たいいくのひ
since November 22th 2012
【036】ある夜のできごと
【R18】
そして閲覧注意。
当麻と当麻。
**********
「ちょっとその辺、歩いてくる」
「一人でかい?」
伸が心配そうに当麻を見上げる。
「そんなに遠くには行かない。一人で考えたいんだ」
「うん…わかった。気をつけて」
秀は眠っているようだ。
遼はじっと黙っている。
三人を残した廃墟を出て、月明かりに照らされた死んだような集落を歩く。
「征士…」
一人で行かせるべきではなかった。
状況を甘く見過ぎていた。
戻ってくる筈の時間はとうに過ぎている。
征士の身に一体何があったのか。
嫌な胸騒ぎがする。
しかし冷静ではない自分も感じる。
この頃、征士のことになるとこうだ。
一人で偵察に行き、予定通りに戻らないのが他の三人だったら。
自分はまだもう少し冷静に次の策を考えているはずだと当麻は思う。
それが征士のこととなると、途端に考えがまとまらなくなる。
征士は自分にとって何なのだろうか。
征士に対するこの思いは…。
そろそろ戻った方がいいな。
当麻がそう考えたとき、その声は聞こえた。
「おい」
聞いたことがある声。
しかし初めて呼ばれるような不思議な感覚に、当麻は足を止めた。
「おい」
二度目の声はさっきより近くから聞こえた。
声の聞こえた方に振り返る。
そこにはアンダーギアを身にまとった少年がいた。
当麻は立ち尽くしたまま、三回ほど瞬きをした。
自分の目の前三メートルのところに立っているのは。
青い髪に青いバンダナを巻いた、青いアンダーギアの少年。
…自分だった。
「驚いたな」
確かに驚いた。
しかしその言葉を口にしたのは当麻ではなく、目の前のもう一人のトウマだ。
「幻とかじゃなくて、本物の俺か」
トウマは当麻の目の前でアンダーギアを解いて、見慣れた私服に戻る。
そして当麻に近づくと、指先でその頬に触れた。
「俺…なのか?」
触れられた当麻はつぶやく。
敵のあやかしだとか、幻だとか、そういうものではないという気がする。
自分自身だからわかるのだろうか。
そこにいて、自分に触れたのは生身の本物の自分だと当麻は感じた。
しかし、わけはわからない。
「一体、どういうことなんだ?」
目の前のトウマに疑問を投げかける。
トウマは無表情のまま、吐き捨てるように言った。
「俺は多分、ちょっと未来のお前かもしれない。お前とやりにきたんだ。征士の命がかかっている。悪く思うな」
征士の名前を聞いた途端、当麻の頭は熱くなる。
「征士がどうかしたのか?」
当麻はトウマの両肩に手をかけた。
青い視線が至近距離でぶつかる。
「タチの悪いやつに捕まっている。傷つけられたくなければ、俺にお前と身体を繋げてこいと…」
トウマの口調はあくまでも冷たく、あくまでも静かだ。
「身体を…繋げるだと?」
何を言っているのかわからない、と当麻はトウマに目で伝える。
「やるってことだよ。セックスだ。お前、やったことないのか?」
当麻の目を覗き込むトウマの目が月光にとろりと光る。
当麻はトウマの肩に置いた手を下ろし、一歩下がった。
セックスだと?
男同士で?
