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【041-02】初めての…2

【R18】

その1はこちら
征当初めて物語、その2。
モグタンか!? (古すぎる…)





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次に二人が顔を合わせたのは翌週の同じ曜日の午後。
当麻が征士を自分のアパートに呼んで。

狭い玄関で征士が靴を脱ぐ。
二人で出かけた帰りについでに寄る、そんないつもとは違って「そのために来ました」「そのために呼びました」という感じがお互いに気恥ずかしい。

「麦茶、飲む?」

荷物の多い当麻の一人暮らしのアパートは、テーブルのおかれたキッチンと寝室が分かれている。
キッチンと寝室といっても、そこここに書棚に収まり切らない本やコピーした資料が積み上げられていて、征士が見ると家なのか物置なのかわからない様相を呈している。
ひと月前に初めてこの有様を目の当たりにした時には、手伝ってやるからと誘ってみたり、片付けなければもう来ないと脅してみたり、一応それなりに努力はしてみた征士だった。
しかしどうしたところで家主のやる気は起きないし、目次を開いて見てもどんなジャンルの本かも理解できないものを勝手に整理することも不可能だと諦めて、最近ではすっかり見慣れた日常になってしまっていた。

当麻は征士に椅子に座るよう促しながら、冷蔵庫を開ける。

「あ、ビールがいいか」

「ああ…いや、どうだろう…。飲んだ方がいいのだろうか?」

「いや、別に…」

当麻は征士に向けた顔を、また冷蔵庫に戻す。
征士は当麻が首にタオルをかけ、その髪がまだ濡れていることに気づく。

「風呂に入ったのか」

「今さっき起きたからさ。シャワー浴びたとこ。…あ、別にそのためってわけじゃ…」

「いや、別にそういうつもりで聞いたわけでは…」

それきりしばらく二人とも口を開かず、当麻がうつむいたままコップに注いで出した麦茶を征士は黙って飲んだ。

「昼飯は?」

しばらくの沈黙の後、当麻が口を開いた。

「食べてきた。…お前は起きたばかりでは、まだ何も食べていないのではないか?」

「ああ…まぁいいんだ。食欲ないっていうか…」

妖邪との熾烈な戦いの中であっても、食欲を失うことなどなかった当麻だ。
よっぽど緊張させているのかと、征士は当麻の心中を思い遣る。

「やはり、ビールの方が良かったか」

「いいんだ。酒の力を借りるのはやめとく」

「そうか」

窓の外をツバメが飛んで行く。
外は最近には珍しい、カラッとした上天気だ。

「お前、なに持ってきたの?」

少し話の方向を変えようかと、当麻が征士の持ってきた書店の紙袋に話題を向ける。

「ああ。何か参考になるものはないかと思ってな…」

取り出されたのは上半身裸の肉体美を誇る男性が表紙の一冊の雑誌。
見た瞬間、当麻は笑い出す。

「お前それ、買ったのかよ!」

雑誌と征士本人を交互に指をさして大笑いしている。

「笑うな。恥ずかしかったのだぞ」

半分以上は当麻のためを思って、恥を忍んで買ってきたというのに、何もそこまで笑い者にすることもなかろうと征士は憮然とする。

「だろうなー。俺も恥ずかしくて、日本橋のデカい本屋までわざわざ行ったもん」

そう言って当麻はテレビ周辺に雑然と積み重ねてある大量の本の山の上から、ひょいと一冊取り上げてテーブルに放る。
まったく同じ表紙。

「新宿でも良かったんだけど、これ手にとってレジ行くまでに、そっちの方面のヒトに声かけられちゃうと困るからな」

征士も思わず吹き出して一緒に笑う。
ぎこちない空気が少し、なごむ。

「お前まさかその山すべて、そのような本なのではあるまいな」

「まさか! この一冊だけだよ。さすがに恥ずかしかったからな。あとはパソコン通信で色々と情報集めたけど…お前それ、全部読んだ?」

「いや、全部は…。その…例のところだけは見たが」

「初めての、ってとこか」

「当麻は全部読んだのか」

「一応な。けっこう面白かったぜ。でもやっぱり、俺は生まれついての同性愛者とはちょっと違うのかなって。そこんとことか、ちょっと気になってたから」

「そうか」

ただナチュラルに当麻が欲しいとしか考えていなかった自分と違い、さすが智将は色々と考えるのだなと征士は当麻の顔を見る。

照れて赤くなったり、好奇心いっぱいの生き生きとした顔になったり、時にとても思慮深く知的な面を見せたり。
自分の一挙手一投足に反応してくるくると変わる。
そのすべての当麻が愛おしいと、すべてが欲しいと改めて思う。

