たいいくのひ
since November 22th 2012
【120】闇の中で
闇天。
緑青前提っぽい感じで。
【R18】
**********
「どうもこの闇はただの闇ではないな。日が昇るまでここを動かぬ方が良いだろう。どう思う? 智将天空」
「期待に添えなくて悪いが、はっきり言ってまったくわからん。しかしこの世界に通じていて、しかも闇の力を持つお前がそう言うのなら、きっとそうなのだろう」
「そうとはなんだ」
「ただ事じゃないってことさ。何にしてもこれほど見えないんじゃ、先に進みようがない」
お互いの顔はおろか自分の足元すら見えないほどの闇。
当麻の感覚では日が暮れてしまうにはまだ早いと思われたが、この世界の時間の進み方は人間界とはまた違うのかもしれない。
それにしても日が影りだしてから真っ暗闇になってしまうまでの早さは異様だった。
阿羅醐が消え去ってすぐ、煩悩京はまた不可解な妖力に襲われた。
戦いの傷も癒えぬままに、鎧を纏った少年五人と魔将と呼ばれていた三人の青年は、今は城の中で印を結ぶ迦遊羅の力で何とか支えられている煩悩京を守るべく、また人間界に危害を及ぼさないとも限らない新たな敵について調べるために力を合わせることになった。
まずは新しい仲間を知ることもかねて、元の敵味方を取り合わせて二、三人の組に分かれ、偵察に回ることにした。
遼と秀に那唖挫、征士と伸に螺呪羅、そして当麻と悪奴弥守。
日没までには全員が迦遊羅の元に戻る計画で各方面へと散った。
阿羅醐が消えてから、武装はもとよりアンダーギアの装着もできなくなった。
阿羅醐の消滅により鎧の力が消えたというより、何者かによって封じられているのではないかと当麻は考えている。
生身のままでどこまで相手と渡り合えるのか。
それも大きな不安だった。
手探り同然に一本の大樹を見つけ、その根元に当麻は座り込んだ。
その隣に悪奴弥守が腰を下ろす。
「まずはお前が少し眠るといい、天空。疲れているだろう」
「お前は大丈夫なのか、悪奴弥守」
「お前のように難しいことを考えることはできんが、体力だけはあるからな」
それを聞いて当麻はため息をつく。
智将などと言われても、現在この世界に起きていることについて、今のところまったく見当をつけることができていない。
こんな時は征士や悪奴弥守のように身体を使って道を究めている者の直感の方が、徒らに積み上げた推論より有効なことは多いのだ。
「休ませてもらうか……」
今これ以上何か考えても、いい案が浮かんでくる気もしない。
不思議と腹は減らないが、暗闇のためもあるのか確かに眠い。
目を開けていても閉じていてもわからないくらいの闇なのだが、当麻は目をつぶった。
風の音が聞こえる。
隣にいる悪奴弥守の気配が大きく温かい。
どこか似ているのだろうか。
当麻は征士を思った。
無事に城に帰れただろうか。
帰れたとしたら、心配しているだろうか。
帰らない俺たちのことを。
俺のことを。
昨夜は迦遊羅の傍に番を置きながら交代で休んだ。
いくつかの寝屋に分かれて眠ったのだが、当麻が一人で向かった部屋には、後から征士が入ってきた。
わざと振り返らない当麻を、征士は後ろから抱きしめる。
「よせよ。他の奴らも来るだろう」
「皆、反対側の部屋へ引き上げた。心配ない。……嫌なのか?」
「いや、嫌じゃない」
征士の誘いにも当麻の返事にも温度はない。
そこからはいつものように。
当麻は征士の荒い息遣いを聞きながら、ただひたすらその愛撫を全身に受ける。
月明かりが征士の後ろから差して、金の髪がさらさらと輝く、その輪郭だけが見える。
征士は当麻の名を何度も呼ぶが、当麻はそれに答えない。
乱れぬように。
そう思っても身体は悦びに震え、声が漏れていく。
情が入らぬように。
そう思っても……。
当麻がその冷たい頭で何を考えようとも、身体はほどかれて征士の熱いものを受け入れる。
二度、三度と精を放つと、征士は当麻から離れる。