「…ついさっきの俺のようにみえるけど、少し違うんだな」
トウマは当麻の瞳の奥を覗き込むように見つめたかと思うと、ふっと視線を外した。
「とにかく済ませようぜ。アンダーギアを解けよ」
何ひとつわけがわからないが、目の前のトウマが自分であり、征士の無事のためにはこの自分の言うことを聞いた方がいいことだけは肌で感じることができた。
当麻はアンダーギアを解いた。
同じ服を着た、全く容姿の変わらない二人が向き合う。
次の瞬間、トウマが当麻の腕をとり、引き寄せて強引に抱きしめる。
驚いて目を見開く当麻の半開きになった唇に、トウマの唇が重ねられた。
キスをするのは初めてではない。
その先だって。
唇にでも、身体の他の部分にでも、キスをすれば相手の女の味がするものだ。
でもこれは違う。
自分とのキスは、ほんのわずかの体温の違いがあるだけで、まったく味というものがしなかった。
ただ自分より少し暖かいだけの舌が、唇を割って入り込んでくる。
当麻は押されるままに低い草むらに腰を落とし、背をついた。
カサカサと小さな生き物が去っていく音がする。
遠くで梟の鳴く声が聞こえる。
人はいないのに、他のイキモノはいるんだな。
頭の片隅で当麻はそんなことを考えた。
それからふと、征士の顔を思い出した。
当麻は求められるままに舌を、味のしない唾液を受け入れる。
吸われるがままに舌を、トウマの舌に絡めていく。
次第にわずかな温度の違いもわからなくなっていく。
「不思議なもんだな。双子の兄弟がいたら、こんな感じなのかな」
深い深い口づけの後、二度三度、唇をついばむようにしてトウマは顔を上げた。
押し倒した形になった当麻の上に跨り、上着を脱がせる。
「双子の兄弟が、こんなことするか」
あり得ない状況と長いキスに息の上がった当麻は、抵抗はしないがトウマを睨みつける。
トウマは気にする様子もない。
「俺としちゃ、過去に戻って過去の自分と対峙しているってつもりだ。お前のいた場所と時間は、つい何時間か前の俺がいた場所や時間と同じだからな。お前は征士を探していたんだろう?」
トウマは当麻の上半身をすっかり裸にしてしまうと、また覆いかぶさり、当麻の乳首に舌を這わせる。
当麻は初めての甘い刺激に身体を強張らせる。
「探して…いたわけじゃない。どうしたものかと…」
「そうか…やっぱり少しずつ違うのか」
当麻の乳首を舌先で刺激しながら、トウマの右の手は脇腹を優しく愛撫し、下へとおりていく。
「俺が過去の……お前だとしたら、今このやりとりの記憶だって…お前は覚えている…はずだ」
トウマの舌先が乳首をかすめるたびに、当麻の身体は波打ち、息が弾んでいく。
「そうだな。俺にこんな記憶はない」
そう言ってトウマはべろりと舐め上げた。
「…ぁ…っ」
堪らずに当麻の口から甘い息が漏れる。
それがいたたまれなくて、頬が熱くなる。
思わず両手で顔を覆った。
「案外可愛いじゃないか。やられる俺も」
そう言いながら、トウマは当麻のジーンズに手をかける。
当麻が目を開くと自分の手指の間から、月明かりにトウマが薄く微笑んでいるのが見える。
確かに自分なのに、自分ではないようだと当麻は思った。
「ずいぶん慣れてるんだな、こういうことに」
すべて脱がされながら、なす術もない当麻が悔し紛れに言葉を投げかける。
トウマは表情も変えずに飄々と答える。
「毎晩やってるからな。征士と」
「征士と…? …ぁっ」
当麻の昂ぶったペニスの先に、トウマが口づける。
「征士と…どういう…関係なんだ?」
当麻は両手で顔を覆ったまま問うた。
それは不可解な、自分の征士への思いに対する問いでもあったかもしれない。
「お前も征士が好きなんだろ?」
そう言うとトウマは当麻のペニスに丁寧に舌を這わせる。
それは慣れた動作で、いつもの手順を間違いなく踏んでいるという感じがした。
