでとうございます!
誕生日前日のお話なので、ちょっとだけ早めに。
**********
「はい。羽柴です」
「…………」
「…………」
「…………」
「……征士か?」
「…………」
「征士だろう? どうしたんだよ」
「……なぜ、私だとわかる」
「…………愛?」
「…………愛??」
「冗談だ。真に受けるな」
「冗談なのか」
「征士、お前はイタズラ電話には向いてないぞ。黙っていてもお前だってわかる」
「なぜだ」
「なぜだろうな」
「まぁいい。そもそも、イタズラ電話のつもりではないのだ」
「じゃあ、なんで黙っているんだよ」
「久しぶりにお前の声を聞いたら、なんだかな」
「はは。相変わらず変なヤツだな。用は何だ」
「用というほどのこともないのだが…………」
「ないのだが?」
「いや…………。うん。本当に用はないのだ」
「ふぅん。お前が用もないのに電話とは珍しいな」
「そうかもしれないな。…………元気にしているか」
「ああ。そこそこな。そっちは元気がないな」
「わかるか」
「なんとなくな。お前って何を考えているのかはよくわからないが、妙にそういうところ、わかりやすいからなぁ」
「そうか。そんなことを言うのはお前くらいだ。…………なぜわかるのだろうな」
「どうしてだろうな。何かあったのか。落ち込むようなことが」
「何かあったと言えばあったし、何もないと言えば何もない、というところか」
「へぇ。よくわからんが、高校生も色々あるからな。竹刀でも振っとけよ。元気が出るんじゃないか?」
「そうかな」
「そんなもんだろう。後はアレだ。彼女とか、いないのか。俺なんかに電話をかけてないで、彼女に慰めてもらえ」
「彼女などいない」
「何だ、しけてるな」
「お前はいるのか」
「俺? 俺も今はいないけど」
「私は…………」
「ん?」
「お前に会いたいな」
「ん?」
「お前に会いたい」
「俺に?」
「そうだ」
「なんでまた」
「なぜだろうな。お前が察する通り、私は今、落ち込んでいるらしい。そうしたら当麻、無性にお前の声が聞きたくなったのだ」
「ふぅん」
「それで電話をかけてみたのだが…………。ふぅんとは何だ。人がせっかく考えて答えているのに、真面目に聞いているのか」
「聞いてる、聞いてる。…………で? どうなんだよ。俺の声を聞いて」
「声を聞いたら、今度は会いたくなった。顔が見たい」
「俺の?」
「そうだ」
「それって、何だか……」
「何だ?」
「いや。…………お前、今、どこで電話をしている?」
「家だが」
「そりゃそうだろうが。家のどこだ? 家族は?」
「ああ。廊下だ。電話は廊下にあるのだ。私以外の家族は皆、部屋でテレビを見て笑っている。妹のはしたない馬鹿笑いが聞こえないか?」
「あはは。そこまでは聞こえないな。そっちは寒いんじゃないか?」
「まだそれ程でもない。大阪よりは少しは寒いのだろうが。お前は? お前はどこで電話しているのだ」
「俺は部屋の中。別にこっちは外もそんなに寒くない。どこで電話をかけようが、誰もいないしな」
「一人か」
「ああ。もう二週間くらい一人だなぁ。親父も仕事が忙しいらしい」
「そうなのか。一人で寂しければ、そちらに行ってやりたいくらいだが、高校生の身では、そう簡単に大阪まで行くわけにもいかん」
「別に今更、寂しかないけどさ。うーん…………そうだなぁ」
「何だ」
「明日行こうかな、お前のところに」
「え?」
「だから、明日。連休だろう。明日は祝日で、明後日は振替休日で」
「仙台まで来る気か?」
「ああ。そうそう。俺、明日誕生日なんだ」
「明日?…………10月10日か」
「そ。一人で暇だしな。祝わせてやるよ、お前に。忙しいのか?」
「明日か。…………いや、たいした用はない」
「じゃあ行くよ。泊まらせてくれるんだろう? お前んち」
「ああ。かまわんが…………」
「が、何だよ」
「何やら緊張するな」
「なんでだよ」
「なぜだろうな」
「ま、行って顔見りゃわかるかもしれん。お前がどんな顔をして、俺に会いたいなんて言っているのか、興味がある」
「わかった。待っている。かけてみるものだな、電話も」
「ありがとうな。じゃあ、明日」
「明日か。妙に待ち遠しいな」
「俺もだ。どうしてだろうな」
「どうしてかな。…………では、おやすみ」
「ああ、おやすみ」
おわり
***********
素敵な誕生日になりますように!