その後の何をか言いたげな征士の顔を、当麻は決して見ようとはしない。
「やはり……何とも言えぬ、良い香りがするな」
目を閉じてから数秒の後なのか、それとも何分何十分か経ったのか。
悪奴弥守の声に、うとうととしかけた当麻の意識が揺り戻される。
「……?」
当麻は目を閉じたまま、クン……っと鼻から息を吸い込む。
「匂いなんてするか?」
するとすれば、風が運んでくる木々や草の匂い。
他にとりたてて変わった匂いは、当麻には感じられない。
「そうではない。お前だ」
悪奴弥守の声が近い。
吐く息が当麻の耳にかかる。
「俺……?」
「そうだ」
当麻は今度は自分の二の腕を口許まで寄せて、自らの匂いを嗅ぐ。
「汗臭いのか。自分ではわからんが。随分歩いたからな」
「いや……」
悪奴弥守は今度は当麻の襟元に顔を寄せ、鼻をつけんばかりにして、もう一度その匂いを確かめる。
「やはりそうだ。甘い匂いがする。歩いている間もずっと気になっていた。香でも焚き染めているのかと思ったが、今また更に香りが強くなった。お前自身の匂いだ」
「よせ」
自分ではよくわからない自分の匂いを嗅がれるのは、気分のいいものではない。
当麻が悪奴弥守の肩を押しやろうと力を入れたその時、悪奴弥守は当麻を身体ごと一息に引き寄せ、その腕の中に閉じ込めた。
「何を……っ」
悪奴弥守は黙ったまま後ろから当麻の首筋に軽く歯を当てると、べろりと舐め上げる。
「……甘いな」
あぐらの上に座らされる形で抱きすくめられてしまった当麻はそこから逃れようととりあえずいくらか足掻いてはみるが、それは何ほども功を奏さない。
そもそも完全に体格負けしている上に、当麻の疲労に対して悪奴弥守は随分余裕を残している。
当麻をしっかりと抱いたまま、その耳元に囁きかけた。
「光輪もこの香りでほだしたか」
「……!」
当麻の動きが止まる。
「知らぬとでも思っていたか。山犬の鼻の良さをナメるなよ」
「昨日……のか?」
あのことを悪奴弥守は見るなり聞くなりしたのかと、当麻は思った。
「……? 夕べは二人で睦み合っていたのか。この非常時に」
耳にかかる低音に、当麻の背中がぞくりと粟立つ。
悪奴弥守の手がシャツの下から差し入れられ、大きな手のひらが当麻の胸を撫でる。
「安心しろ。覗き見したわけでも漏れ聞こえてきたわけでもない。先の戦いのさなかから感じていたことだ。光輪と天空は恋仲であろうとな。お前にこんなことをすれば光輪が黙っていないか」
指先が乳首を探り当てる。
当麻はその指の動きは拒まずに、悪奴弥守の言葉の方を聞きとがめた。
「は。征士と俺が恋仲だって?」
その冷笑とは対照的に、悪奴弥守の指の動きに合わせて吐く息は少しずつ温度を上げていく。
当麻はまさぐる手にシャツの上から手を重ねるが、それは拒絶の仕草ではなかった。
「そんなんじゃない」
むしろねだるような。
悪奴弥守の指先がくるくるとそこを刺激すると、喉の奥から押し殺した短い声をあげて、当麻は身体を震わせる。
「俺と征士はそんな関係じゃない。あれはただの……遊びだ」
悪奴弥守は左手で胸への愛撫を続けながら、ジーンズの中に手を差し入れようとする。
当麻は自分でベルトを外す。
「征士は何とも思わないさ」
当麻は独り言のように呟いた。
闇にカチャカチャとバックルの音が響く。
ボタンも外すと待ちきれないように、ファスナーを割り開きながら悪奴弥守の手が下着の上から当麻の高まりを捕える。
「俺に……匂いがあるのか?」
浅くなった息の合間に当麻がたずねる。
「ああ。俺の鼻は犬の鼻だからな。世間並みよりは敏感だと思うが……。お前の匂いは男を寄せる匂いだ」
「なるほどな……どうして俺なのかと思っていたが、そういうことか」
あはは、と当麻はまた笑った。
「何がだ」
「征士だよ。あんな綺麗な奴が、どうして俺なんか相手にあんなことをするのかと不思議だったが。……匂いねぇ」
「お前はどうなのだ」
「俺?」
