たいいくのひ
since November 22th 2012
【033】クローゼット
世話焼き征士さん。
これはやっぱり緑青?
**********
「おい、当麻」
「なんだよ。帰ってくるなり」
「これは嫌がらせなのか?」
「は?…何が?」
「これだ」
「これって…俺のクローゼットが、何か?」
「何かだと?」
「なになに? 何か怒ってんのか?」
「…本当にこれを見て、何とも思わんのか、貴様は」
「お、出たな、貴様。でも何だかわかんねーよ。片付いてるだろ? ほら、俺にしては」
「なぜ片付いているかどうかがわかるのだ」
「なぜって…見えてるじゃん、目の前に。クローゼットの中が整然と整えられているではないですか」
「だから、なぜ中が見えているのかと聞いているのだ」
「はぁ? 何だよ………あ」
「わかったか」
「……開けっ放しってこと?」
「そうだ」
「そうだな」
「毎朝、毎晩、私は一日に何度お前に『お前のクローゼットが開いていた』と小言を言っていると思うのだ」
「けっこう言ってるよな」
「なのになぜ閉めない? 開けたら閉めるというだけのことが、なぜできん」
「なんでだろうなぁ。わざとじゃないんだぜ?」
「その優秀な頭でなぜ、その程度のことを覚えていられないのだ」
「んー。…お前が閉めてくれちゃうからじゃないのか? 帰ってきたら閉まっているから、気づかないんじゃないか」
「今は閉めずにお前を呼んだだろう。初めてではないぞ」
「それもそうだな」
「しかも…開いているクローゼットの目の前で散々嫌味を言っても、開いていることにすら気づきもしないではないか」
「うーん、そうか…。処置なしだな」
「諦めるな! 対策案を出せ!」
「おっかないなぁ。うーん、対策ねぇ…。覚えてられないし、気づきもしないんだからなぁ…。あ、そうだ!」
「なんだ。言ってみろ」
「扉を外す! ほら、ないものは閉めらんないだろ? 閉まってないことが気にならない、逆転の発想!」
「当麻、貴様…」
「あ、あんまりいい案なんで感動しちゃった?」
「…こんないい加減な男を軍師として命を賭けていたとはおそろしいな。痴将め」
「何だよ、仕方がないだろう? 俺だってできるだけ気をつけるけどさ、開いてるのが気になるのはお前なんだから、まぁ、教えてくれるとか、閉めてくれるとか、頼むよ。な?」
「なぜそうなる…。よし、ペナルティを作ろう」
「ペナルティ? …クローゼット閉めなかったら、ヘン顔30秒とか?」
「それは誰の何に対するペナルティなのだ…」
「晩酌のビールおあずけとか?」
「お前は時々舐めるくらいしか飲まんではないか」
「じゃあなんだよー」
「お前が一番困ることはなんだ」
「困ることねぇ…。お前がいなくなることかな。征士が出て行っちゃったら、俺、すごく困るよ」
「人を便利屋扱いしおって…。しかも、なぜ貴様のペナルティで私が出ていかなくてはならんのだ。おかしいではないか」
「もー。どうだっていいだろう? クローゼットが開いてるか閉まってるかなんて小さなことで、伊達征士ともあろう男がいちいち目くじら立てるなよ。な?」
「そうやって、なついてみせたり、持ち上げたフリをしても、ごまかされんからな」
「バレてるか…」
「とにかくクローゼットは閉めろ。私にこれ以上、貴様の世話を焼かせるな」
「なんだよー。好きでやってるくせにー」
「何だと!?」
「わー、ごめん! しまって! 竹刀しまって!」
「今度開け放してあれば光輪剣だ。よく覚えておけ」
「暴力反対ー!」
「冗談はさておき…」
「…冗談に見えなかったぞ?」
「開け放たないためのアイデアを真面目に考えろ。その頭脳を生活に活かせ」
「ちぇ。わかったよ」
「では早く手を洗って来い。うがいもしろよ。飯の仕度ができているからな」
「へいへい」
「返事ははいだ!」
「はいよー」
おわり
**********
気になっちゃう征士さん。
愛よね、愛。
これはやっぱり緑青?