「わから…ない…っ」
「ふうん」
トウマは指で刺激を与え続けながら、もう片方の手で当麻の顔を覆った手を退かせると、また当麻の唇に軽く口づけた。
今度のキスは少し汗のような、体液の香りがした。
トウマは当麻の顔をじっと見つめながら言った。
「俺は征士が好きだ。あいつがいなくちゃ生きてはいけない」
「……っ!」
体液を絡ませたトウマの指先が当麻の後孔に忍ばせられる。
指先はそのまま中へと潜り込む。
「ぅぁ…っ」
当麻の身体が月光の下でしなる。
「俺も気持ちいいんだな、こういうの」
当麻の内側を深く差し込んだ指で混ぜ返すと引き抜く。
当麻の正面に回ると両脚の間に割って入り、当麻の腰を持ち上げる。
「俺もたいがいだな。自分相手に勃っちまうんだからさ」
そうつぶやいて、今度は空を見上げる。
「どこから見てんのか知らないが、よく見とけよ!」
トウマは上空に向かって叫ぶ。
それから当麻をまっすぐに見つめると、
「まったく悪趣味この上ない。だけど大事な征士に傷をつけられちゃ困るからな。…我慢してくれよ」
そう言って、一息に当麻を貫いた。
「…………っ!!」
とてつもなく不自然な圧迫感に内蔵がせり上がる気がして、当麻は声も出せない。
しかし、そんなにも滴らせていたかと思うほど、その部分は当麻の体液でしとどに濡れていたらしく、直前に覚悟したほどの激痛はなかった。
「大丈夫か?」
当麻の身体をゆすりながら、トウマは当麻の表情を伺っている。
「だい…じょっ…ぶじゃ…ねぇよ!」
もう一人の自分と比べて自分だけが余裕がないことが腹立たしく恥ずかしく、当麻はトウマを睨みつける。
「俺を、征士だと思え」
「…?」
「好きだろう? 征士が。俺だと思うなよ。征士だと…思えよ」
トウマの息も段々と上がってきているのがわかる。
当麻は征士を思って自分で精を放った、何日か前の自分を思い出す。
果てた後の罪悪感に記憶から消したつもりでいたけれど。
俺は征士とこうなりたいのかもしれない。
「あ…ぁっ ……あ …ぅああっ 」
熱さと官能で朦朧とした思考とは別のところで、身体の真ん中の辺りがどんどんと高まっていく。
「ん…ぁあっ せ…いじ……っ」
「…そうだ。…征士だ。…イけ。イッちまえ」
「……ぁあっ」
「………!」
トウマとの間に挟まれた当麻のペニスがぶちまけるのと同時に、トウマも当麻の中にすべて吐き出した。
虫の声と二人の荒い息遣いだけが聞こえていた。
トウマが力を抜いて、当麻の上に身体を預けた。
一瞬当麻の上に重みがかかり、熱い息をその耳元に感じたが、次の瞬間にはその息も重みも姿もすべて、まるで始めからなかったかのように、消えた。
風が吹いて、草が揺れる。
当麻はそのまましばらく空を見上げていた。
さっきまでもう一人の自分と繋がっていた場所には、まだ疼くような違和感が残っていて、そこから何か流れて落ちるのがわかる。
伸が心配しているだろう。
そう思って当麻はのろのろと起き上がると、自分の体液ももう一人の汗も、草も泥も構わず服を着た。
すべてが元通りになり、軽く膝についていた土を払ったとき、向こうから人の気配が流れてきた。
「そこにいるのは当麻か?」
息を切らせて走ってきたのは。
「征士!?」
月明かりで金の髪が光る。
「遅くなった。すまない。敵に捕まってしまってな」
「大丈夫だったのか?」
「ああ。しばらくしたら解放された。何があったのかよくわからないが…」
征士は不思議そうな顔で話す。
「そうか。それは良かった。じゃあ戻ろう。伸たちが心配してる」
当麻は汗と埃にまみれた顔で微笑むと、歩き出した。
「ああ」
征士と当麻は、仲間が待つ廃墟へと向かう。
いつの間にか征士が当麻を追い抜いて歩いている。
あっちの当麻は征士に無事に会えたんだろうか。
