たいいくのひ
since November 22th 2012
【058】目覚めたら。
@kco_tenku 征士さん、どうしていいか分からずずっと一緒に横になってて、余りに遅いから起こしにきた伸に「あのさあ、君達が何しようと勝手だけどさあ、朝ごはんなんだから起きてくんない!?」「い、いやこれは…」とかなる訳ですねわかります(*^^*)
小園さんの振ってくださったネタで緑青ー。
**********
「……っくしゅんっ」
あり得ない至近距離から発せられたクシャミの音と、自分ではない何かがベッドの中で動いた感触で征士は目を覚ました。
辺りはすでに明るい。
少々寝坊してしまっただろうか。
ここは柳生邸の二階。
征士と当麻の居室。
さほど広い部屋ではないがベッドが二つ置かれ、男二人がほぼ寝るだけに使っているには申し分のない部屋だ。
ベッドは二つあり、征士と当麻は当然それぞれのベッドで寝ている。
……はずなのだが。
「へくしっ」
再度のクシャミに征士は恐る恐る自分の左側の布団をめくって覗いてみる。
そこには今はもう見慣れてしまった変わった毛色のストレートヘア。
(当…麻……?)
征士は一旦掛け布団を元のように掛け直し、しばし目をつぶる。
これは一体なんなのであろうか。
征士は考える。
ひとつ、これは見間違いである。
ふたつ、これは夢である。
もしかしたら当麻ではなくて、迷い込んだネコなのかもしれない。
それを当麻と見間違えているのだ。
きっとそうだ。
ネコだってくしゃみくらいするではないか。
征士はひとつ目の可能性を探る。
恐る恐るもう一度、掛け布団をめくって自分の左側を検める。
「…………」
しかし現実は検めるまでもなく、そこに存在するものはおおよそネコのサイズではないし、見えているのは間違いなく人間の頭頂部であるし、こんな毛色の人間は当麻以外に見たことがない。
ひとつ目の可能性、アウト。
ふたつ目の可能性。
夢というのは二種類ある。
眠っている間に無意識に見せられる映像。
そしてもうひとつは、自分が心から願っていること。
征士には心当たりがあった。
当麻との同衾を夢に見るほどの、自分の感情に。
誰にもバレないようにしているつもりなのに、なぜか水滸の伸にだけは気づかれてしまっているようで、時々チクリと嫌味を言われる。
曰く「熱い視線を送りすぎ」だとか。
曰く「妙に世話を焼きすぎ」だとか。
征士自身、そのような自覚はまるでないのだが、伸にはそのように見えるらしい。
曰く「よくあれで気づかずに、呑気に同じ部屋で寝起きしてられるよね、当麻も」
当麻のことを見ていたい。
当麻と言葉を交わしたい。
他の男と楽しそうにしているのをみると胸が苦しい。
できれば触れたいし、触れる以上のことも……。
その思いが女性、例えばナスティに向けられたものであればまったくもって問題はないのだが、その対象が同性である当麻だということが、いささか異常事態であるということは征士にもわかっている。
だから当麻に気づかれては困るのだ。
せめて同室の友人という近しい位置は守りたい。
自重しようと思ってはみるものの、自覚のないことを自重するのは難しい。
抑えよう、抑えようとしているから夢に見るのだろうか。
これが夢なのであれば……。
ちょっと触れてみてもいいのではないだろうか……。
征士は左手でそっと当麻の身体に触れてみる。
「んん……」
当麻が小さな声を立ててゴソゴソと寝返りを打ち、こちらを向いた。
征士は慌ててその手を引っ込める。
当麻の吐く息が温かい。
このリアルな感触。
夢ではなさそうだった。
ふたつ目の可能性もなくなった。
当麻が自分のベッドに潜り込んできて、一緒に寝ている。
現実なのだと思うと急に身体が熱くなる。
「征…士……ぃ………」
また当麻がモゾモゾと動いて征士の名前を呼んだかと思うと、左手を征士の身体に乗せた。
征士は身体を硬くする。
背中に変な汗が流れる。
これはいったいなんなのか。
当麻は何を考えているのか。
当麻も自分のことを思ってくれていて、同衾したいと忍んできたのだろうか。
いや、今までそのような素ぶりはひとつも見せなかったではないか。
しかし、だとすればどうしてこのような。
もう一度触れてみてもいいだろうか。
触れては目を覚ましてしまうだろうか。
目覚めたら当麻はどんな反応をするのだろうか。
その時。
部屋のドアが開いて、その隙間から伸が顔を出した。
状況を一瞥すると、軽く眉を寄せる。
「いや、伸、こ、これは……!」
「あのさ、君達が何しようと勝手だけどさ。朝ごはんなんだから起きてくんない?」
何か言い訳をしなくては。
違うのだ。
決してお前が考えているようなことは何も……!
「へっ………くしょんっ」
当麻がそこで派手なくしゃみをして、征士が飛び上がる。
掛け布団がずれて、当麻の肩から上が露出する。
「んん……さむ…………」
あろうことか当麻は両腕を征士の首に回して抱きついて、その胸元に頬を寄せる。
伸は更に呆れた顔をして、ドアの隙間から顔を引っ込める。
「伸……!」
ぱたん、とドアは閉められた。
当麻はそのまままたスヤスヤと寝息を立てている。
急に冷え込んだので、当麻は本能で暖かいところへ潜り込んだだけなのだが。
そんなことは知らない征士は固まったまま、またぐるぐると思案を巡らせるしかないのだった。
当麻が自然に目を覚まし、寝ぼけた垂れ目で
「何やってんの? お前」
と言うその時まで。
おわりー
**********
完全なる片思いなのでしょうか。
頑張れ征士さん!