「そうだ。光輪がお前の香りに惹かれて遊びでお前を抱いているとすれば、お前はなんのつもりで光輪に抱かれるのだ。やはり遊びか」
当麻の身体は悪奴弥守の動きにビクビクと熱く反応を示す。
「そう。……遊びだ」
そう言い捨てた。
「遊びなら、俺でも相手になるか」
「なるさ。遊びだからな。相手は誰でもいいんだ。……ちょっと脱がせろよ」
腰を浮かせて当麻は履いていたものを片脚だけ脱ぐ。
「全部脱がんのか」
「面倒だ」
悪奴弥守も下穿きを解き、荒ぶった雄を自ら取り出す。
当麻は昨夜、征士の熱を受け入れたばかりのそこに、先端を当てて腰を沈めていく。
好敵手とはそういうものか。
光と闇は表裏一体ということなのか。
悪奴弥守の身体は何もかもが征士を思い起こさせると、当麻は思う。
征士ではないのだから。
だから声を我慢することもない。
当麻は体内に感じるままに声を上げる。
求められるままに悪奴弥守は当麻を突き上げ、その奥に幾度も己を放った。
「俺の名は九十郎だ。お前は……当麻と言ったか」
当麻、と。
天空をそう呼ぶ光輪の顔が浮かぶ。
その瞳が湛えるのは、信頼している仲間というだけでは説明のつかない、慈しみの光。
「光輪がお前に向ける眼差しは……」
あれは遊びで抱いている相手に向ける眼差しではない。
あんなに近くにいて、それに気づかないとは。
当事者とはそういうものなのだろうか。
いや、気付きたくないのかもしれない。
まったく、頭の良い奴の考えることはわからない。
このままただ光輪に、この面白い男を返してしまうのは惜しいかもしれない。
しばらくこの身体と香りを手の内に入れておくのも悪くはないと、悪奴弥守はその先の言葉を飲み込んだ。
「何だよ」
「いや、何でもない。泣くなよ、天空。いや、当麻」
「何だ九十郎。俺は泣いてなんかない」
そう言って当麻は、悪奴弥守の肩にもたれて今度こそ眠りについた。
闇は深く、全てのものを覆い隠していく。
おわり
緑青前提っぽい感じで。
【R18】
**********
「どうもこの闇はただの闇ではないな。日が昇るまでここを動かぬ方が良いだろう。どう思う? 智将天空」
「期待に添えなくて悪いが、はっきり言ってまったくわからん。しかしこの世界に通じていて、しかも闇の力を持つお前がそう言うのなら、きっとそうなのだろう」
「そうとはなんだ」
「ただ事じゃないってことさ。何にしてもこれほど見えないんじゃ、先に進みようがない」
お互いの顔はおろか自分の足元すら見えないほどの闇。
当麻の感覚では日が暮れてしまうにはまだ早いと思われたが、この世界の時間の進み方は人間界とはまた違うのかもしれない。
それにしても日が影りだしてから真っ暗闇になってしまうまでの早さは異様だった。
阿羅醐が消え去ってすぐ、煩悩京はまた不可解な妖力に襲われた。
戦いの傷も癒えぬままに、鎧を纏った少年五人と魔将と呼ばれていた三人の青年は、今は城の中で印を結ぶ迦遊羅の力で何とか支えられている煩悩京を守るべく、また人間界に危害を及ぼさないとも限らない新たな敵について調べるために力を合わせることになった。
まずは新しい仲間を知ることもかねて、元の敵味方を取り合わせて二、三人の組に分かれ、偵察に回ることにした。
遼と秀に那唖挫、征士と伸に螺呪羅、そして当麻と悪奴弥守。
日没までには全員が迦遊羅の元に戻る計画で各方面へと散った。
阿羅醐が消えてから、武装はもとよりアンダーギアの装着もできなくなった。
阿羅醐の消滅により鎧の力が消えたというより、何者かによって封じられているのではないかと当麻は考えている。
生身のままでどこまで相手と渡り合えるのか。
それも大きな不安だった。
手探り同然に一本の大樹を見つけ、その根元に当麻は座り込んだ。
その隣に悪奴弥守が腰を下ろす。
「まずはお前が少し眠るといい、天空。疲れているだろう」
「お前は大丈夫なのか、悪奴弥守」
「お前のように難しいことを考えることはできんが、体力だけはあるからな」