そんなことを考えながら、当麻は半歩先を行く征士の、月に照らされた横顔をじっと見つめていた。
おわり
**********
征士さんの誕生月だというのに
征士さんがほとんど登場しないお話で。
でも受け当麻がメインで、
好きなのは征士さんだから征当なのかなー。
やっているのは当麻と当麻なので、一応当×当ってことで。
本人×本人って噂だけ聞いたけど自分では読んだことなくて、
とりあえず自作してみましたケド(笑)。
私的には受け当麻も攻め当麻も愛しているから萌えますけど、
征当や当征どちらかっていうフツーの(笑)方はどーなんでしょー。
ははははは。
そして閲覧注意。
当麻と当麻。
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「ちょっとその辺、歩いてくる」
「一人でかい?」
伸が心配そうに当麻を見上げる。
「そんなに遠くには行かない。一人で考えたいんだ」
「うん…わかった。気をつけて」
秀は眠っているようだ。
遼はじっと黙っている。
三人を残した廃墟を出て、月明かりに照らされた死んだような集落を歩く。
「征士…」
一人で行かせるべきではなかった。
状況を甘く見過ぎていた。
戻ってくる筈の時間はとうに過ぎている。
征士の身に一体何があったのか。
嫌な胸騒ぎがする。
しかし冷静ではない自分も感じる。
この頃、征士のことになるとこうだ。
一人で偵察に行き、予定通りに戻らないのが他の三人だったら。
自分はまだもう少し冷静に次の策を考えているはずだと当麻は思う。
それが征士のこととなると、途端に考えがまとまらなくなる。
征士は自分にとって何なのだろうか。
征士に対するこの思いは…。
そろそろ戻った方がいいな。
当麻がそう考えたとき、その声は聞こえた。
「おい」
聞いたことがある声。
しかし初めて呼ばれるような不思議な感覚に、当麻は足を止めた。
「おい」
二度目の声はさっきより近くから聞こえた。
声の聞こえた方に振り返る。
そこにはアンダーギアを身にまとった少年がいた。
当麻は立ち尽くしたまま、三回ほど瞬きをした。
自分の目の前三メートルのところに立っているのは。
青い髪に青いバンダナを巻いた、青いアンダーギアの少年。
…自分だった。
「驚いたな」
確かに驚いた。
しかしその言葉を口にしたのは当麻ではなく、目の前のもう一人のトウマだ。
「幻とかじゃなくて、本物の俺か」
トウマは当麻の目の前でアンダーギアを解いて、見慣れた私服に戻る。
そして当麻に近づくと、指先でその頬に触れた。
「俺…なのか?」
触れられた当麻はつぶやく。
敵のあやかしだとか、幻だとか、そういうものではないという気がする。
自分自身だからわかるのだろうか。
そこにいて、自分に触れたのは生身の本物の自分だと当麻は感じた。
しかし、わけはわからない。
「一体、どういうことなんだ?」
目の前のトウマに疑問を投げかける。
トウマは無表情のまま、吐き捨てるように言った。
「俺は多分、ちょっと未来のお前かもしれない。お前とやりにきたんだ。征士の命がかかっている。悪く思うな」
征士の名前を聞いた途端、当麻の頭は熱くなる。
「征士がどうかしたのか?」
当麻はトウマの両肩に手をかけた。
青い視線が至近距離でぶつかる。
「タチの悪いやつに捕まっている。傷つけられたくなければ、俺にお前と身体を繋げてこいと…」
トウマの口調はあくまでも冷たく、あくまでも静かだ。
「身体を…繋げるだと?」
何を言っているのかわからない、と当麻はトウマに目で伝える。
「やるってことだよ。セックスだ。お前、やったことないのか?」
当麻の目を覗き込むトウマの目が月光にとろりと光る。
当麻はトウマの肩に置いた手を下ろし、一歩下がった。
セックスだと?
男同士で?