「あ、風呂、入る?」

「…一緒にか?」

「え? お、俺は、今入ったとこだから」

また赤くなる。
つい何度でもからかいたくなる。

「私はいい。出かける前にシャワーを浴びてきたからな」

「準備万端だな。スケベなヤツ」

当麻は照れ隠しに軽口を叩く。

「そのスケベとスケベなことをしようとしているのは誰だ?」

征士は立ち上がると、座ったままの当麻の顎の下に指を這わせて上を向かせ、口づける。
当麻が立ちあがらないように左手は当麻の肩に。
右手は青い髪をくしゃくしゃとかき乱す。

深く、深く。
もっと奥まで。
息をつこうとする当麻を更に追う。
今日は、ほんのひとかけらも逃したくはない。

「んん…っ」

当麻の中に割り込んでくる舌が、流れ込んでくる唾液が熱い。
その熱さが、このあと自分の身体に打ち込まれるであろうものの熱さを当麻に予感させる。

「ベッドに…」

唇を繋げたまま紡がれた当麻の誘いに、征士が無言で同意して離れる。

手をとってベッドまで行くと、そこでまた立ったまま抱き合い、唇を重ねる。
立ったままだと当麻の方が少しだけ背が高い。
それが当麻を少しだけ強気にさせる。

そうしながら当麻の手がそっと征士のベルトを外す。
ボタンを外し、ファスナーに手をかける。
ファスナーを下ろしてしまうと、中に手を差し込んで、熱を持ち始めた征士のそれを手のひらでそっと包む。

「征士、座って?」

促されるままに、征士はベッドに腰掛ける。
当麻は征士の下着の中から硬さを帯びたものを取り出す。

「やっぱりデカイよなー、お前のってさ」

「…これは、もう半分勃ってるからであって…」

「半分だろ? これで…」

当麻はゴクリと唾を飲み込む。
二年前まで三年間一緒に暮らしていて、一緒に風呂に入る機会だって幾度となくあった。
立派だよな、とは思っていた。
しかし自分の問題として向き合ったのは今日が初めてだ。

「何を…?」

「まずは征士の、確かめさせてくれよ」

当麻は征士の顔を見上げてニッと笑うと、手を添えて舌を寄せる。
それだけでもう、征士のものははち切れんばかりになる。

「おい、そんなこと…」

「そんなことって?」

既に粘液を滴らせはじめた、その先端に当麻は舌を遊ばせる。

「…っ」

「もしかして初めて? 征士。彼女にしてもらったことないのかよ」

「…ない。………当麻は…あるのか?」

「あるよ。何度も」

征士の形にそって当麻は舌先を這わせていく。
青い瞳を征士に向けたままで。
征士はその視線から目を離すことができない。

全体を指で刺激しながら舐め上げる。
隅々まで口に含み、転がし、弄ぶ。

「気持ちいい? 征士」

「ああ…」

「征士の初めて、俺がしてやれて嬉しい」

口を開けて上から咥え混んでいく。
チュ…ジュプ…と卑猥な音が、昼下がりの静かな室内に響く。

「こんなの…俺ん中に、本当に入るのかね?」

「さぁ…な…無理をすることは…ない…」

男同士だからなのか。
それとも、してもらった経験がたくさんあるからなのだろうか。
するのは初めてなのだろうに、当麻の愛撫が征士の快いところを的確につく。
当麻のものを女が咥え込んでいる場面を、征士はつい想像する。
ざわめきと快感が交差して、官能が一気に高まる。

「う…あ、当麻、もう…」

「いいよ、征士。出して」

「ダメだ…当麻」

口の中に出してはいけないと、征士は当麻の頭を両手で挟んで自らを当麻の口から引き抜こうとする。

「…ぁあっ」

引き抜いたその瞬間に、その最後の刺激で精を放った。
征士の放ったものが、当麻の鼻梁から口元にかけてを白く汚す。

「あ…すまん…」

当麻は口元のそれを、黙ってぺろりと舐めとった。











「お前なぁ、ワザとやってるだろ」

そのままの顔でにやりと笑って見上げる。

「わざとではない」

きまりの悪い征士はベッドサイドにあったティッシュの箱からさっと二枚取り出すと、当麻の顔に飛んだ白濁した飛沫をそっと拭き取る。
そしてきれいに拭き取られた当麻の顔を両手で優しく包みこむ。

「脱がないか?」

そっと触れるだけのキスを落として誘う。
二人ともまだ一枚も服を脱いではいなかった。

「ああ、そうだな」

当麻は立ち上がるとシャツを肩から脱ぎかけて手を止める。
征士をちらりと見て、つぶやくように漏らす。

「カーテン…閉めるか?」

「そうした方がいいのか?」

大胆にあんなことをしたかと思うと、急にこんな風に恥じらって見せる。
お互いの裸など、もう幾度となく見ているというのに。

「まあ、たいして暗くはならないけど…」

当麻は脱ぎかけたシャツをもう一度羽織り直して征士が腰かけるベッドに上ると、窓にかかるカーテンを引く。
晴れた昼間の明るさだった空間に、薄い闇のフィルタがかかる。
天空の鎧の色によく似たそのカーテンの色が陽に透けて薄闇に溶け出す。

