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【018】昔話

【死にネタ注意!】

征当です。
が、ハッピーエンドではありません。

猫の日記念の昔話風パラレル。

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**********
 
 
 
 
 
昔々、海辺の古びた一軒家に男が住んでいました。
 
たいそう顔立ちの良い若者で、名前を征士といいました。
年老いた病気の父と二人で暮らしていましたが、その父も先だって亡くなり、一人で暮らしていたのでした。
 
ある日、征士の家に一匹の猫が迷い込んできました。
雨が強く、風がごうごうと鳴るひどい晩でした。
寒さに震えている猫を追い帰すことができず、また一人の寂しさもあって、征士はその猫を飼うことにしました。
名前をトウマと付けました。
 
青い瞳に青いの毛のトウマは、とにかくよく食べる猫でしたが、ねずみを取るのが上手で、征士はとても可愛がりました。
しかし、トウマがやって来た晩と同じ、風の鳴る寒い晩に、ふと家を出たまま帰ってきませんでした。
 
征士はまた一人になりました。
トウマがいない味気ない暮らしがひと月続きました。
征士がトウマの愛らしい仕草を思い出さない日は一日もありませんでした。
 
また風の吹く晩でした。
 
毎晩必ず床に入ってきて一緒に眠っていたトウマのことを思いながら、征士が眠りにつこうとしていた時、戸を叩く音がしました。
 
こんな夜に一体誰だろうと征士が起きてかんぬきを外し戸を開けると、そこには一人の若い男が立っていました。
道に迷ったというその男を、征士は一晩泊めてやることにしました。
 
男はトウマに似ていました。
青い瞳と青い髪をして、名前も当麻というのでした。
さて床に入ろうとすると、驚いたことに当麻は、さも当たり前のように征士の床に入ってくるのでした。
 
するりと床に滑り込み、ぴったりと寄り添ってくる当麻に征士は驚きましたが、目を瞑るとまるで猫のトウマが帰ってきたような心持ちになるのでした。
 
身よりもなく行くあてもないという当麻は、征士と一緒に暮らすことになりました。
二人はまるで夫婦のようでした。
当麻は炊事洗濯をしながら畑を耕し、征士はせっせと漁に出ました。
仲睦まじく慎ましい暮らしは一年、二年と続きました。
 
その日も朝から強い風が吹いていました。
 
征士はいつものように、日が上ると漁に出かけました。
しかし岸から舟を出そうとしたとき、当麻のくれたお守り袋を家に忘れてきたことに気がつきました。
このまま海へ出てしまおうか。
征士は迷いましたが、もらってから片時もはなしたことのないお守りであったので、やはり取りに帰ることにしました。
 
急に帰って当麻を驚かせてやろうと、征士はそっと縁側を覗きました。
そこに見えたのは当麻ではなく、猫の姿の、あのトウマでした。
陽だまりで丸くなった青い毛の猫は、気持ちよさそうに眠っているのでした。
一目で見渡せる家の中に、人の当麻の姿はありません。
 
征士は音をたてないように表へ回り、入口の戸を勢いよく開けました。
ガタガタと音をたてて、引き戸が開けられました。
慌てた様子の当麻が出てきました。
征士はお守りを忘れたことを告げると、当麻はすぐにそれを探してきて征士に手渡しました。
 
猫が来なかったかと征士が尋ねると、当麻は猫など見ないと答えました。
 
征士はしばらく様子を見ることにしました。
隠れて見ていると、当麻にはおかしなことがあります。
誰もいないことがわかると、ゴロゴロとのどを鳴らしたり、時には猫のように、かまどの上にのぼったりするのです。
それは征士が二年経ってもまだ覚えている、猫のトウマの仕草にそっくりなのでした。
 
やはり当麻はトウマだったのか…。
 
当麻の正体が猫なのだとしても、愛しい伴侶であることに変わりはありません。
しかしそうかといって、このまま何食わぬ顔で猫と夫婦のように暮らすこともためらわれました。
悩んだ征士は村で一番年寄りのおばばに相談することにしました。
 
征士の村には化け猫の伝説がありました。
海辺の洞窟には化け猫がいて、人に化けて人を騙すことがある。
その正体を知ったものは猫に取り殺されてしまう。
ただし呪文を唱えれば、唱えた者の命は助かり、化け猫は死ぬと。
 
おばばは征士の不運を嘆き、化け猫退治の呪文を教えました。
 
猫、猫、鳴くな。
北風吹けば、南に飛ばされる。
南風吹けば、北に飛ばされる。
猫、猫、鳴くな。
もう鳴くな。
 
征士は呪文の言葉をしっかり覚えると、家に戻りました。
家に帰って戸を開けると、そこには当麻が立っていて、征士を青い瞳でじっと見つめました。
 
正体を知られたからには生かしておくわけにはいかない、と当麻は征士に言いました。
 
征士は口を開きました。
そして一言、
 
「当麻、愛している」
 
と言いました。
 
当麻は青い大きな化け猫の姿になると、征士に飛びかかり、鋭い爪でその白い喉を掻き切って、海の方へと走り去って行きました。
 
それからこの村で、化け猫の姿が見られることはありませんでした。
 
猫、猫、鳴くな。
北風吹けば、南へ飛ばされる。
南風吹けば、北に飛ばされる。
猫、猫、鳴くな。
もう鳴くな。
 
もう、鳴くな。
 
 
 
 
おわり
 
 
**********
 
猫の日です。
猫耳な当麻を書こうと思ったのに、
こんな話になっちゃった。
ごめんなさいー。
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