小園さんの振ってくださったネタで緑青ー。
**********
「……っくしゅんっ」
あり得ない至近距離から発せられたクシャミの音と、自分ではない何かがベッドの中で動いた感触で征士は目を覚ました。
辺りはすでに明るい。
少々寝坊してしまっただろうか。
ここは柳生邸の二階。
征士と当麻の居室。
さほど広い部屋ではないがベッドが二つ置かれ、男二人がほぼ寝るだけに使っているには申し分のない部屋だ。
ベッドは二つあり、征士と当麻は当然それぞれのベッドで寝ている。
……はずなのだが。
「へくしっ」
再度のクシャミに征士は恐る恐る自分の左側の布団をめくって覗いてみる。
そこには今はもう見慣れてしまった変わった毛色のストレートヘア。
(当…麻……?)
征士は一旦掛け布団を元のように掛け直し、しばし目をつぶる。
これは一体なんなのであろうか。
征士は考える。
ひとつ、これは見間違いである。
ふたつ、これは夢である。
もしかしたら当麻ではなくて、迷い込んだネコなのかもしれない。
それを当麻と見間違えているのだ。
きっとそうだ。
ネコだってくしゃみくらいするではないか。
征士はひとつ目の可能性を探る。
恐る恐るもう一度、掛け布団をめくって自分の左側を検める。
「…………」
しかし現実は検めるまでもなく、そこに存在するものはおおよそネコのサイズではないし、見えているのは間違いなく人間の頭頂部であるし、こんな毛色の人間は当麻以外に見たことがない。
ひとつ目の可能性、アウト。
ふたつ目の可能性。
夢というのは二種類ある。
眠っている間に無意識に見せられる映像。
そしてもうひとつは、自分が心から願っていること。
征士には心当たりがあった。
当麻との同衾を夢に見るほどの、自分の感情に。
誰にもバレないようにしているつもりなのに、なぜか水滸の伸にだけは気づかれてしまっているようで、時々チクリと嫌味を言われる。
曰く「熱い視線を送りすぎ」だとか。
曰く「妙に世話を焼きすぎ」だとか。
征士自身、そのような自覚はまるでないのだが、伸にはそのように見えるらしい。
曰く「よくあれで気づかずに、呑気に同じ部屋で寝起きしてられるよね、当麻も」
当麻のことを見ていたい。
当麻と言葉を交わしたい。
他の男と楽しそうにしているのをみると胸が苦しい。
できれば触れたいし、触れる以上のことも……。
その思いが女性、例えばナスティに向けられたものであればまったくもって問題はないのだが、その対象が同性である当麻だということが、いささか異常事態であるということは征士にもわかっている。
だから当麻に気づかれては困るのだ。
せめて同室の友人という近しい位置は守りたい。
自重しようと思ってはみるものの、自覚のないことを自重するのは難しい。
抑えよう、抑えようとしているから夢に見るのだろうか。
これが夢なのであれば……。
ちょっと触れてみてもいいのではないだろうか……。
征士は左手でそっと当麻の身体に触れてみる。
「んん……」
当麻が小さな声を立ててゴソゴソと寝返りを打ち、こちらを向いた。
征士は慌ててその手を引っ込める。
当麻の吐く息が温かい。
このリアルな感触。
夢ではなさそうだった。
ふたつ目の可能性もなくなった。
当麻が自分のベッドに潜り込んできて、一緒に寝ている。
現実なのだと思うと急に身体が熱くなる。
「征…士……ぃ………」
また当麻がモゾモゾと動いて征士の名前を呼んだかと思うと、左手を征士の身体に乗せた。
征士は身体を硬くする。
背中に変な汗が流れる。
これはいったいなんなのか。
当麻は何を考えているのか。
当麻も自分のことを思ってくれていて、同衾したいと忍んできたのだろうか。
いや、今までそのような素ぶりはひとつも見せなかったではないか。
しかし、だとすればどうしてこのような。
もう一度触れてみてもいいだろうか。
触れては目を覚ましてしまうだろうか。
目覚めたら当麻はどんな反応をするのだろうか。
その時。
部屋のドアが開いて、その隙間から伸が顔を出した。
状況を一瞥すると、軽く眉を寄せる。
「いや、伸、こ、これは……!」
「あのさ、君達が何しようと勝手だけどさ。朝ごはんなんだから起きてくんない?」
何か言い訳をしなくては。
違うのだ。
決してお前が考えているようなことは何も……!
「へっ………くしょんっ」
当麻がそこで派手なくしゃみをして、征士が飛び上がる。
掛け布団がずれて、当麻の肩から上が露出する。
「んん……さむ…………」
あろうことか当麻は両腕を征士の首に回して抱きついて、その胸元に頬を寄せる。
伸は更に呆れた顔をして、ドアの隙間から顔を引っ込める。
「伸……!」
ぱたん、とドアは閉められた。
当麻はそのまままたスヤスヤと寝息を立てている。
急に冷え込んだので、当麻は本能で暖かいところへ潜り込んだだけなのだが。
そんなことは知らない征士は固まったまま、またぐるぐると思案を巡らせるしかないのだった。
当麻が自然に目を覚まし、寝ぼけた垂れ目で
「何やってんの? お前」
と言うその時まで。
おわりー
**********
完全なる片思いなのでしょうか。
頑張れ征士さん!
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