「こんなに明るいとは、誤算だったなー」

ベッドの上に膝立ちになっている当麻を、征士は後ろから抱きしめる。

「当麻」

「うん。…ちょっと待てよ。脱ぐから…」

当麻は少しまた顔を赤らめたかもしれないが、うつむいているのと青い闇で相殺されてしまっているのとで、征士からはわかりにくい。

ベッドの上に座って、羽織っていた涼しげな薄いサッカー生地のシャツを脱ぎ、その下の真っ白なTシャツに手をかける。
そこで、それをただ見つめている征士の視線に気づく。

「お前も脱げよな」

ぶっきらぼうに放たれた言葉には、明らかに恥ずかしさがかなりの割合で混ぜられていて。
それが征士の緊張を少し緩める。

「見とれていた」

優しい眼差しで征士が言う。

「馬鹿なこと言うなよ」

どんな表情をしたらいいのか、もはやわからなくなっている当麻に、

「馬鹿かもしれん」

そう言いながら、当麻がたくし上げかけたTシャツの裾を上げ、頭上に取り去ってしまう。
何も着ていない当麻の上半身は細身だが、大学でも続けている弓道でほどよく引き締まっている。
当麻のベルトに手をかけて外す。

「自分で脱ぐよ」

当麻はもう一度ベッドの上に膝立ちになると、ジーンズのフックを外し、ファスナーを下ろす。ジーンズを膝まで下げるとベッドに腰をつき、脚から抜いて行く。
脱いだジーンズはベッドの下に無造作に放り投げられた。
そしてもう一度膝立ちになると、トランクスのゴムに手を掛けた。
そこでまた一瞬躊躇すると、まだ自分は服を着たままで、その一部始終を眺めている征士にまた気がついて睨む。

「お前も脱げっつってんだろ」

征士は微笑むと、自分のシャツのボタンを外す。
肩と背中がさらりと露わになる。
そして立ち上がるともう当麻によって半分脱がされていたボトムスを、下着と一緒に下ろす。
首筋から太腿にかけて鍛え上げられた端整な美しさに、当麻は目を離すことができない。
そしてこの美しい身体とひとつに交わろうとしているのだということを改めて意識してしまう。
心臓はもう早鐘のように打っている。

征士は脱いだ衣服を、当麻が放り投げたそれにそっと重ねた。

肌と肌が初めて触れ合う。
熱い体温と、汗でしっとりとした皮膚の感触。
ベッドの上で、上になり下になり唇を貪り合う。
自然とお互いのものが触れる。
征士はそれらを片手で握り込んだ。

「んぁ…っ」

合わせた唇から漏れる吐息は当麻のもの。
今度は逃げ出されないようにと、征士は更に口づけを深くする。
手にしたものを優しく擦り上げていく。

「……んっ」

刺激から逃れようと引ける当麻の腰と下肢を、脚を絡めて引き止める。

「…っ」

当麻が更に硬く反り返らせるのが、征士の手指と征士自身に直に伝わる。

そのうちに、どちらともわからない滴りで濡れてきて、更に新しい刺激が加わる。
ぬるりと滑る快感。
荒い息の合間に、ちゅ…くちゅ…という粘液の音。

「ダメ…だ…征士…っ」

「何だ?」

一緒に刺激されているとはいえ、自らの意思で緩急をつけている征士には、まだ余裕がある。
それがまた当麻の羞恥を煽る。

「ずるい…お前…っ」

征士は返事の代わりに濡れそぼった先端を合わせて上から握り込み、更にくちゅくちゅと卑猥な音をたてる。

「やだ…ぁ…っ」

当麻は堪らず征士の肩にしがみつく。

「いやなのか?」

耳元で囁かれる征士の言葉に幾度も首を縦に振る。

「気持ち良いのだろう?」

それにも余裕なくうんうんと頷く。
征士は当麻の顔を眺めると、束で手にしたものを一度放して、当麻のものだけを握る。

「気持ち良ければやめる必要などないだろう?」

紫色の瞳が意地悪く細められる。

「さっきの…仕返しかよ…っ」

「さあな」

もう爆ぜる寸前でヒクヒクとしているそれを、征士はわざとやんわりと刺激する。

「…く…っ」

征士のものに手を伸ばそうとする当麻の手首を、征士の左手が掴む。
もう片方の手は、すでに身体で押さえつけられている。

「てめ…っ」

抗議の声をあげようとする口を、キスで塞がれる。

「んん…っ」

当麻は征士の手の中に、放った。




つづく

**********


次、最終話
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