羽柴当麻さん、お誕生日おめでとうございます!
誕生日前日のお話なので、ちょっとだけ早めに。
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「はい。羽柴です」
「…………」
「…………」
「…………」
「……征士か?」
「…………」
「征士だろう? どうしたんだよ」
「……なぜ、私だとわかる」
「…………愛?」
「…………愛??」
「冗談だ。真に受けるな」
「冗談なのか」
「征士、お前はイタズラ電話には向いてないぞ。黙っていてもお前だってわかる」
「なぜだ」
「なぜだろうな」
「まぁいい。そもそも、イタズラ電話のつもりではないのだ」
「じゃあ、なんで黙っているんだよ」
「久しぶりにお前の声を聞いたら、なんだかな」
「はは。相変わらず変なヤツだな。用は何だ」
「用というほどのこともないのだが…………」
「ないのだが?」
「いや…………。うん。本当に用はないのだ」
「ふぅん。お前が用もないのに電話とは珍しいな」
「そうかもしれないな。…………元気にしているか」
「ああ。そこそこな。そっちは元気がないな」
「わかるか」
「なんとなくな。お前って何を考えているのかはよくわからないが、妙にそういうところ、わかりやすいからなぁ」
「そうか。そんなことを言うのはお前くらいだ。…………なぜわかるのだろうな」
「どうしてだろうな。何かあったのか。落ち込むようなことが」
「何かあったと言えばあったし、何もないと言えば何もない、というところか」
「へぇ。よくわからんが、高校生も色々あるからな。竹刀でも振っとけよ。元気が出るんじゃないか?」
「そうかな」
「そんなもんだろう。後はアレだ。彼女とか、いないのか。俺なんかに電話をかけてないで、彼女に慰めてもらえ」
「彼女などいない」
「何だ、しけてるな」
「お前はいるのか」
「俺? 俺も今はいないけど」
「私は…………」
「ん?」
「お前に会いたいな」
「ん?」
「お前に会いたい」
「俺に?」
「そうだ」
「なんでまた」
「なぜだろうな。お前が察する通り、私は今、落ち込んでいるらしい。そうしたら当麻、無性にお前の声が聞きたくなったのだ」
「ふぅん」
「それで電話をかけてみたのだが…………。ふぅんとは何だ。人がせっかく考えて答えているのに、真面目に聞いているのか」
「聞いてる、聞いてる。…………で? どうなんだよ。俺の声を聞いて」
「声を聞いたら、今度は会いたくなった。顔が見たい」
「俺の?」
「そうだ」
「それって、何だか……」
「何だ?」
「いや。…………お前、今、どこで電話をしている?」
「家だが」
「そりゃそうだろうが。家のどこだ? 家族は?」
「ああ。廊下だ。電話は廊下にあるのだ。私以外の家族は皆、部屋でテレビを見て笑っている。妹のはしたない馬鹿笑いが聞こえないか?」
「あはは。そこまでは聞こえないな。そっちは寒いんじゃないか?」
「まだそれ程でもない。大阪よりは少しは寒いのだろうが。お前は? お前はどこで電話しているのだ」
「俺は部屋の中。別にこっちは外もそんなに寒くない。どこで電話をかけようが、誰もいないしな」
「一人か」
「ああ。もう二週間くらい一人だなぁ。親父も仕事が忙しいらしい」
「そうなのか。一人で寂しければ、そちらに行ってやりたいくらいだが、高校生の身では、そう簡単に大阪まで行くわけにもいかん」
「別に今更、寂しかないけどさ。うーん…………そうだなぁ」
「何だ」
「明日行こうかな、お前のところに」
「え?」
「だから、明日。連休だろう。明日は祝日で、明後日は振替休日で」
「仙台まで来る気か?」
「ああ。そうそう。俺、明日誕生日なんだ」
「明日?…………10月10日か」
「そ。一人で暇だしな。祝わせてやるよ、お前に。忙しいのか?」
「明日か。…………いや、たいした用はない」
「じゃあ行くよ。泊まらせてくれるんだろう? お前んち」
「ああ。かまわんが…………」
「が、何だよ」
「何やら緊張するな」
「なんでだよ」
「なぜだろうな」
「ま、行って顔見りゃわかるかもしれん。お前がどんな顔をして、俺に会いたいなんて言っているのか、興味がある」
「わかった。待っている。かけてみるものだな、電話も」
「ありがとうな。じゃあ、明日」
「明日か。妙に待ち遠しいな」
「俺もだ。どうしてだろうな」
「どうしてかな。…………では、おやすみ」
「ああ、おやすみ」
おわり
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素敵な誕生日になりますように!
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