「…ついさっきの俺のようにみえるけど、少し違うんだな」
トウマは当麻の瞳の奥を覗き込むように見つめたかと思うと、ふっと視線を外した。
「とにかく済ませようぜ。アンダーギアを解けよ」
何ひとつわけがわからないが、目の前のトウマが自分であり、征士の無事のためにはこの自分の言うことを聞いた方がいいことだけは肌で感じることができた。
当麻はアンダーギアを解いた。
同じ服を着た、全く容姿の変わらない二人が向き合う。
次の瞬間、トウマが当麻の腕をとり、引き寄せて強引に抱きしめる。
驚いて目を見開く当麻の半開きになった唇に、トウマの唇が重ねられた。
キスをするのは初めてではない。
その先だって。
唇にでも、身体の他の部分にでも、キスをすれば相手の女の味がするものだ。
でもこれは違う。
自分とのキスは、ほんのわずかの体温の違いがあるだけで、まったく味というものがしなかった。
ただ自分より少し暖かいだけの舌が、唇を割って入り込んでくる。
当麻は押されるままに低い草むらに腰を落とし、背をついた。
カサカサと小さな生き物が去っていく音がする。
遠くで梟の鳴く声が聞こえる。
人はいないのに、他のイキモノはいるんだな。
頭の片隅で当麻はそんなことを考えた。
それからふと、征士の顔を思い出した。
当麻は求められるままに舌を、味のしない唾液を受け入れる。
吸われるがままに舌を、トウマの舌に絡めていく。
次第にわずかな温度の違いもわからなくなっていく。
「不思議なもんだな。双子の兄弟がいたら、こんな感じなのかな」
深い深い口づけの後、二度三度、唇をついばむようにしてトウマは顔を上げた。
押し倒した形になった当麻の上に跨り、上着を脱がせる。
「双子の兄弟が、こんなことするか」
あり得ない状況と長いキスに息の上がった当麻は、抵抗はしないがトウマを睨みつける。
トウマは気にする様子もない。
「俺としちゃ、過去に戻って過去の自分と対峙しているってつもりだ。お前のいた場所と時間は、つい何時間か前の俺がいた場所や時間と同じだからな。お前は征士を探していたんだろう?」
トウマは当麻の上半身をすっかり裸にしてしまうと、また覆いかぶさり、当麻の乳首に舌を這わせる。
当麻は初めての甘い刺激に身体を強張らせる。
「探して…いたわけじゃない。どうしたものかと…」
「そうか…やっぱり少しずつ違うのか」
当麻の乳首を舌先で刺激しながら、トウマの右の手は脇腹を優しく愛撫し、下へとおりていく。
「俺が過去の……お前だとしたら、今このやりとりの記憶だって…お前は覚えている…はずだ」
トウマの舌先が乳首をかすめるたびに、当麻の身体は波打ち、息が弾んでいく。
「そうだな。俺にこんな記憶はない」
そう言ってトウマはべろりと舐め上げた。
「…ぁ…っ」
堪らずに当麻の口から甘い息が漏れる。
それがいたたまれなくて、頬が熱くなる。
思わず両手で顔を覆った。
「案外可愛いじゃないか。やられる俺も」
そう言いながら、トウマは当麻のジーンズに手をかける。
当麻が目を開くと自分の手指の間から、月明かりにトウマが薄く微笑んでいるのが見える。
確かに自分なのに、自分ではないようだと当麻は思った。
「ずいぶん慣れてるんだな、こういうことに」
すべて脱がされながら、なす術もない当麻が悔し紛れに言葉を投げかける。
トウマは表情も変えずに飄々と答える。
「毎晩やってるからな。征士と」
「征士と…? …ぁっ」
当麻の昂ぶったペニスの先に、トウマが口づける。
「征士と…どういう…関係なんだ?」
当麻は両手で顔を覆ったまま問うた。
それは不可解な、自分の征士への思いに対する問いでもあったかもしれない。
「お前も征士が好きなんだろ?」
そう言うとトウマは当麻のペニスに丁寧に舌を這わせる。
それは慣れた動作で、いつもの手順を間違いなく踏んでいるという感じがした。
「わから…ない…っ」
「ふうん」
トウマは指で刺激を与え続けながら、もう片方の手で当麻の顔を覆った手を退かせると、また当麻の唇に軽く口づけた。
今度のキスは少し汗のような、体液の香りがした。
トウマは当麻の顔をじっと見つめながら言った。
「俺は征士が好きだ。あいつがいなくちゃ生きてはいけない」
「……っ!」
体液を絡ませたトウマの指先が当麻の後孔に忍ばせられる。
