たいいくのひ
since November 22th 2012
【035】誕生日
風宮さん宅「光輪愛風」の征士さん誕生日企画に参加させていただいています。
征誕2013「Surprise For Seiji」はこちらです!
征当。
征士さんお誕生日おめでとうSSです。
征誕2013「Surprise For Seiji」はこちらです!
征当。
征士さんお誕生日おめでとうSSです。
**********
「征士、ごめん」
いつもと同じ時間にベッドに入ると、窓の外からは雨音が聞こえてきた。
おわり
**********
征士さん、お誕生日おめでとうー!
そして風宮さん、今回も素敵な企画をありがとうございます☆*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*☆!
征当部門のお題は「サプライズプレゼント」。
征士さんをマジでビビらせてどうする?
サプライズってそーゆーんじゃないですよねぇ。
わはは。
もちょっとちゃんとイチャイチャしてるのとか、とーせーとかも書けるかな?
六月いっぱいの征誕企画、とーっても楽しみです(^-^)/
「征士、ごめん」
いつもと同じ時間にベッドに入ると、窓の外からは雨音が聞こえてきた。
マンションのひさしからベランダの手すりへと落ちる単調な雨だれに耳を傾けながら、まどろみかけたところに電話が鳴り出す。
こんな時間にかけてくるのは十中八九…やはり、当麻の声だ。
「もしもし征士? ちょっとしくじっちまって、明日行けなくなった」
寝入り端を起こされただけでも若干気分が良くないのに、その内容たるやどうだ。
しかしその声音に相当量の「残念」が滲んでいたので、征士は不機嫌な声が出そうになるところをなんとかこらえる。
「実験なら仕方がない。大丈夫なのか?」
「ああ。はじめからやり直しじゃなくて済むと思うんだけどな。明日はおそらく夜通しになる。本当に悪い。来週はちょっと無理そうなんだけど…」
当麻の背後からは、まだ大学にいるらしき喧騒が聞こえる。
順延でなく、しばらく延期か。
電話に音を拾われないように用心して小さな溜息をつき、次の瞬間には調子を整えて努めて明るい声を出した。
「無理をするな。時間が取れそうになったら連絡してくれ」
「ああ。ほんと…ほんとゴメンな。じゃあ」
「ああ。おやすみ」
それが六月八日の夜のこと。
誕生日の祝いは、何も誕生日当日にしなくてはならないものではない。
祝ってくれる大切な人が元気で、祝ってくれる気持ちを持っていてくれるだけで十分ではないか。
征士は受話器を置くと、そんなことを心の中でつぶやきながら、少し強さを増した雨音を耳にしながら目を閉じた。
どこからそんな情報を仕入れるのだろう。
昼休みに会社の同期の男が声をかけてきた。
「伊達、今日が誕生日なんだって? なんか予定あんのか?」
特に予定はないと言うと、さみしいヤツだ、男前のくせにとひとしきり征士を肴に笑った後、同期の何人かで飲みに行くから一緒にどうかと誘ってくれる。
合コンではないことを確認すると(以前それで酷い目にあったことがあるのだ)、ありがたくその話に乗らせてもらうことにした。
当麻と二人で過ごすつもりだった夜に一人でまっすぐ帰宅するのは、さすがに少し寂しい気がしたのだ。
会社の最寄り駅に程近い居酒屋へ、しとしとと降り続く雨の中、数人で足を運ぶ。
こんな時間にかけてくるのは十中八九…やはり、当麻の声だ。
「もしもし征士? ちょっとしくじっちまって、明日行けなくなった」
寝入り端を起こされただけでも若干気分が良くないのに、その内容たるやどうだ。
しかしその声音に相当量の「残念」が滲んでいたので、征士は不機嫌な声が出そうになるところをなんとかこらえる。
「実験なら仕方がない。大丈夫なのか?」
「ああ。はじめからやり直しじゃなくて済むと思うんだけどな。明日はおそらく夜通しになる。本当に悪い。来週はちょっと無理そうなんだけど…」
当麻の背後からは、まだ大学にいるらしき喧騒が聞こえる。
順延でなく、しばらく延期か。
電話に音を拾われないように用心して小さな溜息をつき、次の瞬間には調子を整えて努めて明るい声を出した。
「無理をするな。時間が取れそうになったら連絡してくれ」
「ああ。ほんと…ほんとゴメンな。じゃあ」
「ああ。おやすみ」
それが六月八日の夜のこと。
誕生日の祝いは、何も誕生日当日にしなくてはならないものではない。
祝ってくれる大切な人が元気で、祝ってくれる気持ちを持っていてくれるだけで十分ではないか。
征士は受話器を置くと、そんなことを心の中でつぶやきながら、少し強さを増した雨音を耳にしながら目を閉じた。
どこからそんな情報を仕入れるのだろう。
昼休みに会社の同期の男が声をかけてきた。
「伊達、今日が誕生日なんだって? なんか予定あんのか?」
