たいいくのひ

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「おい、当麻」

「ん？」

「すごいな。何メートルあるだろうか」

「おー、本当だ。立派な七夕飾りだな。さすが老舗デパート」

「短冊に願いごとか……書いていくか？」

「願いごと？ 面倒だな」

「ペアでハワイ旅行が当たるらしいぞ」

「ハワイねぇ……。七夕はどっちかっていうとハワイじゃなくて中国だよなぁ」

「企画する者はそこまで考えていないだろう。しかしハワイに興味がなくとも、こういう季節の行事に興じるのも良いではないか」

「まぁね。お前の願いごとってなに？」

「願いごとか……」

「うん」

「そうだな……一番の願いごとはもう叶っているからな」

「あ、お前それ、今ここで言うなよ？ こんなところで言うなよ？」

「どうしてだ」

「どうしてって……」

「私の願いを何だと思っているのだ？ 当麻」

「え、いや、あの」

「わからないのに口に出すななどと言ったのか？」

「あーいや、なんていうか、な」

「何か自惚れたことを想像したのではないか？」

「う」

「図星だな」

「……じゃあ、なんなんだよ。言ってみろ」

「お前が私のことを愛してくれるように」

「だああああ！ だからこんなところで言うなって言ってるんだろ！ ボケ！」

「小声で怒鳴るのがうまいな」

「注目集めるだろ！よせ！」

「あわあわして目立っているのはお前だろう。もう一度書いた方がいいか？」

「何を？」

「だからお前がわた……」

「いいよいいよいいよ書かなくて！叶ってるんだろっ、もう！」

「では違う願いにしよう」

「その満足気な顔……腹立つな」

「そう言うお前は何と書くのだ」

「うーん、そうだなぁ」

「改めて願わなくても私は……」

「もういいから！ お前はちょっと黙れ！」

「………」

「えーと……そうだな。これがいい」

「名前も書けよ」

「とう、ま……っと」

「では私も」

「なんだそれ。俺の名前を書くなよ」

「いいだろう」

「まぁ、いいけど」

「……よし、と。この箱に入れるのだな」

「よーし。……叶いますように！」

「神社か」

「いいの、いいの。買いもの疲れたなぁ。なんか甘いもの食って帰ろう」

「そうだな」






『二人でハワイに行けますように  当麻』

『当麻の願いが叶いますように  征士』







おわり


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今年は雨降りじゃなかったですね。
二人でいい七夕の夜をすごしているといいなぁ。
ふふふ。