指先はそのまま中へと潜り込む。
「ぅぁ…っ」
当麻の身体が月光の下でしなる。
「俺も気持ちいいんだな、こういうの」
当麻の内側を深く差し込んだ指で混ぜ返すと引き抜く。
当麻の正面に回ると両脚の間に割って入り、当麻の腰を持ち上げる。
「俺もたいがいだな。自分相手に勃っちまうんだからさ」
そうつぶやいて、今度は空を見上げる。
「どこから見てんのか知らないが、よく見とけよ!」
トウマは上空に向かって叫ぶ。
それから当麻をまっすぐに見つめると、
「まったく悪趣味この上ない。だけど大事な征士に傷をつけられちゃ困るからな。…我慢してくれよ」
そう言って、一息に当麻を貫いた。
「…………っ!!」
とてつもなく不自然な圧迫感に内蔵がせり上がる気がして、当麻は声も出せない。
しかし、そんなにも滴らせていたかと思うほど、その部分は当麻の体液でしとどに濡れていたらしく、直前に覚悟したほどの激痛はなかった。
「大丈夫か?」
当麻の身体をゆすりながら、トウマは当麻の表情を伺っている。
「だい…じょっ…ぶじゃ…ねぇよ!」
もう一人の自分と比べて自分だけが余裕がないことが腹立たしく恥ずかしく、当麻はトウマを睨みつける。
「俺を、征士だと思え」
「…?」
「好きだろう? 征士が。俺だと思うなよ。征士だと…思えよ」
トウマの息も段々と上がってきているのがわかる。
当麻は征士を思って自分で精を放った、何日か前の自分を思い出す。
果てた後の罪悪感に記憶から消したつもりでいたけれど。
俺は征士とこうなりたいのかもしれない。
「あ…ぁっ ……あ …ぅああっ 」
熱さと官能で朦朧とした思考とは別のところで、身体の真ん中の辺りがどんどんと高まっていく。
「ん…ぁあっ せ…いじ……っ」
「…そうだ。…征士だ。…イけ。イッちまえ」
「……ぁあっ」
「………!」
トウマとの間に挟まれた当麻のペニスがぶちまけるのと同時に、トウマも当麻の中にすべて吐き出した。
虫の声と二人の荒い息遣いだけが聞こえていた。
トウマが力を抜いて、当麻の上に身体を預けた。
一瞬当麻の上に重みがかかり、熱い息をその耳元に感じたが、次の瞬間にはその息も重みも姿もすべて、まるで始めからなかったかのように、消えた。
風が吹いて、草が揺れる。
当麻はそのまましばらく空を見上げていた。
さっきまでもう一人の自分と繋がっていた場所には、まだ疼くような違和感が残っていて、そこから何か流れて落ちるのがわかる。
伸が心配しているだろう。
そう思って当麻はのろのろと起き上がると、自分の体液ももう一人の汗も、草も泥も構わず服を着た。
すべてが元通りになり、軽く膝についていた土を払ったとき、向こうから人の気配が流れてきた。
「そこにいるのは当麻か?」
息を切らせて走ってきたのは。
「征士!?」
月明かりで金の髪が光る。
「遅くなった。すまない。敵に捕まってしまってな」
「大丈夫だったのか?」
「ああ。しばらくしたら解放された。何があったのかよくわからないが…」
征士は不思議そうな顔で話す。
「そうか。それは良かった。じゃあ戻ろう。伸たちが心配してる」
当麻は汗と埃にまみれた顔で微笑むと、歩き出した。
「ああ」
征士と当麻は、仲間が待つ廃墟へと向かう。
いつの間にか征士が当麻を追い抜いて歩いている。
あっちの当麻は征士に無事に会えたんだろうか。
そんなことを考えながら、当麻は半歩先を行く征士の、月に照らされた横顔をじっと見つめていた。
おわり
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征士さんの誕生月だというのに
征士さんがほとんど登場しないお話で。
でも受け当麻がメインで、
好きなのは征士さんだから征当なのかなー。
やっているのは当麻と当麻なので、一応当×当ってことで。
本人×本人って噂だけ聞いたけど自分では読んだことなくて、
とりあえず自作してみましたケド(笑)。
私的には受け当麻も攻め当麻も愛しているから萌えますけど、
征当や当征どちらかっていうフツーの(笑)方はどーなんでしょー。
ははははは。
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