特に予定はないと言うと、さみしいヤツだ、男前のくせにとひとしきり征士を肴に笑った後、同期の何人かで飲みに行くから一緒にどうかと誘ってくれる。
合コンではないことを確認すると(以前それで酷い目にあったことがあるのだ)、ありがたくその話に乗らせてもらうことにした。
当麻と二人で過ごすつもりだった夜に一人でまっすぐ帰宅するのは、さすがに少し寂しい気がしたのだ。
会社の最寄り駅に程近い居酒屋へ、しとしとと降り続く雨の中、数人で足を運ぶ。
気のおけない同期何人かとの、男だけの飲み会は気兼ねがなくていい。
普段からベタベタと親しくしているわけではないが、時折ふと声がかかる。
それくらいがちょうど居心地がいい。
「何だよ、伊達。まだ彼女いないのかよ」
酒が入って少し饒舌になった一人がそんなことを聞いてくる。
普段からベタベタと親しくしているわけではないが、時折ふと声がかかる。
それくらいがちょうど居心地がいい。
「何だよ、伊達。まだ彼女いないのかよ」
酒が入って少し饒舌になった一人がそんなことを聞いてくる。
そう言えば春先にも同じような話をした。
その時もやはり、彼女はいないと言ったのだ。
「いないな。彼女は」
こんな場所でのこんな話題の中であっても、彼女だなどと言ったことが知れたら当麻は酷く憤慨するに違いない。
だからと言って「彼氏」かと言えば、それも違うだろう。
恋人というのも、何だか気恥ずかしい。
相棒なのだろうな。
伴侶と言うべきか。
「いい男なのになー。もしかして伊達、アッチの気があるなんじゃないだろうなぁ」
アッチというのが同性愛者ということを指し、この男が本当に私がそうかもしれないとは露とも思わず、ただの軽口として言っているということはわかる。
その時もやはり、彼女はいないと言ったのだ。
「いないな。彼女は」
こんな場所でのこんな話題の中であっても、彼女だなどと言ったことが知れたら当麻は酷く憤慨するに違いない。
だからと言って「彼氏」かと言えば、それも違うだろう。
恋人というのも、何だか気恥ずかしい。
相棒なのだろうな。
伴侶と言うべきか。
「いい男なのになー。もしかして伊達、アッチの気があるなんじゃないだろうなぁ」
アッチというのが同性愛者ということを指し、この男が本当に私がそうかもしれないとは露とも思わず、ただの軽口として言っているということはわかる。
だから私も今はただ笑っておく。
仕事や彼女、趣味や社会情勢について、お互いに話したり聞いたり笑ったりして時間は過ぎる。
仕事や彼女、趣味や社会情勢について、お互いに話したり聞いたり笑ったりして時間は過ぎる。
時々思い出したように酔った誰かが「お誕生日おめでとう!」とジョッキを掲げる。
気がつけば終電の時間が近づいていて、そんな気楽な宴会は慌ててお開きとなった。
いつの間にかに私の誕生日は終わっていた。
マンションに着く頃、ようやく雨は上がった。
一人エントランスをくぐり、エレベーターに乗る。
深夜にいらぬ物音を立てないようにと努めて静かにドアを開け、中へと入る。
短い廊下を部屋へ抜ける。
そこで一瞬驚いて、足が止まった。
今朝、急いで朝食をとったままになっているはずのテーブルの上が片付けられいて、緑色のリボンがかけられた小箱が置いてある。
気がつけば終電の時間が近づいていて、そんな気楽な宴会は慌ててお開きとなった。
いつの間にかに私の誕生日は終わっていた。
マンションに着く頃、ようやく雨は上がった。
一人エントランスをくぐり、エレベーターに乗る。
深夜にいらぬ物音を立てないようにと努めて静かにドアを開け、中へと入る。
短い廊下を部屋へ抜ける。
そこで一瞬驚いて、足が止まった。
今朝、急いで朝食をとったままになっているはずのテーブルの上が片付けられいて、緑色のリボンがかけられた小箱が置いてある。
すぐにピンと来る。
(当麻が昼間、来ていたのだな)
合鍵を渡してあるから連絡もなく出入りしていることは珍しくない。
私にプレゼントを届けようと、学校へ行く前にわざわざ寄ってくれたのであろう。
また少しいい気分になって、もう一杯やりながら包みを開こうと冷蔵庫を開けると、入れた覚えのない銘柄のビールの瓶が二本。
当麻が最近気に入って飲んでいるものだ。
つまみらしき惣菜のパックもある。
これもプレゼントのうちなのだろうか。
二人で飲みたかったな、とつい独り言がこぼれる。
シャワーでも浴びてから腰を据えて飲みなおすかと、着替えをとりに寝室に行く。
寝室に一歩踏み入った瞬間、心臓がすくみ上がり、身体が自然と身構えた。
ベッドに横たわる人影。
…でも次の瞬間、それは今、会いたくてたまらない人物だとわかる。
身体中に走った緊張が一気に抜ける。
ゆっくりとベッドに歩み寄り、うつ伏せに転がっている男の髪を撫でる。
「当麻」
ひくん…と当麻の意識が戻った気配が、征士の手のひらに伝わる。
目を開いた当麻は首の向きだけを変えて、ゆっくりと征士を見上げた。
「あれー? 俺、寝ちゃったか…。何時だ?」