**********
「おい、当麻」
「なんだよ。帰ってくるなり」
「これは嫌がらせなのか?」
「は?…何が?」
「これだ」
「これって…俺のクローゼットが、何か?」
「何かだと?」
「なになに? 何か怒ってんのか?」
「…本当にこれを見て、何とも思わんのか、貴様は」
「お、出たな、貴様。でも何だかわかんねーよ。片付いてるだろ? ほら、俺にしては」
「なぜ片付いているかどうかがわかるのだ」
「なぜって…見えてるじゃん、目の前に。クローゼットの中が整然と整えられているではないですか」
「だから、なぜ中が見えているのかと聞いているのだ」
「はぁ? 何だよ………あ」
「わかったか」
「……開けっ放しってこと?」
「そうだ」
「そうだな」
「毎朝、毎晩、私は一日に何度お前に『お前のクローゼットが開いていた』と小言を言っていると思うのだ」
「けっこう言ってるよな」
「なのになぜ閉めない? 開けたら閉めるというだけのことが、なぜできん」
「なんでだろうなぁ。わざとじゃないんだぜ?」
「その優秀な頭でなぜ、その程度のことを覚えていられないのだ」
「んー。…お前が閉めてくれちゃうからじゃないのか? 帰ってきたら閉まっているから、気づかないんじゃないか」
「今は閉めずにお前を呼んだだろう。初めてではないぞ」
「それもそうだな」
「しかも…開いているクローゼットの目の前で散々嫌味を言っても、開いていることにすら気づきもしないではないか」
「うーん、そうか…。処置なしだな」
「諦めるな! 対策案を出せ!」
「おっかないなぁ。うーん、対策ねぇ…。覚えてられないし、気づきもしないんだからなぁ…。あ、そうだ!」
「なんだ。言ってみろ」
「扉を外す! ほら、ないものは閉めらんないだろ? 閉まってないことが気にならない、逆転の発想!」
「当麻、貴様…」
「あ、あんまりいい案なんで感動しちゃった?」
「…こんないい加減な男を軍師として命を賭けていたとはおそろしいな。痴将め」
「何だよ、仕方がないだろう? 俺だってできるだけ気をつけるけどさ、開いてるのが気になるのはお前なんだから、まぁ、教えてくれるとか、閉めてくれるとか、頼むよ。な?」
「なぜそうなる…。よし、ペナルティを作ろう」
「ペナルティ? …クローゼット閉めなかったら、ヘン顔30秒とか?」
「それは誰の何に対するペナルティなのだ…」
「晩酌のビールおあずけとか?」
「お前は時々舐めるくらいしか飲まんではないか」
「じゃあなんだよー」
「お前が一番困ることはなんだ」
「困ることねぇ…。お前がいなくなることかな。征士が出て行っちゃったら、俺、すごく困るよ」
「人を便利屋扱いしおって…。しかも、なぜ貴様のペナルティで私が出ていかなくてはならんのだ。おかしいではないか」
「もー。どうだっていいだろう? クローゼットが開いてるか閉まってるかなんて小さなことで、伊達征士ともあろう男がいちいち目くじら立てるなよ。な?」
「そうやって、なついてみせたり、持ち上げたフリをしても、ごまかされんからな」
「バレてるか…」
「とにかくクローゼットは閉めろ。私にこれ以上、貴様の世話を焼かせるな」
「なんだよー。好きでやってるくせにー」
「何だと!?」
「わー、ごめん! しまって! 竹刀しまって!」
「今度開け放してあれば光輪剣だ。よく覚えておけ」
「暴力反対ー!」
「冗談はさておき…」
「…冗談に見えなかったぞ?」
「開け放たないためのアイデアを真面目に考えろ。その頭脳を生活に活かせ」
「ちぇ。わかったよ」
「では早く手を洗って来い。うがいもしろよ。飯の仕度ができているからな」
「へいへい」
「返事ははいだ!」
「はいよー」
おわり
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気になっちゃう征士さん。
愛よね、愛。
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