それを聞いて当麻はため息をつく。
智将などと言われても、現在この世界に起きていることについて、今のところまったく見当をつけることができていない。
こんな時は征士や悪奴弥守のように身体を使って道を究めている者の直感の方が、徒らに積み上げた推論より有効なことは多いのだ。
「休ませてもらうか……」
今これ以上何か考えても、いい案が浮かんでくる気もしない。
不思議と腹は減らないが、暗闇のためもあるのか確かに眠い。
目を開けていても閉じていてもわからないくらいの闇なのだが、当麻は目をつぶった。
風の音が聞こえる。
隣にいる悪奴弥守の気配が大きく温かい。
どこか似ているのだろうか。
当麻は征士を思った。
無事に城に帰れただろうか。
帰れたとしたら、心配しているだろうか。
帰らない俺たちのことを。
俺のことを。
昨夜は迦遊羅の傍に番を置きながら交代で休んだ。
いくつかの寝屋に分かれて眠ったのだが、当麻が一人で向かった部屋には、後から征士が入ってきた。
わざと振り返らない当麻を、征士は後ろから抱きしめる。
「よせよ。他の奴らも来るだろう」
「皆、反対側の部屋へ引き上げた。心配ない。……嫌なのか?」
「いや、嫌じゃない」
征士の誘いにも当麻の返事にも温度はない。
そこからはいつものように。
当麻は征士の荒い息遣いを聞きながら、ただひたすらその愛撫を全身に受ける。
月明かりが征士の後ろから差して、金の髪がさらさらと輝く、その輪郭だけが見える。
征士は当麻の名を何度も呼ぶが、当麻はそれに答えない。
乱れぬように。
そう思っても身体は悦びに震え、声が漏れていく。
情が入らぬように。
そう思っても……。
当麻がその冷たい頭で何を考えようとも、身体はほどかれて征士の熱いものを受け入れる。
二度、三度と精を放つと、征士は当麻から離れる。
その後の何をか言いたげな征士の顔を、当麻は決して見ようとはしない。
「やはり……何とも言えぬ、良い香りがするな」
目を閉じてから数秒の後なのか、それとも何分何十分か経ったのか。
悪奴弥守の声に、うとうととしかけた当麻の意識が揺り戻される。
「……?」
当麻は目を閉じたまま、クン……っと鼻から息を吸い込む。
「匂いなんてするか?」
するとすれば、風が運んでくる木々や草の匂い。
他にとりたてて変わった匂いは、当麻には感じられない。
「そうではない。お前だ」
悪奴弥守の声が近い。
吐く息が当麻の耳にかかる。
「俺……?」
「そうだ」
当麻は今度は自分の二の腕を口許まで寄せて、自らの匂いを嗅ぐ。
「汗臭いのか。自分ではわからんが。随分歩いたからな」
「いや……」
悪奴弥守は今度は当麻の襟元に顔を寄せ、鼻をつけんばかりにして、もう一度その匂いを確かめる。
「やはりそうだ。甘い匂いがする。歩いている間もずっと気になっていた。香でも焚き染めているのかと思ったが、今また更に香りが強くなった。お前自身の匂いだ」
「よせ」
自分ではよくわからない自分の匂いを嗅がれるのは、気分のいいものではない。
当麻が悪奴弥守の肩を押しやろうと力を入れたその時、悪奴弥守は当麻を身体ごと一息に引き寄せ、その腕の中に閉じ込めた。
「何を……っ」
悪奴弥守は黙ったまま後ろから当麻の首筋に軽く歯を当てると、べろりと舐め上げる。
「……甘いな」
あぐらの上に座らされる形で抱きすくめられてしまった当麻はそこから逃れようととりあえずいくらか足掻いてはみるが、それは何ほども功を奏さない。
そもそも完全に体格負けしている上に、当麻の疲労に対して悪奴弥守は随分余裕を残している。
当麻をしっかりと抱いたまま、その耳元に囁きかけた。
「光輪もこの香りでほだしたか」
「……!」
当麻の動きが止まる。
「知らぬとでも思っていたか。山犬の鼻の良さをナメるなよ」
「昨日……のか?」
あのことを悪奴弥守は見るなり聞くなりしたのかと、当麻は思った。