「一時を過ぎたところだ」
「一時!?」
がばと腕を立てて起き上がる。
それからまた、のろのろとベッドの上に正座した。
実験はどうしたのかと聞くと、奮闘虚しく夕方の時点ですっかりオジャンになり、すべてはじめからやり直しの運びになったため、休み明けに仕切り直そうということになったらしい。
「あー、誕生日終わっちまったなぁ」
「もう十分喜ばせてもらった。気にするな」
「喜ぶ? なんで?」
「会えないと思っていたのに、お前に会えたからな」
そう言いながら当麻の隣に腰掛ける。
当麻は一瞬目を大きく開いて、それから歯を見せてニカッと笑って見せる。
照れ隠しだ。
「会えないって言っておけば、こんなことでもプレゼントになるんだ。安いもんだなー」
などと軽口をたたく。
「あ。テーブル見た? 開けてみたか? プレゼント」
(当麻が昼間、来ていたのだな)
合鍵を渡してあるから連絡もなく出入りしていることは珍しくない。
私にプレゼントを届けようと、学校へ行く前にわざわざ寄ってくれたのであろう。
また少しいい気分になって、もう一杯やりながら包みを開こうと冷蔵庫を開けると、入れた覚えのない銘柄のビールの瓶が二本。
当麻が最近気に入って飲んでいるものだ。
つまみらしき惣菜のパックもある。
これもプレゼントのうちなのだろうか。
二人で飲みたかったな、とつい独り言がこぼれる。
シャワーでも浴びてから腰を据えて飲みなおすかと、着替えをとりに寝室に行く。
寝室に一歩踏み入った瞬間、心臓がすくみ上がり、身体が自然と身構えた。
ベッドに横たわる人影。
…でも次の瞬間、それは今、会いたくてたまらない人物だとわかる。
身体中に走った緊張が一気に抜ける。
ゆっくりとベッドに歩み寄り、うつ伏せに転がっている男の髪を撫でる。
「当麻」
ひくん…と当麻の意識が戻った気配が、征士の手のひらに伝わる。
目を開いた当麻は首の向きだけを変えて、ゆっくりと征士を見上げた。
「あれー? 俺、寝ちゃったか…。何時だ?」
「一時を過ぎたところだ」
「一時!?」
がばと腕を立てて起き上がる。
それからまた、のろのろとベッドの上に正座した。
実験はどうしたのかと聞くと、奮闘虚しく夕方の時点ですっかりオジャンになり、すべてはじめからやり直しの運びになったため、休み明けに仕切り直そうということになったらしい。
「あー、誕生日終わっちまったなぁ」
「もう十分喜ばせてもらった。気にするな」
「喜ぶ? なんで?」
「会えないと思っていたのに、お前に会えたからな」
そう言いながら当麻の隣に腰掛ける。
当麻は一瞬目を大きく開いて、それから歯を見せてニカッと笑って見せる。
照れ隠しだ。
「会えないって言っておけば、こんなことでもプレゼントになるんだ。安いもんだなー」
などと軽口をたたく。
「あ。テーブル見た? 開けてみたか? プレゼント」
「いや、これからゆっくり開けようと思っていたところだ」
「へっへー。びっくりするぜ?」
ついさっきまでの寝ぼけまなこが、もうキラキラと輝いている。
出会った頃のポーカーフェイスはどこへ置いてきてしまったのか。
その百面相が今夜はやけに愛しい。
「おそらく、さっきベッドに寝ているお前を見つけたとき以上のびっくりはないぞ」
「いやいやー。開けてみなって! 絶対に驚くから!」
絶対の「ぜ」の後の溜めがやたらと長い。
よほど自身のある、驚きのプレゼントらしい。
当麻に背中を押されてダイニングへと戻る。
小箱には一体何が入っているのだろう。
ついさっきまでの寝ぼけまなこが、もうキラキラと輝いている。
出会った頃のポーカーフェイスはどこへ置いてきてしまったのか。
その百面相が今夜はやけに愛しい。
「おそらく、さっきベッドに寝ているお前を見つけたとき以上のびっくりはないぞ」
「いやいやー。開けてみなって! 絶対に驚くから!」
絶対の「ぜ」の後の溜めがやたらと長い。
よほど自身のある、驚きのプレゼントらしい。
当麻に背中を押されてダイニングへと戻る。
小箱には一体何が入っているのだろう。
それを見た私はどのくらい驚いた顔を当麻に見せることになるのだろうか。
当麻と二人、心踊る一年がまた始まる。
当麻と二人、心踊る一年がまた始まる。
おわり
**********
征士さん、お誕生日おめでとうー!
そして風宮さん、今回も素敵な企画をありがとうございます☆*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*☆!
征当部門のお題は「サプライズプレゼント」。
征士さんをマジでビビらせてどうする?
サプライズってそーゆーんじゃないですよねぇ。
わはは。
もちょっとちゃんとイチャイチャしてるのとか、とーせーとかも書けるかな?
六月いっぱいの征誕企画、とーっても楽しみです(^-^)/
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