「……? 夕べは二人で睦み合っていたのか。この非常時に」
耳にかかる低音に、当麻の背中がぞくりと粟立つ。
悪奴弥守の手がシャツの下から差し入れられ、大きな手のひらが当麻の胸を撫でる。
「安心しろ。覗き見したわけでも漏れ聞こえてきたわけでもない。先の戦いのさなかから感じていたことだ。光輪と天空は恋仲であろうとな。お前にこんなことをすれば光輪が黙っていないか」
指先が乳首を探り当てる。
当麻はその指の動きは拒まずに、悪奴弥守の言葉の方を聞きとがめた。
「は。征士と俺が恋仲だって?」
その冷笑とは対照的に、悪奴弥守の指の動きに合わせて吐く息は少しずつ温度を上げていく。
当麻はまさぐる手にシャツの上から手を重ねるが、それは拒絶の仕草ではなかった。
「そんなんじゃない」
むしろねだるような。
悪奴弥守の指先がくるくるとそこを刺激すると、喉の奥から押し殺した短い声をあげて、当麻は身体を震わせる。
「俺と征士はそんな関係じゃない。あれはただの……遊びだ」
悪奴弥守は左手で胸への愛撫を続けながら、ジーンズの中に手を差し入れようとする。
当麻は自分でベルトを外す。
「征士は何とも思わないさ」
当麻は独り言のように呟いた。
闇にカチャカチャとバックルの音が響く。
ボタンも外すと待ちきれないように、ファスナーを割り開きながら悪奴弥守の手が下着の上から当麻の高まりを捕える。
「俺に……匂いがあるのか?」
浅くなった息の合間に当麻がたずねる。
「ああ。俺の鼻は犬の鼻だからな。世間並みよりは敏感だと思うが……。お前の匂いは男を寄せる匂いだ」
「なるほどな……どうして俺なのかと思っていたが、そういうことか」
あはは、と当麻はまた笑った。
「何がだ」
「征士だよ。あんな綺麗な奴が、どうして俺なんか相手にあんなことをするのかと不思議だったが。……匂いねぇ」
「お前はどうなのだ」
「俺?」
「そうだ。光輪がお前の香りに惹かれて遊びでお前を抱いているとすれば、お前はなんのつもりで光輪に抱かれるのだ。やはり遊びか」
当麻の身体は悪奴弥守の動きにビクビクと熱く反応を示す。
「そう。……遊びだ」
そう言い捨てた。
「遊びなら、俺でも相手になるか」
「なるさ。遊びだからな。相手は誰でもいいんだ。……ちょっと脱がせろよ」
腰を浮かせて当麻は履いていたものを片脚だけ脱ぐ。
「全部脱がんのか」
「面倒だ」
悪奴弥守も下穿きを解き、荒ぶった雄を自ら取り出す。
当麻は昨夜、征士の熱を受け入れたばかりのそこに、先端を当てて腰を沈めていく。
好敵手とはそういうものか。
光と闇は表裏一体ということなのか。
悪奴弥守の身体は何もかもが征士を思い起こさせると、当麻は思う。
征士ではないのだから。
だから声を我慢することもない。
当麻は体内に感じるままに声を上げる。
求められるままに悪奴弥守は当麻を突き上げ、その奥に幾度も己を放った。
「俺の名は九十郎だ。お前は……当麻と言ったか」
当麻、と。
天空をそう呼ぶ光輪の顔が浮かぶ。
その瞳が湛えるのは、信頼している仲間というだけでは説明のつかない、慈しみの光。
「光輪がお前に向ける眼差しは……」
あれは遊びで抱いている相手に向ける眼差しではない。
あんなに近くにいて、それに気づかないとは。
当事者とはそういうものなのだろうか。
いや、気付きたくないのかもしれない。
まったく、頭の良い奴の考えることはわからない。
このままただ光輪に、この面白い男を返してしまうのは惜しいかもしれない。
しばらくこの身体と香りを手の内に入れておくのも悪くはないと、悪奴弥守はその先の言葉を飲み込んだ。
「何だよ」
「いや、何でもない。泣くなよ、天空。いや、当麻」
「何だ九十郎。俺は泣いてなんかない」
そう言って当麻は、悪奴弥守の肩にもたれて今度こそ眠りについた。
闇は深く、全てのものを覆い隠していく。
おわり
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